投稿日:2024年6月18日

モデルベース システムズエンジニアリング講座

製造業はその長い歴史の中で、数々の技術革新を経て進化してきました。
その中で近年注目されているのが、モデルベース システムズエンジニアリング(MBSE)です。
この手法は、設計・開発のプロセスを大きく変える可能性を秘めており、競争力の向上に寄与するものとして注目されています。
今回は、MBSEとは何か、そのメリットや導入方法、実際の現場での活用事例について詳しく解説します。

MBSEとは何か?

MBSEは「Model-Based Systems Engineering」の略で、日本語では「モデルベース システムズエンジニアリング」と呼ばれます。
これはシステム開発の過程全体を一つの統一されたモデルを使って管理・最適化する手法です。
従来の文書ベースの方法に比べ、視覚的なモデルを使用することで理解しやすく、協働が容易になります。

MBSEの核心は「モデル」です。
モデルはシステムの設計、分析、および検証を行うために使用される抽象的な表現です。
これにより、複雑なシステムを分かりやすく視覚化し、全体像を捉えつつ各部分を詳細に検討することができます。

従来の方法との違い

従来のシステム開発は、多くの場合、文書ベースで行われました。
仕様書や設計図、検証結果などが膨大な文書として存在し、その管理が大変なものでした。
一方、MBSEでは一つの統一されたモデルを中心に開発が進められるため、情報の一元管理ができ、変更の追跡も容易です。

MBSEのメリット

1. 効率性向上:視覚的なモデルにより、システムの全体像と部分的な詳細を同時に把握でき、効率的な設計および検証が可能です。
2. エラーの減少:モデルによるシミュレーションが可能なため、実際の製品開発前に潜在的な問題を発見できます。
3. チーム間のコミュニケーション向上:視覚的なモデルは、異なる専門分野や役職のメンバー間での理解を助け、コミュニケーションを円滑にします。

MBSEの導入方法

MBSEを導入する際には、いくつかのステップがあります。
ここでは主要なステップを紹介します。

1. 目的と範囲の設定

まず、MBSE導入の目的と範囲を明確にします。
どのプロジェクトに適用するのか、具体的な目標は何かを設定することが重要です。
これにより、全体の方向性と計画が明確になります。

2. モデリングツールの選定

MBSEを実施するためには、適切なモデリングツールが必要です。
SysML(Systems Modeling Language)やUML(Unified Modeling Language)など、システムモデリングに特化したツールを選びます。
これらのツールは、システムの動作や構造を視覚的に表現するための機能を備えています。

3. チームの教育とトレーニング

新しい手法を導入する際には、チーム全体の理解と協力が不可欠です。
社員に対してMBSEの基礎知識やモデリングツールの使用方法について教育し、トレーニングを行いましょう。
適切な知識を持ったメンバーがいれば、導入がスムーズに進みます。

4. 実際のプロジェクトへの適用

トレーニングが完了したら、実際のプロジェクトにMBSEを適用します。
この段階では試行錯誤が必要ですが、実践を通じて得られるフィードバックを元に、手法やツールの使い方を最適化していきます。

MBSEの実践事例

ここでは、MBSEを実際に導入して成功した事例をいくつか紹介します。

自動車メーカーの事例

ある大手自動車メーカーでは、新型車両の開発にMBSEを導入しました。
従来の文書ベースの方法では、設計・検証に時間がかかり、コミュニケーションの問題も発生していました。
しかし、MBSEを導入することでシステムの全体像を視覚化し、開発プロセスを効率化しました。
モデルを使ったシミュレーションにより、問題を早期に発見し改善することができ、結果として開発期間の短縮と品質の向上を実現しました。

航空宇宙産業の事例

航空宇宙産業では、非常に高い信頼性が求められます。
ある航空機メーカーでは、MBSEを用いて航行制御システムの開発を行いました。
MBSEのシミュレーション機能を活用して、飛行前の段階で多くのシナリオを検証し、潜在的な故障やリスクを特定しました。
これにより、システムの信頼性と安全性が大幅に向上し、試験飛行の段階での問題発生率が大幅に減少しました。

最新の技術動向

MBSEは進化を続けており、関連する技術も日々進歩しています。
ここでは、最新の技術動向をいくつか紹介します。

デジタルツインとの連携

デジタルツインは、物理的な製品やシステムをデジタル上で模倣する技術です。
MBSEとデジタルツインを組み合わせることで、設計・開発から運用・保守までのライフサイクル全体を統合的に管理できます。
これにより、リアルタイムでの問題解析や予測保守が可能となり、より高度な運用が実現します。

AIと機械学習の活用

AIと機械学習は、MBSEの効率化と高度化を支援する強力なツールです。
AIを活用することで、モデルの自動生成や最適化が可能となり、開発プロセス全体のスピードと品質が向上します。
また、機械学習により、過去のデータを基に最適な設計パラメータを導き出すこともできます。

クラウドベースのMBSE

クラウド技術の進展により、MBSEもクラウド上で実現できるようになりました。
従来は高価なソフトウェアとハードウェアが必要でしたが、クラウドベースのMBSEツールを利用することで、初期投資を抑えつつ高機能な環境を利用できます。
これにより、中小企業でもMBSEを導入しやすくなりました。

 

MBSEは製造業における効率化、品質向上、信頼性向上を実現するための強力な手法です。
視覚的なモデルを使用することで、複雑なシステムを分かりやすく管理し、チーム間の協働を促進します。
導入にあたっては、適切なツールの選定や社員の教育が重要です。
最新の技術動向を活用することで、さらに高度なシステム開発が可能になります。

将来の競争力を高めるために、ぜひMBSEの導入を検討してみてください。

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