投稿日:2024年6月10日

なぜなぜ分析習得

はじめに

なぜなぜ分析は、製造業において欠かせない問題解決手法です。
製造プロセスで発生する不具合や障害を根本から解決するためには、なぜなぜ分析の正しい理解と実践が重要です。
本記事では、なぜなぜ分析の基本原則から応用まで、具体的な方法と事例を交えてご紹介します。

なぜなぜ分析の基本概念

なぜなぜ分析とは

なぜなぜ分析(Why-Why Analysis)は、ある問題や不具合の原因を突き止めるために「なぜ(Why)」を繰り返す手法です。
一般に、5回の「なぜ」を繰り返すことで、根本原因にたどり着くことができると言われています。
この手法は、トヨタ生産方式(TPS)でも取り入れられており、品質管理やリスク管理の分野で広く活用されています。

なぜ5回なのか

「なぜ」を5回繰り返す理由は、一般的にそれが根本原因に到達するのに適した回数だと考えられているからです。
ただし、必ずしも5回に固執する必要はありません。
問題の深度や複雑性によっては、3回や6回の場合もあります。
重要なのは、表面的な原因だけでなく、真の原因を見つけ出すことです。

なぜなぜ分析の実践方法

ステップ1: 問題の明確化

まず、分析を開始する前に、具体的な問題を明確に定義します。
たとえば、「生産ラインでの不良品発生率が高い」といった問題です。
この段階では問題を曖昧にせず、具体的なデータを用いて説明することが重要です。

ステップ2: 最初の「なぜ」を問う

問題が明確になったら、その問題の原因を探るために最初の「なぜ」を問います。
「なぜ不良品が発生するのか」といった具体的な質問を設定します。

ステップ3: 連続する「なぜ」を繰り返す

最初の「なぜ」に対する答えを得たら、さらにその答えに対する「なぜ」を問い続けます。
これを繰り返すことで、表面的な原因から深層の原因へと掘り下げていきます。
各段階で得られた答えは記録し、後で検証するための資料として活用します。

ステップ4: 根本原因の特定

「なぜ」を繰り返すことで、不具合の真の原因が特定されます。
例えば、「なぜ不良品が発生したのか」という質問を繰り返すことで、「作業員のスキル不足」や「機械の調整不足」といった具体的な要因が明らかになることがあります。

ステップ5: 対策の立案と実行

根本原因が明らかになったら、それに対する効果的な対策を立案し、実行します。
対策は一時的なものでなく、再発を防止するための恒久的な解決策であるべきです。
対策の実行後も、その効果を定期的に検証し、更なる改善を図ることが重要です。

なぜなぜ分析の具体例

事例1: 不良品の発生

問題: 生産ラインでの不良品発生率が高い

1. なぜ1: なぜ不良品が発生するのか?
– 答え: 部品の寸法が規格外であるから
2. なぜ2: なぜ部品の寸法が規格外なのか?
– 答え: 加工機の設定がズレているから
3. なぜ3: なぜ加工機の設定がズレているのか?
– 答え: 設定確認プロセスが不足しているから
4. なぜ4: なぜ設定確認プロセスが不足しているのか?
– 答え: 作業員の教育が不十分だから
5. なぜ5: なぜ作業員の教育が不十分なのか?
– 答え: 定期的なトレーニングが行われていないから

根本原因: 作業員の教育不足

対策: 定期的なトレーニング計画の導入

事例2: 生産ラインの停止

問題: 生産ラインが頻繁に停止する

1. なぜ1: なぜ生産ラインが停止するのか?
– 答え: エラーが頻発しているから
2. なぜ2: なぜエラーが頻発するのか?
– 答え: センサーの誤動作が多いから
3. なぜ3: なぜセンサーが誤動作するのか?
– 答え: センサーの定期メンテナンスが行われていないから
4. なぜ4: なぜ定期メンテナンスが行われていないのか?
– 答え: メンテナンス計画が策定されていないから
5. なぜ5: なぜメンテナンス計画が策定されていないのか?
– 答え: メンテナンス担当者が不足しているから

根本原因: メンテナンス担当者の不足

対策: メンテナンス担当者の増員と計画的なメンテナンスの実施

なぜなぜ分析の注意点

継続的な改善が必要

なぜなぜ分析は一度成功すれば終わりではありません。
企業の環境やプロセスは常に変化しているため、定期的な見直しと改善が必要です。
特に、対策後の効果を継続的にモニタリングし、更なる改善点を見つけ出すことが重要です。

チームでの実施が効果的

なぜなぜ分析は一人で行うよりも、チームで取り組む方が効果的です。
異なる視点や経験を持つメンバーが集まることで、多角的な原因分析が可能になります。
さらに、対策の実行段階でもチーム全体の協力が不可欠です。

データの重要性

問題の特定や原因分析には、具体的なデータが欠かせません。
データに基づいた議論を行うことで、主観的な判断や感情に左右されず、客観的なアプローチが可能になります。
また、データに基づく対策の立案も効果的です。

最新の技術動向となぜなぜ分析

IoTとビッグデータの活用

最近では、IoT(Internet of Things)やビッグデータを活用した生産現場のデータ収集が進んでいます。
これにより、リアルタイムでのモニタリングや異常検知が可能となり、なぜなぜ分析の精度が向上しています。
センサーやデータ解析ツールを活用することで、より詳細な原因分析と迅速な対策が実現できます。

AIによる支援

人工知能(AI)を活用した原因分析や予測技術も進化しています。
AIは大量のデータを短時間で解析し、複数の要因を考慮して最適な原因と対策を提示することができます。
これにより、従来の手法では見落としがちな要因や関係性を発見することが可能です。

 

なぜなぜ分析は、製造業における問題解決のための非常に有効な手法です。
基本的な概念と具体的な実践方法を理解し、継続的に取り組むことで、品質向上やコスト削減、効率化を図ることができます。
さらに、最新の技術動向を活用することで、なぜなぜ分析の効果を最大化することも可能です。
本記事を参考に、なぜなぜ分析を実践し、自社の生産現場での問題解決に役立てていただければ幸いです。

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