投稿日:2024年9月24日

抄紙機オペレーターが語る、抄紙プロセスの改善方法

はじめに

製造業の中でも紙製造業の現場は、その技術と効率が求められます。
特に抄紙機オペレーターとしての経験は、製品の品質や生産効率に直結します。
本記事では、抄紙機オペレーターとして20年以上の経験を持つ私が、実際に行ってきた抄紙プロセスの改善方法について具体的に解説します。

抄紙プロセスの基本

抄紙機の役割と基本構造

抄紙機は、原料となるパルプを紙に変換するための機械です。
その構造は複雑で、多段階の工程を経て製品を作り上げます。
ここでは、原料供給、成形、乾燥、仕上げの四つの主要な段階について説明します。

原料供給

原料であるパルプを一定の濃度で供給することが抄紙機の第一ステップです。
パルプの濃度や種類によって紙の性質が大きく変わるため、この段階でのコントロールが重要です。

成形

原料が一流れの薄い層となり、金網の上で成形されます。
ここでの水分除去や繊維の配向は紙の基本的な物性に影響を与えます。

乾燥

成形された紙は、一連のロールを通過して水分を除去します。
この段階では温度管理がカギとなり、紙の均一な乾燥が求められます。

仕上げ

乾燥が完了した紙は、最終的な仕上げとして表面加工や巻き取りなどを行います。
ここでも精度が求められ、最終製品の質を左右する重要な段階です。

抄紙プロセスの問題点とその解決方法

紙の品質に関わる問題

抄紙プロセスでは、紙の品質に関する問題が多く発生します。
例えば、紙の厚み不均一、表面の粗さ、紙切れなどが挙げられます。

厚み不均一の解決方法

厚みの不均一は、成形段階での原料供給量のバラツキや乾燥段階での温度ムラが原因となります。
これを防ぐためには、原料供給システムの精度向上や乾燥ロールの均一な温度管理が不可欠です。
例えば、最新のセンサー技術を導入することで、リアルタイムでの厚み測定とフィードバック制御が可能になります。

表面粗さの解決方法

表面粗さは、成形や仕上げ段階での操作に起因します。
特に、適切なカレンダー処理を行うことで、表面を滑らかに仕上げることができます。
また、原料のパルプの選定も重要で、繊維の長さや混ぜ方を工夫することで目標の表面性を実現できます。

紙切れの解決方法

紙切れは、機械的要因や原料の問題など多岐にわたる原因があります。
この問題を減少させるためには、定期的な機械メンテナンスや、原料の均一な供給が求められます。
例えば、AIを活用して紙切れの発生可能性を予測し、事前に対策を取るといった方法が効果的です。

生産効率の向上方法

自動化の導入

抄紙プロセスの各工程において自動化を導入することで、生産効率を大幅に向上させることができます。
最新の自動化技術は、リアルタイムでのデータ収集と分析を可能にし、人間が行っていた細かい調整作業を自動的に行います。

例えば、IoT(モノのインターネット)技術を活用することで抄紙機全体の稼働状況をモニタリングし、効率的な運転管理を行うことができます。
また、ロボットアームや自動搬送システムを導入することで、作業の省力化と効率向上を実現できます。

エネルギー効率の改善

エネルギーの効率的な利用も生産効率向上の重要な要素です。
例えば、乾燥工程での熱エネルギーの再利用や、機械の余熱を他の工程で活用することで、全体のエネルギー効率を高めることができます。

特に最新の熱回収システムを導入することで、廃熱を有効活用し、エネルギーコストの削減と環境負荷の低減が可能になります。

人的リソースの最適化

抄紙プロセスの効率を最大化するためには、人的リソースの最適化も欠かせません。
オペレーターのスキル向上や適切な人材配置を行うことはもちろん、教育プログラムやトレーニングを充実させることで、作業の精度と効率を向上させます。

また、作業手順書やマニュアルの整備も重要です。
特に新しいシステムや機械を導入する際には、詳細な説明と実践的なトレーニングが必要です。

最新の業界動向

サステナブルな紙製造

近年、持続可能な製造プロセスへの関心が高まっており、紙製造業界でも環境への配慮が求められます。
例えば、再生可能な原料の利用や廃水の再利用などがあります。

また、環境認証を取得することで、エコ意識の高い消費者や企業からの信頼を得ることができます。
例えば、FSC(森林管理協議会)認証やPEFC(森林認証制度審査機関)認証などがあります。

デジタル技術の活用

デジタル技術の進化により、抄紙プロセスのさらなる効率化が進んでいます。
特にビッグデータやAIを活用したデータ解析が注目されています。

例えば、クラウドベースの管理システムを導入することで、どこからでもリアルタイムで生産状況をモニタリングし、迅速な意思決定が可能になります。
また、AIを活用した予知保全システムを導入することで、機械の故障を事前に予測し、ダウンタイムを減少させることができます。

労働力の多様化

少子高齢化に伴い、労働力の多様化が進んでいます。
外国人労働者や女性の採用を進めることで、多様な視点や価値観を取り入れた生産活動が可能になります。

また、リモートワークの導入も進んでおり、オペレーターや管理職が別の場所からも作業を監視・管理できる体制が整いつつあります。

まとめ

抄紙プロセスは、複数の工程を経て高品質な紙製品を製造する複雑なプロセスです。
今回の記事では、抄紙機オペレーターとしての経験を基に、品質向上や生産効率向上のための具体的な方法をご紹介しました。

持続可能な製造プロセスやデジタル技術の活用、さらには労働力の多様化など、最新の業界動向も取り入れることで、今後の製紙業界の発展に寄与することができると考えています。

読者の皆様が、これらの情報を活用して現場の改善に役立てていただければ幸いです。

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