CNC旋盤で発生するびびり振動の原因と抑制方法
CNC旋盤で発生するびびり振動とは?
CNC旋盤加工において、「びびり振動」とは加工中に工具やワークが小刻みに振動してしまう現象を指します。
びびり振動は工具寿命の低下や加工面の粗れ、精度不良の原因となり、生産性や品質に大きな影響を及ぼします。
そのため、旋盤オペレーターや生産技術者にとっては、びびり振動の発生原因を理解し、的確に抑制することが極めて重要です。
びびり振動が発生する主な原因
びびり振動は単なる「振動」ではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。
ここではその主な原因を解説します。
1. 機械剛性不足
CNC旋盤本体や工具ホルダー、チャック、ワーク支持部などの「剛性」が不足している場合、切削時の反力により微細な振動が発生しやすくなります。
旋盤の構造自体が古かったり、部品の摩耗・緩みにより支持力が低下している場合も要注意です。
2. 工具の突出し長さの過大
切削工具が大きく突出した状態で取り付けられていると、バネのようにしなりやすくなります。
この柔軟性がびびり振動を引き起こすことにつながります。
特に、細径バイトや、高アンダーカット工具は要注意です。
3. 切削条件の不適切設定
切削速度や送り、切り込み量などの条件が、不適切な場合もびびりが発生します。
たとえば、送り量が少なすぎたり切削速度が高すぎたりすると、刃先で不安定な振動が生じます。
4. 工具の摩耗または不良
切削工具の刃先が磨耗、チッピングしている場合や、材質自体に問題がある場合も、加工時に振動しやすくなります。
切れ味が鈍くなることで切削抵抗が変動し、不安定な力が発生するからです。
5. ワーク形状や素材特性
細長いワークやリング状ワークなど、構造的に剛性が低いワークは外部からの力による変形が大きく、びびり振動が発生しやすい特長があります。
また、ステンレスや高硬度合金など、切削抵抗が大きい素材も要因となります。
6. 固定・把握方法の問題
ワークがチャックや心押し台によってしっかり固定されていない場合、加工中に振動を吸収できず、びびりに直結します。
特に把握点が小さい場合、剛性が低下しやすくなります。
びびり振動がもたらす悪影響
びびり振動は、さまざまなトラブルや損失の原因となります。
ここでは主な悪影響について解説します。
加工面の粗れ・仕上げ精度の低下
びびり振動が発生すると、加工面が波打ったような形状になり、表面粗さが悪化します。
また、寸法精度や形状精度にも悪影響が出る場合があります。
工具寿命の短縮
微細な振動が工具に継続的に加わることで、刃先や工具本体に亀裂や欠けが発生しやすくなります。
その結果、工具の摩耗が早まり不経済です。
騒音の発生と作業環境悪化
びびりは金属同士の摩擦音やビビリ音として現れ、工場内の騒音レベル上昇を引き起こします。
作業者の身体的・精神的な負担にもつながります。
機械の故障リスク増加
長期間びびり振動が続くと、機械本体のベアリングや送り機構の部品摩耗を早め、重大な故障や不具合の温床になる可能性が高まります。
びびり振動を抑制する方法
びびりは完全になくすことは難しい現象ですが、適切な対策で大幅に抑制できます。
ここでは実践的な対策方法を解説します。
1. 機械・設備の剛性アップ
旋盤本体のボルト緩みや摩耗部品を定期的にチェック・メンテナンスし、機械の剛性を維持しましょう。
工具ホルダーやチャックも高剛性タイプに交換することで、びびりを軽減できます。
2. 工具の突出し長さの最小化
切削工具はワークに対してできるだけ短く取り付けます。
工具メーカーの推奨突出し長さを守ることが効果的です。
やむを得ず長く突出したい場合は、テーパーシャンクバイトやダンパー付き工具などの利用も検討します。
3. 切削条件の最適化
びびり振動が発生したら、切削速度や送りを変更してみましょう。
意外と「切削速度を思い切って上げる」「送り量を増やす」ことで振動が減る場合もあります。
切り込み量を変えることも有効ですので、条件を一つずつ変えてベストなポイントを探ります。
4. 工具の選定・メンテナンス徹底
耐びびり性の高いコーティング工具や、びびり抑制機構付き工具の導入も有効です。
また、工具の摩耗や損傷は早期に発見し、適切に交換や再研磨を行いましょう。
5. ワーク支持の強化と適正な把握
細長いワークや薄肉ワークの場合、心押し台や振れ止め(ステディレスト)を適切に使用しましょう。
また、センタリングの精度を上げたり、チャックやコレットの把握力を点検することも重要です。
6. 加工経路や切削順序の見直し
びびりが発生しにくい向きや順序を与えるだけでも変わります。
例えば、外径から内径、またはセンターから端へなど、切削の方向性を再検討してみましょう。
7. クーラントや切削油の活用
クーラントや切削油の適正供給量によって、びびりが発生しにくくなることがあります。
切削抵抗が下がることで振動の発生が少なくなりますので、ノズルの向きや量を工夫しましょう。
現場でよくあるQ&A
Q. 突如びびり振動が激しくなった場合、まず何を疑うべきか?
A. 工具の摩耗や欠損、ワーク固定の緩み、切削条件の不安定化を優先的に確認してください。
また、チャックの爪の摩耗や誤差もよくあります。
Q. びびり音が発生しやすい材質は?
A. ステンレスや難削材(インコネル、ハステロイなど)などは切削抵抗が高く、びびりが起きやすいです。
アルミのようなやわらかい金属も、剛性やしなりの関係で発生することがあります。
Q. 工具メーカー推奨のびびり抑制用バイトは効果があるか?
A. ダンパー付きバイトやびびり抑制構造のバイトは特に突出し長さが長い加工では高い効果があります。
価格が高くなる場合もありますが、継続的な不良やロスコストを考慮し、積極的な導入がおすすめです。
まとめ:びびり振動対策でCNC旋盤加工を安定化しよう
びびり振動は、CNC旋盤加工作業にとって避けて通れない懸念事項ですが、原因を正しく把握し、適切な対策を行うことで確実に抑制できます。
剛性の確保や切削条件の最適化、工具やワーク固定方法の見直しを積極的に行い、安定した高品質な加工を実現しましょう。
困った時は工具メーカーや機械メーカー各社の技術相談も役立ちます。
日常の点検やトライ&エラーを怠らず、びびり振動を最小限に抑えた生産現場づくりを目指しましょう。