投稿日:2024年10月16日

熱溶解積層(FDM)の基本と中小企業での活用術

熱溶解積層(FDM)とは

熱溶解積層(FDM)は、3Dプリンティング技術の一種であり、材質を加熱し溶融させた状態でノズルから押し出し、一層ずつ積み重ねて造形物を作り上げる手法です。
FDM技術は1980年代後半にStratasys社の創業者であるScott Crumpによって開発され、その後3Dプリンティングの普及とともに広まってきました。
FDMは、そのコスト効率や扱いやすさから、工業分野のみならず教育機関や家庭用としても利用される場面が増えています。

FDM技術のプロセス

FDM技術は、以下のようなプロセスで進行します。

1. デジタルモデルの準備

まず、3Dプリンティングによるモデル造形のために3D CADソフトを用いてデジタルモデルを設計します。
設計されたモデルは、通常STLファイルフォーマットに変換され、プリンタのスライスソフトへと送られます。

2. スライシング

スライスソフトは、デジタルモデルをプリンタで印刷できるように2次元の平面に分割し、各層の情報を生成します。
この工程で生成されたGコードにより、プリンタの動作が制御されます。

3. プリンティング

プリンタでは、フィラメントと呼ばれる樹脂がノズルに送られ、ヒートブロックで加熱されて溶融状態になります。
溶融した樹脂はノズルから押し出され、ベッド上に一層ずつ積層されていきます。
この加熱・冷却の繰り返しにより、設計通りの造形物が完成します。

FDMで利用される素材

FDMプリンタで利用される素材は多岐にわたりますが、主にプラスチック系のフィラメントが使用されます。
代表的な素材として以下のようなものがあります。

PLA(ポリ乳酸)

PLAは、最も利用頻度の高いフィラメントの一つで、トウモロコシデンプンなどを主成分とする生分解性プラスチックです。
低い温度でも印刷可能であり、初心者にも扱いやすい特性を持ちます。

ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)

ABSは耐久性が高く、強度が求められる用途に適しています。
また、後加工もしやすくプロトタイプ作成によく利用されますが、印刷時には匂いが出るため換気が必要です。

PETG(ポリエチレンテレフタレートの変性グレード)

PETGは、PLAとABSの特長を併せ持つ素材で、透明度が高く、耐水性もあるため、食品容器などの用途で役立ちます。

中小企業におけるFDMの活用事例

中小企業がFDMを活用することで、設計や試作、少量生産の迅速化が可能になります。
以下に、具体的な活用事例を紹介します。

プロトタイピング

製品開発の初期段階で、FDMを利用して迅速にプロトタイプを作成すると、アイデアの具現化がスムーズに進みます。
これにより、設計の検証が早期に行え、製品開発サイクルを短縮できます。

修理部品の生産

特に古い設備の修理には必要な部品が入手困難な場合があります。
FDMを利用してそのような部品を自社で製造することで、設備のダウンタイムを大幅に短縮できます。

カスタム部品の製造

特定の顧客要求に応じたカスタム部品を、少量生産できることもFDMの利点です。
これにより、多品種少量生産時代のニーズに応えることが可能になります。

FDM技術の発展と将来展望

FDM技術は今後も素材の進化やプリンタの精度向上により、さらなる発展が期待されています。
新素材の開発により、高機能部品の造形も可能となり、多くの産業での応用が進むでしょう。
また、価格が低下し、より多くの中小企業が導入しやすくなることで、製造業全体のデジタル化が促進されると考えられます。

まとめ

熱溶解積層(FDM)は、手頃な価格で扱いやすい3Dプリンティング技術として広く利用されています。
中小企業においても、多様な活用法が提案され、そのメリットを活かせる分野が広がっています。
今後も技術の進展により、新たな材料や加工精度の向上を伴って製造業の新たな可能性を切り開いていくでしょう。

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