投稿日:2024年7月30日

モータ駆動システムの設計と選定ポイント

モータ駆動システムの基本構成

モータ駆動システムは、製造業における設備や機械の動作を制御するために重要な役割を果たします。
その基本構成要素は、モータ、ドライブ(インバータ)、制御システム、および各種のフィードバック装置です。

まず、モータはエネルギーを機械的な運動に変換する装置です。
種類としては、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータなどがありますが、特に交流モータが広く使用されています。
インバータは、モータへの電力供給を制御する装置であり、可変速運転を実現するために必要です。
制御システムは、モータの動作を監視・調整する役割を果たし、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)や産業用PCが用いられることが多いです。
フィードバック装置は、エンコーダやセンサーを通じてモータの位置や速度を検知し、制御システムに情報を提供します。

モータの種類と選定基準

モータの選定には、用途や要求される特性に応じた慎重な考慮が必要です。
以下に主要なモータの種類とその特性を説明します。

直流モータ

直流モータ(DCモータ)は高いトルクを発生させる能力があり、速度制御が容易です。
一般に、可変速運転が必要なアプリケーションに適しています。
そのため、ロボットのアクチュエータや輸送機器に多く使用されます。
ただし、メンテナンスが必要なブラシとコミュテータが存在し、その交換や清掃が必要となる点がデメリットです。

交流モータ

交流モータ(ACモータ)は、一般的に産業用設備で最も広く使用されています。
特に三相誘導モータは、高効率で堅牢な構造を持ちます。
可変速駆動が求められる場面では、インバータと組み合わせて使用されます。
交流モータは、ブラシやコミュテータを持たないため、メンテナンスの手間が少ない点が大きなメリットです。

ステッピングモータ

ステッピングモータは、パルス信号によって回転角度を正確に制御できる特性があります。
そのため、高精度の位置決めが必要なアプリケーションに適しています。
例えば、CNC工作機械やプリンタなどで使用されます。
さらに、ステッピングモータは閉ループ制御と組み合わせて、より精密な制御が可能です。

ドライブ(インバータ)の選定ポイント

インバータは、モータの動作を最適に制御するために欠かせない装置です。
インバータの選定においては以下のポイントを考慮する必要があります。

出力要件

インバータの出力は、駆動するモータの定格電圧と電流を考慮して選定します。
不足するとモータが十分に動作しない可能性があるため注意が必要です。
逆に、過大な出力を持つインバータを選定すると、コストが無駄になるため適正なバランスを見極める必要があります。

制御機能

インバータには、速度制御だけでなく、位置制御やトルク制御など多様な機能を持つものがあります。
用途に応じて必要な制御機能を持つインバータを選定することが重要です。
例えば、位置制御が求められるアプリケーションでは、エンコーダ入力が備わったインバータを選ぶ必要があります。

環境耐性

使用環境も選定の重要な要素です。
産業用インバータは、高温、多湿、粉塵の多い環境下で使用されることが多いため、耐久性や防塵・防水性能が求められます。
Ip規格や温度範囲などの仕様を確認し、適切なインバータを選定してください。

制御システムの重要性と選定基準

制御システムはモータ駆動の動作を全体的に統括する役割を果たします。
選定においては、以下のポイントを重視する必要があります。

プログラマビリティ

制御システムは、機械の動作を詳細にプログラムする能力が求められます。
そのため、プログラミング言語のサポートやインターフェースの使いやすさが重要です。
PLCは、多くのメーカーが提供しており、ラダー言語やFBD(ファンクションブロックダイアグラム)などのプログラミングが可能です。

リアルタイム性

製造現場では、モータの動作に対するリアルタイムの制御が求められることが多いです。
特に速度や位置の制御においては、高速かつ正確なフィードバックが必要です。
制御システムには、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を使用したものもあり、精度の高い制御が可能です。

拡張性

製造ラインの変更や追加に対応できる拡張性も重要です。
制御システムはモジュラー構造を採用したものが多く、I/Oモジュールの追加やネットワーク機能の拡張が容易です。
将来的な設備の変化を見越して、柔軟に対応できるシステムを選定することが求められます。

最新の技術動向

モータ駆動システムにおいても、技術進歩は常に進行しています。
以下にいくつかの最新技術動向を紹介します。

高効率モータ

環境対策やエネルギー効率の向上が叫ばれる中、高効率モータの導入が進んでいます。
IE4やIE5といった高効率規格に適合するモータは、従来のモータと比較して消費エネルギーを大幅に削減できます。
これにより、運用コストの削減と環境負荷の低減が図れます。

IoTと連携

IoT技術の進展により、モータ駆動システムもネットワークと連携することが一般的になりつつあります。
例えば、各種センサーから得られるデータをリアルタイムでモニタリングし、異常を早期に検知するシステムが実現されています。
これにより、予防保全が可能になり、ダウンタイムの削減や生産性の向上が期待できます。

ソフトウェアによる制御の高度化

最新の制御システムでは、AI(人工知能)や機械学習を利用した制御技術が取り入れられています。
これにより、最適な運転条件の自動設定や異常検知の精度向上が実現されています。
さらに、デジタルツイン技術を用いて、現実のシステムと仮想モデルを連携させることで、シミュレーションによる設計段階での最適化も進められています。

まとめ

モータ駆動システムの設計と選定は、さまざまな要素を慎重に考慮する必要があります。
モータの種類や特性、インバータの出力要件や制御機能、制御システムのリアルタイム性や拡張性など、多岐にわたる要因が影響します。
さらに、最新技術にも目を向け、高効率モータやIoT、AIを活用することで、より高度で効率的なシステムを構築することが可能です。
これらの要点を踏まえ、現場での実践的な知識と経験を活かして、最適なモータ駆動システムを設計・選定することが重要です。

モータ駆動システムは製造業の心臓部ともいえる存在であり、その適切な設計が生産性向上に大きく寄与します。
製造業の現場で培った知識と経験を活かし、最新技術を取り入れながら、最適な駆動システムを見極めてください。

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