放電加工機での電解腐食対策と加工液管理方法
放電加工機における電解腐食とは
放電加工機は、金属材料や非鉄材料の高精度な形状加工に広く用いられています。
この加工法は、電気的エネルギーを利用して工作物から素材を除去するものです。
しかし、その過程で「電解腐食」と呼ばれる現象が発生することがあり、加工精度や部品寿命に大きな影響を及ぼします。
電解腐食とは、電解反応によって金属表面が腐食し、加工対象が本来求める性能や品質を維持できなくなる現象です。
それは主に加工液中のイオンの作用によるものです。
放電加工時、微細な電流が流れることで電極とワーク(被加工物)間に電解反応が発生します。
その結果、アノード側の金属が溶解・溶出し、加工面の品質が低下することがあります。
電解腐食が及ぼす影響
電解腐食は、放電加工機を利用する現場にとって特に注意すべき問題です。
この現象が起きることにより、以下のような悪影響が発生します。
加工精度の低下
電解腐食により、加工面の組成や表面の均一性が損なわれ、寸法精度が落ちます。
精密部品や金型など、μm単位での制度が求められる製品では致命的な不良原因となります。
表面品質の劣化
腐食した部分には微小なピットや凹凸が発生しやすくなります。
それにより表面粗さが増大し、後工程の仕上げコストや工数が増えるだけでなく、製品使用時のトラブルにもつながりかねません。
製品寿命の短縮
加工面に生じた腐食部分は使用中の摩耗・劣化を促進するため、部品や金型の寿命を大きく縮めます。
電解腐食が発生するメカニズム
放電加工機で電解腐食が発生する主なメカニズムは、アノード側のワーク金属がイオン化して溶解することです。
以下にその主な原因を挙げます。
過剰な電解電流の発生
放電加工ではパルスがオンになるたびにごく微小な電流が流れます。
しかし、パルス休止中や不適切な電源設定により、直流成分などの無駄な電流が流れると、アノード金属が必要以上にイオン化し、腐食が進んでしまいます。
加工液の性質変化
加工液(絶縁油や水溶性加工液)は本来、電解反応を抑制する役割をもっています。
しかし、長期間の使用でイオンや水分が増え、導電性が高まると電解腐食のリスクが上昇します。
環境要因
放電加工機が湿度の高い場所に設置されていたり、加工液タンクが開放状態だったりすると、大気中から水分や酸素が混入し、電解腐食の促進要因になります。
放電加工機での電解腐食対策の重要ポイント
電解腐食を防ぐためには、機械設定・加工液の管理・メンテナンスの三点から対策を講じることが重要です。
電源設定の最適化
放電条件が不適切だと、腐食リスクが増大します。
特に、パルスON/OFF比や休止時間、電流値、電圧設定を細かく見直しましょう。
各社の放電加工機には、電解反応を抑える専用モードや最適パラメータが用意されている場合もあります。
極性の選定
アノード側(+極)が腐食を受けやすいので、ワーク極性の選定も大きなポイントです。
例えば、精度が重視される仕上げ加工時にはワークを-極とし、消耗しやすい電極を+極に設定することで被加工物側の腐食リスクを抑えられます。
加工液の適切な管理
加工液中の水分・異物・イオン濃度を定期的に測定し、劣化が進んだ液は速やかに交換しましょう。
水溶性加工液の場合は特に濃度やpHの維持が重要です。
また、タンクが密閉型であること、ろ過装置のメンテナンスも厳守しましょう。
アフターメンテナンス
放電加工後のワーク表面に付着した加工液や腐食生成物は、速やかに洗浄・除去します。
中和処理や防錆処理も有効です。
加工液管理方法の実践ステップ
加工液を正しく管理することは、電解腐食対策に不可欠です。
具体的な管理方法を順を追って解説します。
加工液の定期点検
加工液タンク内の液状況を毎日または定期的にチェックします。
色・臭気・透明度の変化は劣化のサインです。
必要に応じてサンプルを取り、導電率やpH、濃度も測定してください。
ろ過装置と水分管理
加工時に発生する微細な金属粉やカーボン等の異物は、ろ過フィルターやセパレータによって除去します。
少なくとも週1回のフィルター清掃・交換が推奨されます。
また、加工液中に混入した水分は電解腐食を助長するので、脱水装置や水分吸着剤を導入するのも一つの方法です。
適切な加工液の補充・交換
液量が少なくなると、ろ過性能や温度安定性が低下します。
規定量より下回らないよう都度補充します。
一定期間ごとの全量交換も腐食防止には効果的です。
添加剤の利用
加工液メーカーが推奨する防錆剤や腐食抑制剤を適切に添加することで、腐食リスクをさらに低減できます。
ただし、過剰な添加は加工後の洗浄性やコストに悪影響を及ぼすため、用法用量を守りましょう。
放電加工プロセスで役立つ豆知識
実際の加工現場で使われているノウハウをいくつかご紹介します。
短時間加工・分割加工の活用
一度に長時間連続で放電加工を行うよりも、複数回に分けて加工することで、加工液の過熱や電解反応の積算を低減できます。
インターバル中に加工液の撹拌や表面洗浄を行えば、腐食のリスクがさらに下がります。
温度管理の徹底
加工液やタンクの温度が高まると、電解反応が加速されます。
タンク冷却装置やエアコンによる作業環境全体の温度管理を徹底しましょう。
自己診断機能の活用
最新の放電加工機には、加工液状態や腐食リスクを自動判定する機能が搭載されていることがあります。
定型診断を取り入れ、異常を早期に察知できる体制を整えることも重要です。
まとめ:放電加工と電解腐食対策の最適解
放電加工機における電解腐食は、加工品質や部品寿命を脅かす重大な問題です。
最適な電源パラメータ、極性の切り替え、適切な加工液管理、定期的なメンテナンスをバランスよく実施することが重要です。
加工液の品質・性状は加工精度や腐食リスクに直結します。
そのためには、日々の点検・ろ過・補充・適切な交換、そしてメーカーが推奨する加工液・添加剤の活用が不可欠です。
これらを徹底することで、精度の高い加工面と設備の長寿命化を同時に達成できるでしょう。
放電加工に従事する方は、機械本体の性能だけでなく、腐食対策と加工液管理の重要性にぜひ目を向け、持続的な品質改善へとつなげてください。