投稿日:2024年10月30日

品質保証部門の新入社員が知るべきFMEAを使ったリスクアセスメントの基本

品質保証部門の新入社員が知るべきFMEAを使ったリスクアセスメントの基本

製造業の現場では、製品の品質を保証し、顧客に信頼される製品を提供することが重要です。
そのため、品質保証部門は製品開発や製造プロセスの初期段階からリスクを特定し、対策を講じて問題を未然に防ぐ役割を担っています。
その中でFMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、非常に効果的な手法の一つです。

ここでは、品質保証部門に新しく配属された社員が知っておくべきFMEAの基本について詳しく解説します。

FMEAとは何か

FMEAとは、直訳すると「故障モード影響解析」となり、製品やプロセスがどのように故障する可能性があるか、その影響がどうなるかを系統的に分析する手法です。
具体的には、故障の可能性(モード)、それによる影響、その発生頻度と検出可能性を評価し、それに基づいてリスクを軽減するための対策を計画します。

FMEAは設計段階での「Design FMEA(DFMEA)」と製造段階での「Process FMEA(PFMEA)」の二つに大別されます。
これにより、設計や製造工程での潜在的な問題を早期に発見し、製品品質の向上に寄与します。

FMEAの歴史と背景

FMEAの考え方は、第二次世界大戦中の航空宇宙分野で、システムの安全性を高めるために始まりました。
その後、自動車産業や電機産業などの民間分野でも広く採用され、安全性や品質向上のための標準的な手法となっています。

ISO 9001やIATF 16949といった国際標準規格でも、リスクマネジメントの一環としてFMEAの実施が推奨されています。

FMEAの基本プロセス

FMEAを効果的に活用するためには、正しい手順で進めることが重要です。
以下に、FMEAの基本的なプロセスを詳しく説明します。

1. システムやプロセスの理解

まず始めに対象となる製品やプロセスの詳細を理解し、その中で重要な要素を特定します。
これは、図面や仕様書、過去のデータを分析することで行います。
チーム内で共通の理解を持つことが重要です。

2. 故障モードの洗い出し

次に、考えられるすべての故障モード(どのように壊れるか)を列挙します。
ここでは、通常発生する故障だけでなく、起こりうるすべての状況を考慮することが大切です。

3. 故障の影響評価

各故障モードが発生した場合、その影響を評価します。
影響は製品自体だけでなく、顧客や環境、企業経営に及ぼす影響も考慮します。
評価は通常、「重大さ」に基づいて行われます。

4. 発生頻度と検出の評価

故障モードがどれだけ頻繁に発生するか(発生頻度)、そしてどれだけ早く検出できるか(検出可能性)を評価します。
これらの評価は定量的、または経験的に行い、チームでコンセンサスを得ることが重要です。

5. リスクの優先順位付け

故障モードに対するリスクを、影響の重大さ、発生頻度、検出の難易度の三つの要素から計算されるリスク優先度数(RPN)によって優先順位付けします。
この数値が高いほど、早急に対策を講じる必要があることを示します。

6. 改善策の立案と実施

優先度の高いリスクに対して、適切な改善策を立案し、実施します。
ここでのポイントは、対策が実際にリスクを低減できることを確認、そしてモニタリングすることです。

7. 成果のレビューとフィードバック

改善措置の実施後は、その成果をレビューし、必要に応じてさらに改良を加えます。
また、得られた教訓を似たような製品やプロセスにフィードバックすることで、今後のリスク低減に役立てます。

FMEA実施における注意点

FMEAを効果的に活用するためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。

チームの編成

FMEAはチームで実施するのが基本です。
異なる部門から専門知識を持つメンバーを集め、多様な視点からリスクを評価することで、より正確な分析結果が得られます。

データの活用

過去のデータやフィードバックの活用は、FMEAの精度を高める上で不可欠です。
そのため、データの管理と分析が重要な役割を果たします。

動的なプロセス

FMEAは静的なものではなく、プロジェクトの進行や変更に応じて動的に更新するべきです。
環境や要件が変わった際には再評価を行い、常に最新の情報に基づくリスク管理を心掛けましょう。

上層部の支持と実行力

FMEAの成果は上層部の支持と実行力に依存することが多いです。
経営層を巻き込み、リソースの配分や方針決定に関わることがリスクマネジメントの成功につながります。

最新動向:デジタルFMEAの活用

近年、デジタル技術の進化によりFMEAの手法も変化しています。
AIや機械学習を活用したデジタルFMEAでは、膨大なデータから故障モードのパターンを自動的に抽出したり、リスクの推定を行うことが可能です。
また、クラウドベースのシステムでは、部門や国を超えた情報共有が容易になり、グローバルな視点でリスク管理を進めることができます。

このようなデジタル技術の活用により、より迅速で正確なFMEAが実現しつつあります。

まとめ:新入社員へのメッセージ

品質保証部門の新入社員として、FMEAを使ったリスクアセスメントは、非常に重要な活動の一つです。
初めは覚えることが多く感じられるかもしれませんが、しっかりと基礎を学び、チームの一員として経験を積むことで、必ず力になります。
常に学び続ける姿勢を持ち、チームと協力しながら品質向上に貢献してください。

製造現場でのFMEAは、多くの人の協力と努力により成り立っています。
自身の専門性を高めることが、あなたの成長だけでなく、組織全体の品質向上にもつながることを忘れないでください。

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