投稿日:2024年11月1日

電子機器製造業の研究開発部門の新入社員向け!基板の多層化設計とEMC(電磁干渉)対策の基礎

基板の多層化設計の基本

電子機器製造業における基板の多層化設計は、今日の技術革新において不可欠な要素となっています。
特に、デバイスの小型化、高性能化が求められる現代において、複雑な回路を収めつつ製品サイズを抑えるためには、基板の多層化が必須です。

多層基板は通常、複数の銅層と絶縁層が交互に積層されており、これにより実装密度が向上します。
これによって、設計者はより複雑な回路を限られたスペースに収め、高速なデータ伝送を実現できます。
例えば、通信機器やコンピュータのプロセッサ基板では、20層以上の多層基板が一般的に使用されています。

しかし、基板の多層化においては、いくつかの設計課題も存在します。
例えば、高密度配線は、クロストークや信号伝送の遅延といった問題を引き起こす可能性があります。
そのため、多層基板を設計する際には、層構成の他、配線長やインピーダンスのコントロール、スルビア設計なども慎重に考慮する必要があります。

多層化設計におけるレイヤーの役割

多層基板の各レイヤーには、それぞれ固有の役割があります。
一般的には、「信号層」「グラウンド層」「電源層」「プレーン層」があります。

信号層は、デジタル信号やアナログ信号を伝送するための層です。
大部分の配線がここに配置されますが、その際に他の層との干渉を最小限に抑える工夫が求められます。

グラウンド層は信号の基準電位を提供する層であり、ノイズの吸収や放電経路としても重要です。
グラウンド層の配置や設計が不適切だとデバイス全体の性能に影響を与えるため、配慮が必要です。

電源層はデバイスに必要な電力を供給します。
こちらも電源にノイズが乗るとデバイスの動作が不安定になるため、十分なデカップリングと電源のネットワーク設計が求められます。

プレーン層は、通常、グラウンドまたは電源層として使われ、全体的な電気的特性や熱特性の向上を図ります。

EMC(電磁干渉)対策の基本

電子機器の設計において、EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁適合性)は非常に重要な考慮点の一つです。
現代の電子機器に求められるEMC性能とは、他の機器からの電磁干渉に耐えること、また逆に他の機器に干渉を与えないことを指します。

多数の電子部品が密集した多層基板では、小さなレイアウトの違いが意外なほど影響を及ぼすこともあります。
そのため、EMCの観点からは設計の初期段階で適切な対策を講じる必要があります。

EMC対策で考慮すべきポイント

EMC対策における基礎には、以下のポイントが挙げられます。

1. グラウンドパターンの適切な設計
グラウンドは信号の安定した基準電位を提供し、ノイズを低減する役割があります。
広い面積を持つグラウンドプレーンを設けることで、ノイズやクロストークの影響を受けにくくなります。

2. デカップリングコンデンサによる電源ラインの安定化
電源ラインにノイズが乗ると、意図しない信号の揺れや電圧低下が発生する可能性があります。
デカップリングコンデンサを設置し、ノイズや電圧変動を抑制することが重要です。

3. 層間のシールド効果
多層基板では異なる信号層間をシールド層で挟むことで、クロストークや不要電波の影響を減少させることができます。

4. 配線の短縮とインピーダンスのコントロール
信号ラインの配線は極力短くし、配線インピーダンスをコントロールすることで信号の品質を維持できます。
これにより不要な放射ノイズの低減が期待できます。

最新の業界動向

電子機器製造業において、基板設計とEMC対策はますます高度化しています。
特に、自動運転車やIoTデバイス、5G通信の普及により、性能と信頼性の高い基板設計が求められます。

現在、多層基板の設計にはCADツールの高度なシミュレーション機能が用いられており、さまざまな物理特性を考慮した設計が可能です。
AIを活用した最適化技術も進化しており、設計者の負担を軽減しつつ高精度な設計が可能となっています。

さらに、EMC対策に関しては、シールド材料やアクティブノイズキャンセリング技術の進化が進んでいます。
新素材を用いたシールド層の導入や、アクティブフィルター技術により、従来よりも効率的に電磁干渉を抑制することが可能です。

製造業の研究開発部門における新入社員は、これら技術の基礎をしっかりと理解し、最新動向を常にキャッチアップすることが求められます。
電子デバイスを支える基盤技術として、基板設計とEMC対策を深く学ぶことは、製品の競争力を向上させ、業界の未来を切り開く鍵となるでしょう。

資料ダウンロード

QCD調達購買管理クラウド「newji」は、調達購買部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の購買管理システムとなります。

ユーザー登録

調達購買業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた購買情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

オンライン講座

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(Β版非公開)

You cannot copy content of this page