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製紙工程において紙の引張強度は最終製品の信頼性を左右する重要指標です。
特に包装紙や紙器、飲料用紙容器のように使用時に高い強度が求められる用途では、湿潤状態での強度低下が大きな課題になります。
そこで導入されるのが湿潤強化剤です。
湿潤強化剤は紙繊維間の結合を化学的に補強し、乾燥時だけでなく水分を含んだ状況でも高い引張強度を維持させる添加剤です。
紙繊維は水素結合によって結び付いています。
乾燥下では強い結合になっていても、水分が入ると水分子が繊維間に入り込み、もともとの水素結合が切断されやすくなります。
結果として紙全体の引張強度は急激に低下し、破れや剥がれが発生します。
湿潤強化剤は繊維間に耐水性の架橋を形成し、水素結合が切れても構造を保持するために用いられます。
ポリアミン系樹脂はカチオン性が高く、パルプ繊維のアニオン電荷と強く結合します。
塩素系助剤を使用せずとも短時間で高い湿潤強度を付与できるため、飲料用紙容器やラベル紙で広く採用されています。
一方で過剰添加すると乾燥強度が低下する場合があるため、適正濃度の管理が不可欠です。
メラミン樹脂は架橋密度が高く、耐アルカリ性に優れています。
高温乾燥工程を経ることで不溶性ネットワーク構造が形成され、湿潤強度の向上効果が大きいのが特長です。
しかし硬化には温度依存性があるため、乾燥シリンダーの温度プロファイル設計が重要になります。
PAEは製紙業界で最も普及している湿潤強化剤です。
常温でも反応が進み、紙中のカルボキシル基と架橋して耐水性を付与します。
食品包装向けでは低塩素タイプや無塩素タイプが開発され、規制対応もしやすくなっています。
添加量とコストバランス
期待する強度と必要な添加量を試験で把握し、原価に与える影響を評価します。
pH適正範囲
薬剤によって最適pHが異なるため、抄紙機のヘッドボックスpHを確認します。
乾燥装置能力
硬化を必要とする樹脂では、乾燥シリンダーの温度・滞留時間が十分かを検討します。
環境・食品接触規制
FDAやBfR、食品衛生法などの基準に沿った薬剤を選択し、移行試験データを取得します。
まず標準ハンドシート法やDIP配合パルプで小規模試験を行い、乾燥強度・湿潤強度・サイズプレス適正を測定します。
湿潤強度はJIS P8135やTAPPI T456に従い、湿潤係数を算出して評価します。
薬剤はウェットエンドでの添加が一般的ですが、乾燥前のサイズプレスやコーターで後塗りする方法もあります。
ウェットエンド添加時は、薬剤に先立ってアルミニウム硫酸塩で帯電調整を行い保持率を高めます。
サイズプレス塗工では固形分5〜10%の希釈液を一定量塗布し、表面強度と同時に耐水性を向上させます。
引張強度センサーや紙面水分計を導入すると、薬剤添加量と強度の相関をリアルタイムで把握できます。
データをDCSに取り込み、PID制御で自動調整を行えば薬剤コストを最適化できます。
ブレーカープレスで紙粉が増加した
湿潤強化剤過剰で乾燥強度が低下している可能性があります。
ハンドシート試験で乾燥強度を確認し、添加量を10%単位で減らします。
リールで巻ズレが発生した
サイズプレス塗工量が不均一だと紙厚ムラが生じ、張力分布が不安定になります。
アプリケーターロールのギャップ調整とスチームボックスの温度均一化を実施します。
汚水CODが上昇した
未反応の樹脂が排水に流出しているケースが考えられます。
保持助剤を併用し、ミクロフロックの捕捉効率を上げることで改善できます。
近年はPFASやホルムアルデヒドの規制強化を背景に、低VOC・無ホルムアルデヒド型湿潤強化剤の採用が進んでいます。
EUではREACHのSVHCリスト入りの可能性にも留意が必要です。
また、工場排水のBOD/COD負荷を抑えるため、生分解性の高い樹脂やオンサイトでの凝集処理を組み合わせる事例が増えています。
北米の食品包装メーカーA社では、従来品のPAE樹脂を塩素フリーのポリアミン樹脂に切り替えました。
ラボでの湿潤引張強度は15%向上し、包装ラインでの破袋クレームが35%低減しました。
同時に塗工重量を5g/㎡削減できたため、年間で約12万ドルのコスト削減効果も得られました。
FDA 21CFR176.170適合のデータパッケージを取得し、顧客監査にも迅速に対応できた点が評価されています。
湿潤強化剤は紙の引張強度を根本から底上げし、製品の信頼性と加工歩留まりを高める有効な手段です。
薬剤の種類、添加ポイント、乾燥条件を適切に設計すれば、過剰コストや環境負荷を抑えながら最大限の効果を引き出せます。
実地試験とオンライン制御を組み合わせて最適化を図り、安全・高機能な紙製品の供給体制を構築しましょう。

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