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医薬品製造部門に不可欠なDI(データインテグリティ)の確保と規制対応
目次
はじめに
医薬品製造業界において、データインテグリティ(DI)は製品の品質、安全性、そして規制遵守の保障に不可欠です。
データインテグリティとは、データが完全かつ正確であり、必要なときにアクセス可能であることを指します。
製薬業界では、データの正確性と一貫性が、製品のライフサイクル全体を通じて監視され、保証される必要があります。
最近では、国際的な規制機関はデータインテグリティの重要性を強調しています。
米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、および日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)などがデータインテグリティのガイドラインを発表し、監査や査察の焦点としているのです。
これらの規制に対応することは、業界の信頼を維持し、国際市場での競争力を高めるために避けられない課題です。
この記事では、医薬品製造部門でのデータインテグリティの確保方法と規制対応について、現場目線で詳しく解説します。
データインテグリティの基礎
データインテグリティの概念を理解するためには、「ALCOAプラス」という基準が基本となります。
ALCOAプラスは、データが「Attributable(帰属可能)、Legible(判読可能)、Contemporaneous(同時性)、Original(オリジナル)、Accurate(正確)」であることを示しています。
さらに、完全性、合計性、一貫性、永続性、独立性、柔軟性という追加の要素も含まれています。
これらの原則を踏まえて、各製造プロセスで生じるデータの正確性と信頼性を保証することが求められます。
データが不正確、不完全、または捏造されてはならず、常に信頼できる状態に保たれることが必要です。
データインテグリティの例
例えば、製品の有効成分の濃度を測定する際の機器データは、データインテグリティが保証されなければなりません。
もしこのデータが捏造されたり、意図的に改ざんされたりすれば、製品の安全性が損なわれ、消費者の健康を危険にさらす可能性があります。
また、製造工程の中での温度や圧力の測定データも同様です。
これらが実際と異なっていた場合、製造プロセスが意図したものとは異なる結果を生み出し、製品に不具合が生じる可能性があります。
データインテグリティの確保手法
データインテグリティを確保するためには、いくつかの重要な手法があります。
これらの手法は、データの記録、管理、保管においてその品質と信頼性を維持するために採用されます。
1. 記録の自動化
手書きの記録を減らし、電子記録を使用することで、データの改ざんや人為的ミスを最小限に抑えることができます。
自動化されたシステムにより、データは一貫して収集・記録され、また必要なタイムスタンプを持つことで、信頼性と透明性が向上します。
2. 継続的なトレーニングと教育
従業員に対するデータインテグリティに関するトレーニングは、意識の向上と、必要なスキルの習得を促します。
不正行為の防止や、データインテグリティの重要性を理解するための教育プログラムの実施は不可欠です。
3. 効果的な監査とレビュー
定期的な監査とレビューにより、不適切なデータ操作や誤りが早期に発見されます。
監査プロセスは、内外の専門家によって行われ、常に最新の規制要求を満たすために必要な手段です。
4. アクセス管理と権限設定
データのアクセス管理を強化することで、不正なデータの改ざんや意図しない削除を防ぎます。
適切な権限の設定により、データの一貫性とセキュリティを保ちます。
現行の規制対応とその重要性
製薬業界では、規制に対する適合性が企業の成長と存続において重要な役割を果たしています。
各国の規制当局による査察や指導は、データインテグリティの遵守の確認と、製品の安全性保証に焦点を当てています。
FDAによる規制とガイダンス
アメリカのFDAは、データインテグリティに関する複数のガイドラインを提供しており、特に医薬品製造業における記録管理について厳しい基準を持っています。
FDAの査察は、データインテグリティの遵守を確認するために詳細かつ厳格に行われ、違反が見つかった場合には重大な処分が科せられることがあります。
EMAの要求
EMAもまた、データインテグリティの維持を要件としており、製造業者が複数の国で製品を販売するためには、この要件を満たすことが求められます。
EMAは、製造プロセスの透明性と総合的なデータ管理を促進するためにガイドラインを設けています。
PMDAの視点とアプローチ
日本のPMDAも、データインテグリティの重要性を強調しており、国内外の製造業者に対して同様の基準を課しています。
PMDAは、製造業者がデータの完全性と正確さを維持するための施策を講じることを奨励しており、査察においてもその適合性を評価します。
データインテグリティ遵守のための実践的ステップ
ここまで述べたガイドラインや規制を踏まえて、企業がデータインテグリティを完全に遵守するための実践的なステップを考えてみましょう。
1. リスク分析の実施
データインテグリティに関連した潜在的なリスクを特定し、それらに対する対応策を開発します。
リスク分析プロセスは、製造部門全体でのデータフローを評価し、どんなリスクがあるかを系統的に見直すことから始まります。
2. 文書化され、かつ最新の手順書
すべての処理手順が最新の状態で文書化され、容易にアクセスできるようにします。
手順書の更新は定期的に行い、規制変更があった場合には速やかにそれらに対応します。
3. 電子システムの統合
デジタル化の進展により、紙ベースのデータ管理から電子的なデータ管理へと移行が進んでいます。
これには、ERP(企業資源計画)システムやLIMS(実験室情報管理システム)の導入が含まれます。
4. データバックアップとリカバリープランの策定
データのバックアップは定期的に行い、災害やシステム障害が発生した際にデータを迅速に復元できるようにリカバリープランを策定します。
最新の技術動向と進化
データインテグリティを維持するための技術は常に進化しています。
このセクションでは、最新の技術動向とその採用による利点について触れてみましょう。
ブロックチェーン技術の利用
ブロックチェーンは、各トランザクションを改ざん不可能な形で保存するために使用される新しい技術です。
この技術を利用することで、データの改ざんや無断の変更を防ぐことが可能となり、データの透明性と信頼性をさらに高めることができます。
AIおよび機械学習の活用
AIと機械学習を使用することにより、データの異常検知や予測分析が可能です。
これにより、データの不規則なパターンや潜在的な不正行為を早期に発見し、対応策を講じることができます。
デジタルツインの導入
デジタルツインは、物理的な製造プロセスをデジタル上で再現する技術です。
これにより、製造ラインでのデータ収集やシミュレーションをリアルタイムで行うことができ、データインテグリティの確認が容易になります。
まとめ
医薬品製造におけるデータインテグリティの確保は、品質保証と規制遵守の観点から重要不可欠です。
現場では、ALCOAプラスの原則に従い、データ管理を一貫して行うことが求められます。
また、最新の技術を活用し、組織内での教育を重ねることで、より強固なデータインテグリティを実現することが可能です。
今後も各国の規制機関はより厳しい基準を求めてくることが予想されますが、ここで紹介した手法や技術を活用することで、長期的な成功と国際市場での信頼を確立することができます。
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