投稿日:2025年1月8日

リチウムイオン電池の充放電特性・バッテリーマネジメント(BMS)と劣化解析・安全性評価法

リチウムイオン電池の充放電特性とは

リチウムイオン電池は、電気を蓄えたり放出したりする能力が優れています。これが「充放電特性」と呼ばれており、電池の機能性を評価する上で非常に重要です。充放電効率、容量保持率、充放電速度などが主要な評価指標となります。

充放電効率とは、入力したエネルギーがどれだけ取り出せるかの割合を示します。高効率であればあるほど、エネルギー損失が少なく、多くのエネルギーを取り出せます。一般的に、リチウムイオン電池の充放電効率は90%以上となっており、高い効率を保持しています。

容量保持率は、電池がどれほどの期間、設計された容量を維持できるかを評価します。充放電サイクルを繰り返すことで容量が劣化していくため、製品寿命にも大きく影響を与えます。一般的には、500~1,000サイクルで80%の容量を保持することが期待されます。

充放電速度は、電池がどれほど迅速にエネルギーを充電・放電できるのかを示します。これにはCレート(電池の容量を基準とした充放電の速度)も関係します。高い急速充電能力は必要とされる場面が多く、なおかつ発熱の抑制が課題となります。

リチウムイオン電池の電極構造と材料

リチウムイオン電池の電極は、主に正極と負極で構成され、リチウムイオンの移動によって電気を蓄える仕組みです。正極には一般的に酸化物(例えばリチウムコバルト酸化物)、負極には炭素材料(例えばグラファイト)が用いられます。

正極材は、高エネルギー密度を持ちつつも、安定性を兼ね備えた材料が求められます。現在、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)やリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)が注目されています。

負極材には、主にグラファイトが用いられていますが、シリコンを混ぜた新しい合金材料も研究されています。これにより、容量の増加が期待できますが、膨張と収縮が大きいため、材料の亀裂や劣化が課題となっています。

バッテリーマネジメントシステム(BMS)の役割

バッテリーマネジメントシステム(BMS)は、リチウムイオン電池の最適なパフォーマンスを維持し、安全に使用するための不可欠な技術です。複数の電池セルを効率よく管理し、監視することが求められます。

BMSは、電池の状態(バランス、温度、電圧、充電量)を監視し、不具合を予防するための制御を行います。例えば、過充電や過放電を防止し、電池寿命の延長と安全性の向上を図ります。さらに、温度管理も重要な役割で、高温による劣化や安全性のリスクを低減します。

BMSにより、各セルの特性を均一に保つバランシング機能も実施されます。これにより、すべてのセルが均等に使用され、特定のセルが過度に負荷を受けることがないようにします。

通信機能とデータ解析

最新のBMSには、データを収集し、外部に送信する通信機能が組み込まれています。これにより、リモートでの監視や制御が可能となり、IoT時代に適応した電池管理が期待されています。

収集されたデータは、詳細な解析が行われ、電池の劣化予測や故障リスクの低減に役立てられます。人工知能(AI)を活用した解析も進んでおり、リアルタイムでの最適化が可能です。

リチウムイオン電池の劣化解析

リチウムイオン電池の劣化は、性能の低下や使用時のリスクを引き起こすため、選び抜いた対策が求められます。劣化要因は主に化学的要因、物理的要因、使用条件の3つに分類されます。

化学的要因としては、電解液の分解や副反応が挙げられます。これにより内部抵抗が増加し、放電能力の低下が引き起こされます。物理的要因には、電極材の体積変化や劣化が含まれます。

使用条件として、特に高温環境での使用は、劣化を加速させます。適宜の熱管理を行うことが重要です。また、過度な充放電も避けるべきです。

劣化メカニズムの可視化と分析技術

電池内部の劣化メカニズムを可視化する手法として、X線断層撮影や電顕解析が用いられます。これらの技術により、劣化の進行を精査し、原因究明や新しい材料設計に反映させることができます。

こうした詳細なデータ取得と分析により、電池の長寿命化に向けた技術革新が進んでいます。

リチウムイオン電池の安全性評価法

リチウムイオン電池の安全性評価は、製品の信頼性と市場導入の要となる重要なステップです。特に過充電や短絡、物理的衝撃による発火、爆発のリスクを評価します。

研究施設では、様々な物理的、電気的試験を通じて、電池の耐久性と安全性を検証しています。具体には、衝撃試験、温度サイクル試験、過放電試験などが行われます。

また、安全性向上のための技術開発も重要です。自己消火性材料や、安全リリーフバルブの導入は有効な対策です。

新しい安全規格と法律の動向

グローバル市場においては、リチウムイオン電池の使用に関する新しい安全規格や法律が設定されています。これにより、市場参入条件が厳格化され、大手企業は安全性の向上に力を注いでいます。

例えば、UN 38.3試験(輸送中の安全性評価)は、国際的に認知された基準となっており、新しい製品開発時には不可欠なプロセスです。これらは、製品設計の初期段階から考慮されるべき重要な要素です。

まとめ

リチウムイオン電池は現代社会になくてはならない技術ですが、その充放電特性、劣化、および安全性管理のための技術開発が不可欠です。BMSはこの分野の使命を果たす中心的な役割を担っています。

電池技術の進化と、効率、安全性の向上は、エネルギー資源の持続可能な利用を確立し、製造業の未来を切り拓く力となります。技術者やバイヤーは最新の動向をしっかりとキャッチし、次世代に繋がる貢献をしていくことが求められます。

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