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食品包装用インクの安全性試験とEU規制の対応方法
食品包装は、私たちの生活に欠かせない存在です。
食品の鮮度や安全性を守る役割があり、見た目や製品差別化にも大きく寄与しています。
その包装材に印刷されている各種デザインや情報表示に使われるのが「食品包装用インク」です。
インクが食品に直接あるいは間接的に接触することで、有害成分が食品へ移行する可能性が懸念されています。
これを「インクからの移行(migration)」と呼び、健康リスクを最小限に抑えることが求められています。
EU(欧州連合)は、食品と接触する材料(Food Contact Materials:FCM)に対して世界でも厳格な規制を設けており、インクにも例外なく適用されます。
そのため、食品包装印刷を手がける企業や材料メーカーは、EU規制の内容を熟知した上で、適正な安全性試験と規制対応が不可欠となっています。
EUでは、食品衛生と消費者の健康保護を目的とし、さまざまな法令が整備されています。
EU圏内で流通する包装材料には共通規格(Framework Regulation:EC No 1935/2004)が適用され、食品と接触した際に「人の健康を危険にさらす物質が移行しない」ことが大原則です。
インクに直接関係する個別の規制は現時点(2024年6月時点)で成立していませんが、メンバー国ごと、または業界ガイドラインとして法的拘束力を高める動きが進んでいます。
食品包装用インクのコンポーネント(顔料、樹脂、添加剤など)に関しては、欧州食品安全機関(EFSA)が安全性評価を実施しています。
EFSAの評価を通過しない化学物質は、EC No 1935/2004の規定に基づき原則使用できません。
インクを含めた食品接触材料の製造工程では、「GMP規則(EC No 2023/2006)」を遵守しなければなりません。
製造から保管・輸送まで、混入や不純物の管理、トレーサビリティの確保が義務づけられています。
EU域外ながら、業界で高く参照されているのがスイスの「Swiss Ordinance(SR 817.023.21)」です。
この条例は食材包装用インクにフォーカスした世界初の法規制であり、EU規格策定の際にも参考にされています。
指定された「正のリスト(Positive List)」に収載された化学物質のみ食品包装用インクへの使用が許可されており、移行限度(Specific Migration Limit:SML)も厳格に設定されています。
欧州印刷インキ協会(EuPIA)は、食材接触インクに関する自主基準・ガイドラインを発行しています。
主な内容は、インクの配合原料の選定、分析、適切なラベル表示、製造プロセス管理などです。
EU加盟国で法的拘束力を持たせる場合もあり、実務ではスイス条例と並び重視されています。
食品包装用インクの中心的な安全性評価試験が「移行試験(migration test)」です。
包装材から実際に食品へとどの程度成分が移動(migration)するかを測定します。
テスト対象となる主な成分は以下の通りです。
・単体の顔料やモノマー、溶剤
・コーティング材、接着剤原料
・意図しない副産物(不純物や分解産物)
移行試験は、規定された条件下で食品包装材料を「食品 simulant(食品模擬物)」と接触させ、一定時間経過後の移行成分を分析します。
食品 simulantは、水、エタノール、酢酸、油脂など複数あり、包装される食品の特性(脂溶性/水溶性など)に応じて選択されます。
・特定移行量(SML:Specific Migration Limit)
規制で定められた物質ごとの最大移行許容量。
たとえば「顔料Aは最大60mg/kg」など、厳格な上限設定があります。
・総移行量(OML:Overall Migration Limit)
インク由来のすべての成分(全化学物質)について合算した移行量の最大値(たとえば10mg/dm²)。
SML・OMLともにEU指令や各国法、EuPIA基準、Swiss Ordinanceなどで具体値が明示されています。
インク成分の分析には、下記のような分析機器と手法が標準的に使われます。
・ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)
・液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC-MS/MS)
・誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)
包装資材のカットサンプルを食品 simulantと一定期間反応させ、その後食品 simulant中の移行成分を抽出・測定します。
分析データを各規制のSML・OML値と照合し、基準値超過がないか評価します。
食品用インクでは、設計通りの主成分だけでなく「副生成物」や「分解生成物(NIAS:Non-Intentionally Added Substances)」も重要な評価対象となっています。
NIASは製造工程で偶発的に生成される物質や、不純物として原材料由来で混入するケースがあります。
これらは未評価の健康リスクを内包するため、規制当局やEFSAでも積極的な評価と情報公開が進められています。
インクメーカー・包装メーカーは、分析技術の向上と製造記録の徹底により、NIASのリスク評価および情報開示が不可欠となっています。
EUは加盟国ごとに若干の運用差や補足規定があるため、各国の食品監督機関で最新基準を確認する必要があります。
また、スイス、ドイツ、フランスなどは独自条例の運用や強化を進めているので、輸出先の法規チェックが重要です。
現在、アメリカ食品医薬品局(FDA)や中国、東南アジア諸国も国際調和の流れを受け、EU基準と同様の移行試験・登録制度を相次いで導入・強化しています。
グローバル展開を進める場合は、EUの安全性試験・規制運用をベンチマークとした製品設計および試験体制の構築が強く推奨されます。
まず第一に、使用するインク原料・添加剤が各種規制(特にSwiss OrdinanceやEuPIA Positive List)に収載されているかを事前に確認します。
掲載リスト外の化学物質使用は、原則禁止ないし個別のEFSA評価・認証が必須です。
GMP規則(EC No 2023/2006)を遵守し、製造から出荷・流通まで「不純物混入防止」「製品ごとのトレーサビリティ」を徹底する必要があります。
プロセスごとの点検記録・衛生管理基準・社員教育・原材料購買管理など、書類化・システム化が必須です。
インクの開発時と量産時に「適切な食品 simulant」と「各市場向け試験条件」を設定した上で、規定通りの移行試験(SML/OML/NIAS分析)を必ず実施します。
製品ロットごとに試験結果データをアーカイブし、顧客や監督当局からの要請時には即時提出できる体制を整備します。
法改正・ガイドラインの強化は頻繁にあるため、業界団体への加入やコンサルタントの活用、現地顧客との定期的コミュニケーションで情報アップデートが重要です。
特にSwiss Ordinance、EuPIAガイドライン、EFSA通知文など定期的な確認が求められます。
食品包装用インクの安全性は、消費者の健康と企業ブランドの信頼構築の両輪です。
EU規制は世界でも最も厳格な部類に入り、適切な移行試験とトレーサビリティ、NIAS対応など多面的な運用が欠かせません。
規制やガイドラインの理解はもちろん、現場での具体的な実務対応(適正な原料選定・GMP遵守・試験体制の確立・継続的な教育)が、グローバル市場競争の中で持続的成長を実現する鍵となります。
今後も法規制のアップデートや分析技術の進化に注目しつつ、安全でイノベーティブな食品包装インクの開発・供給に努めていくことが求められています。

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