高熱伝導性繊維の開発と電子機器冷却用途への応用

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高熱伝導性繊維とは

高熱伝導性繊維とは、金属やセラミックス並みに熱を速やかに伝える性能を備えた有機系、またはハイブリッド系の繊維です。
従来のポリエステルやナイロンの熱伝導率は0.2W/mK程度ですが、高熱伝導性繊維は10W/mK以上を目指して開発が進められています。
軽量で柔軟という繊維ならではの特性を維持しつつ、優れた放熱能を持たせられるため、電子機器冷却用途への期待が高まっています。

熱伝導率の指標

熱伝導率とは、単位長さ当たりで単位時間にどれだけの熱量を伝えられるかを示す値です。
単位はW/mKで表され、高いほど熱を素早く逃がせます。
電子機器冷却では5W/mKを超えると実用メリットが見込みやすく、10W/mKを超えると薄型ヒートシンクや金属箔の代替候補となります。

既存素材との比較

代表的な放熱材料であるアルミニウムの熱伝導率は約237W/mK、銅は約400W/mKです。
一方、高熱伝導カーボン繊維は沿面方向で600W/mKを実現した報告もあります。
ただし繊維自体は細径であるため、布やシート状に構成した際の実効熱伝導率は樹脂含浸や空隙率の影響を受け、数十W/mK程度に落ち着くケースが多いです。
それでも従来樹脂やゴムシート比では桁違いに高く、軽量・曲面追従性という利点を保持できる点が大きな魅力です。

開発動向

高熱伝導性繊維の研究開発は、フィラーの高配合化と分子配向制御の二つが主軸です。

炭素系フィラーの活用

カーボンナノチューブやグラフェンをポリマーに高濃度で複合化し、紡糸時に延伸配向させることで熱伝導ネットワークを形成する手法が注目されています。
台湾の研究グループは、CNTを20wt%含むポリアミド繊維で実測値15W/mKを達成しました。
課題はフィラーの分散均一性と界面熱抵抗の低減です。

金属ナノワイヤ配合

銀や銅のナノワイヤを繊維内部に3Dネットワーク化させ、導熱路を確保する技術も進展しています。
AgNWを5vol%組み込んだポリエステル短繊維を不織布化し、20W/mKのシート化に成功した例があります。
酸化防止コーティングを施すことで長期信頼性の向上が図られています。

高配向ポリマー設計

ポリベンゾイミダゾールや超高分子量ポリエチレンを極限まで延伸すると、ポリマー鎖間のフォノン散乱が減少し、単繊維で40W/mK超を示すことが報告されています。
フィラーを使わないため軽量・高絶縁性を維持でき、電子部品近傍でもノイズ源になりにくい利点があります。

試験・評価方法

繊維や布の熱伝導率は形態が多様なため、評価手法の選定が性能把握の鍵となります。

レーザーフラッシュ法

短時間パルスレーザーで片面を加熱し、裏面温度応答から熱拡散率を算出する手法です。
密度と比熱を掛け合わせることで熱伝導率を評価できます。
バルク試料向けですが、繊維束を円筒状に圧縮成型して測定するアプローチが一般化しています。

二次元熱画像法

放射温度計とサーモグラフィを組み合わせ、通電ヒーター上での温度分布を取得し実効熱伝導率を逆解析する方法です。
布やシート状態で評価可能で、実装状態に近いデータが得やすい利点があります。

電子機器冷却への応用

高熱伝導性繊維は、薄型化と柔軟性が求められる次世代電子機器において、従来金属ヒートスプレッダを置き換える可能性を秘めています。

放熱シート

ICパッケージとヒートシンクの間に挿入するギャップフィラーとして、高熱伝導性繊維シートが提案されています。
ポリイミド基材に延伸カーボン繊維を格子状に配置し、20W/mKを確保しつつ0.15mmの薄さを実現した事例もあります。
粘着層を設けることで貼り付け作業を簡略化し、再作業性も向上させられます。

ウェアラブルデバイス冷却

スマートウォッチやARグラスは肌に近い位置で発熱源が集中します。
高熱伝導性繊維で構成したバンドや布を筐体に密着させることで、発熱部から外気へ熱を拡散し、肌面温度を2〜3℃低減できた試験報告があります。
繊維なので肌触りが良く、装着感への影響が少ない点が差別化要素です。

5G基地局機器への実装

5G用アンテナユニットは高周波回路の集積化により発熱密度が増大しています。
金属放熱板を繊維複合シートに置き換え軽量化を図ると、設置工事の負担軽減や耐震性向上につながります。
耐候性ポリマーと撥水コーティングを組み合わせることで屋外環境でも10年以上の寿命を目指す研究が進行中です。

実装上の課題

性能が魅力的な一方で、量産適用には克服すべき課題が存在します。

機械強度と熱伝導率の両立

フィラー高充填による熱性能向上は、繊維の曲げ疲労や引張強度を低下させる場合があります。
CNTやグラフェンの表面改質によりマトリックスとの界面接着を高める、また空隙制御で応力集中を緩和するなどの対策が検討されています。

経済性とスケールアップ

現状では高機能フィラーが高コストであり、キログラムあたり数万円に達するケースも珍しくありません。
スケールアップに向けて、溶液紡糸から溶融紡糸へのプロセス転換や、フィラー分散工程の連続化が模索されています。
また、リサイクル設計として繊維を再溶融しやすいポリマー選択や、フィラー回収技術の開発が不可欠です。

今後の展望

高熱伝導性繊維は、IoT機器、EV用ワイヤハーネス、医療モニタリングデバイスなど、軽量・柔軟・高放熱を同時に求める領域で不可欠な材料となる可能性があります。
2025年以降は5Gスマートフォンの折りたたみ機構やメタバース用ウェアラブルの市場拡大に伴い、年率15%以上の需要増が予測されています。
さらに、サステナビリティの観点から生分解性ポリマーをベースにした高熱伝導性繊維の研究も始まっています。
エネルギー管理効率を向上しながら環境負荷を抑える材料として、産官学連携によるイノベーションが期待されます。

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