投稿日:2024年9月17日

ロボットビジョンシステムの光学設計と画像処理

ロボットビジョンシステムとは

ロボットビジョンシステムとは、ロボットが視覚情報を取得し、それを用いて作業を行うためのシステムです。
製造現場では、製品の検査、組み立て、包装など、多くの工程で使用されています。
このシステムの中心となる技術が、光学設計と画像処理です。

光学設計の重要性

ロボットビジョンシステムにおける光学設計は、カメラやレンズ、照明の配置方法を最適化することが目的です。
適切な光学設計がなされていないと、撮影される画像の品質が低下し、画像処理の精度も失われてしまいます。
そのため、光学設計は非常に重要な役割を果たします。

カメラの選定

カメラは、ロボットビジョンシステムの目として機能します。
そのため、用途に応じたカメラの選定が重要です。
高解像度のカメラは、細部の識別が必要な作業に適していますが、処理速度が遅くなることもあります。
一方、低解像度のカメラは、処理速度が速くなりますが、細部の識別が難しくなります。
用途に応じて、最適なカメラを選ぶことが求められます。

レンズの選定

レンズも、ロボットビジョンシステムにおいて重要な部品です。
レンズの焦点距離や開口値によって、撮影範囲や明るさが変わります。
また、広角レンズや望遠レンズの選び方も、作業内容によって変わってきます。
例えば、広範囲を一度に撮影する必要がある場合は広角レンズが適しており、遠くの細かい部分を撮影する際には望遠レンズが有効です。

照明の最適化

照明は、撮影される画像の品質に大きく影響を与えます。
適切な照明条件を整えることで、画像のコントラストやシャープネスを向上させることが可能です。
また、照明の色温度や方向、強度を調整することで、影や反射を制御しやすくなります。
例えば、反射が多い金属部品の検査では、斜めからの照明が有効です。

画像処理技術の概要

光学設計によって取得された画像は、次に画像処理によって解析されます。
画像処理技術は、画像のフィルタリング、エッジ検出、形状認識など多岐にわたります。
これらの技術を駆使して、ロボットが必要な情報を得られるようにします。

フィルタリング

フィルタリングは、画像内のノイズを除去し、重要な情報のみを取り出すために行われます。
例えば、ガウシアンフィルタやメディアンフィルタがあり、どちらもノイズを効果的に除去する手法として知られています。
ガウシアンフィルタは、画像のぼかし処理に用いられることが多く、メディアンフィルタは、塩胡椒ノイズ(白黒点ノイズ)の除去に有効です。

エッジ検出

エッジ検出は、画像内の物体の輪郭を識別するために行われます。
そのために用いられるアルゴリズムが、ソベルフィルタやキャニー法です。
ソベルフィルタは計算が比較的簡単で高速ですが、ノイズに弱いという欠点があります。
一方、キャニー法はノイズに強く、より正確なエッジを検出できますが、計算量が多いため処理速度が遅くなることがあります。

形状認識

形状認識は、エッジ検出によって得られた情報を基に、物体の形状を認識するために行われます。
テンプレートマッチングやハフ変換などの手法が一般的に用いられます。
テンプレートマッチングは、事前に用意したテンプレート画像と一致する部分を探す方法で、比較的簡単に実装できますが、テンプレートの選び方が精度に大きく寄与します。
ハフ変換は、特定の形状(例えば直線や円)を検出するのに有効ですが、計算量が多いため処理速度がネックになることがあります。

最新の技術動向

ロボットビジョンシステムの分野では、最新の技術動向として機械学習やディープラーニングが注目されています。
これらの技術を活用することで、従来の手法では難しかった課題に対しても効果的に対処できるようになってきています。

機械学習

機械学習は、大量のデータから自動的にパターンを見つけ出し、それを基に予測や識別を行う技術です。
ロボットビジョンシステムにおいては、不良品の検出や物体の識別に応用されています。
従来のルールベースのアルゴリズムとは異なり、機械学習はデータから学習するため、柔軟に対応できる利点があります。

ディープラーニング

ディープラーニングは、機械学習の一種であり、特に多層ニューラルネットワークを用いた手法です。
画像認識の分野で大きな成功を収めており、ロボットビジョンシステムにも広く応用されています。
例えば、画像分類や物体検出、セグメンテーションなど、多岐にわたるタスクにおいて高い精度を実現しています。
ただし、ディープラーニングは大量のデータと計算資源を必要とするため、運用コストが高いという課題もあります。

実践的な導入事例

製造現場において、実際にロボットビジョンシステムを導入する際には、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
以下に、実践的な導入事例を紹介します。

自動検査システム

ある自動車部品メーカーでは、製品の最終検査にロボットビジョンシステムを導入しました。
従来は人手で行っていた検査業務を自動化することで、検査速度の向上とミスの削減を実現しました。
具体的には、カメラと照明を最適に配置し、画像処理アルゴリズムを用いて不良品を高精度に検出しています。

組立作業の自動化

電子部品を製造する工場では、ロボットビジョンシステムを用いた自動組立ラインを構築しました。
カメラで部品の位置を正確に把握し、ロボットアームが適切な組立作業を行います。
このシステムの導入により、作業のばらつきが減少し、全体の生産効率が向上しました。

無人搬送車(AGV)のナビゲーション

物流倉庫では、無人搬送車(AGV)のナビゲーションにロボットビジョンシステムが利用されています。
AGVはカメラで障害物を検知し、自動的に回避することが可能です。
これにより、安全性が向上し、効率的な物流が実現されています。

まとめ

ロボットビジョンシステムの光学設計と画像処理は、現代の製造業において不可欠な技術です。
適切な光学設計と高度な画像処理技術を組み合わせることで、品質管理や生産効率の向上が期待できます。
また、最新の機械学習やディープラーニングを活用することで、さらに高い精度と柔軟性を持つシステムの構築が可能となっています。
これらの技術を導入することで、製造業の現場はさらなる進化を遂げることができるでしょう。

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