ホットスタンプとコールドフォイル印刷の違いと使い分け

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ホットスタンプとは?

ホットスタンプは、金属製の凸版(ダイ)を加熱し、箔を紙やプラスチック、革などの素材に圧着させる加飾方法です。
ダイと箔の間に被加工物を挟み、高温と高圧で転写するため、立体的な押し痕と光沢が同時に得られます。
金・銀・メタリックカラーのほか、ホログラム、パール、顔料系など多彩な箔を選択でき、高級感や視認性の向上に適しています。
箔の厚みが比較的あるため、耐擦過性に優れ、長期にわたって光沢が持続しやすい点も特徴です。

コールドフォイル印刷とは?

コールドフォイル印刷は、オフセット印刷機やフレキソ印刷機と同じライン上で、UV接着剤(コールドフォイル接着剤)を版で印刷し、その上に箔をラミネートして紫外線で硬化させる工法です。
熱をかけずに転写できるため、薄い紙や熱に弱いフィルムでも加工しやすく、印刷と同時に箔転写が完了します。
プロセスカラーを後刷りすれば、メタリックグラデーションや多彩な表現が可能で、パッケージやラベルのアイキャッチ向上に採用されるケースが増えています。

ホットスタンプとコールドフォイル印刷の違い

原理と工程の違い

ホットスタンプは「加熱・圧着・冷却」の工程で箔を転写し、ダイの凹凸形状がそのままエンボス効果として残ります。
一方、コールドフォイル印刷は「接着剤印刷・箔ラミネート・UV硬化・剥離」という流れで、物理的な押し痕はほとんど付きません。
そのため、ホットスタンプは厚みある立体感を演出でき、コールドフォイルは平滑な表面にメタリック層を形成します。

対応素材

ホットスタンプは、高温高圧に耐えられる厚紙やプラスチック、革などに強みがあります。
コールドフォイル印刷は、薄紙や透明フィルム、伸縮性のある樹脂シートなど、熱負荷の少ない基材に向きます。
ただし、UV硬化後に剥離テープで余分な箔を除去するため、紙粉が多い用紙ではブリッジが発生しやすく、事前テストが重要です。

デザイン表現

ホットスタンプは、0.2mm前後の細線でも再現性が高く、エッジがシャープに仕上がります。
さらにダイにミクロパターンを彫刻すれば、擬似ホログラムやマイクロテキストにも対応できます。
コールドフォイル印刷は、網点やグラデーションで接着剤濃度を調整することで、メタリックの濃淡や写真調表現を行えます。
加えてCMYKを重ね刷りすれば、部分的な虹色・カラフルな箔表現も一度のラインで実現します。

生産性とコスト

ホットスタンプは、箔送りと打刻の間欠動作になるため、大量ロットでは時間がかかりやすく、ダイの製作費も発生します。
コールドフォイル印刷は、オフセットと同速で回転搬送しながら箔転写可能なため、1分間数千枚の高速加工が可能です。
箔使用量はホットスタンプより多めに見積もる必要がありますが、ダイ不要で段取り替えが短時間のため、短納期大量生産に有利です。

環境面

ホットスタンプ箔は厚みがある分、金属蒸着層と樹脂層の複合フィルムです。
ただし箔の面積自体は微量で、紙との分別なくリサイクル可能とする調査結果もあります。
コールドフォイル印刷は、0.02μm程度の極薄アルミ層のみが紙に残るため、リサイクルラインへの影響がさらに小さいとされています。
また熱源が不要なので、エネルギー消費が少ない点も環境配慮の観点で評価されています。

使い分けのポイント

高級感を最大限に演出したい場合

パッケージのロゴや箔押し名刺など、高級志向のブランドでは、立体的なエンボス感が得られるホットスタンプが最適です。
ダイを加工し、凸凹やレリーフを加えることで唯一無二の質感を与えられます。

短納期・大量ロットを優先したい場合

飲料ラベルや日用品パッケージなど、数十万枚単位を短時間で仕上げる案件では、コールドフォイル印刷が適しています。
印刷と同時に箔付与が完了するため、ライン統合で工程を削減できます。

基材の熱耐性が低い場合

熱で収縮するフィルムや、薄くて熱で波打ちやすいカード紙には、低温で加工できるコールドフォイルが安全です。
逆に厚手の革やPVCカードなど、耐熱・耐圧が十分な素材ならホットスタンプでも問題ありません。

環境配慮やリサイクル性を訴求したい場合

紙パッケージで「紙資源としてリサイクル可能」を打ち出す場合、コールドフォイル印刷の極薄メタル層はメリットとなります。
ただし認証取得には各国のリサイクルガイドラインに従う必要があるため、事前に仕様書と照合してください。

導入時によくある疑問と回答

Q1. 箔色は自由に調色できますか?

ホットスタンプ箔は、金銀や基本色は豊富ですが、完全な特色合わせは困難です。
コールドフォイル印刷なら、シルバー箔の上にプロセスカラーを重ねて特色に近づける方法があり、PANTONE近似値の再現が可能です。

Q2. 微細文字やバーコードはどちらが有利ですか?

ホットスタンプは凹凸で文字がつぶれるリスクがあり、6pt以下の小さい文字やバーコードには不向きです。
コールドフォイル印刷は平滑なままなので、8pt程度までなら問題なく読み取り可能です。

Q3. 箔部分にニス・PP貼りは必要ですか?

ホットスタンプは箔層が厚く耐擦過性が高いため、追加コーティングは任意です。
コールドフォイル印刷はシールや化粧箱で擦過が多い場合、オーバープリントニスやラミネートで保護することが推奨されます。

Q4. コスト比較はどう考えればよいですか?

小ロットや多品種の場合、ダイ費が重くのしかかるためコールドフォイルが割安になる傾向があります。
逆にロングランで1種類を大量に生産する場合、ホットスタンプの箔使用量が少ない分、合計コストが下がるケースもあります。

導入フローとチェックリスト

1. デザイン要件の整理(立体感、グラデーション、細線など)
2. 基材の特性確認(耐熱、厚み、印刷方式)
3. 予定ロットと納期の見積り
4. テスト加工による品質・剥離テスト
5. コスト試算と環境対応の評価
6. 本生産・品質検査・アフターフォロー

まとめ

ホットスタンプとコールドフォイル印刷は、どちらもメタリックな付加価値を提供する優れた加飾技術です。
ホットスタンプは、熱と圧によるエンボス効果で圧倒的な高級感と耐久性を実現します。
コールドフォイル印刷は、印刷工程と一体化した高速生産と、多彩なカラー表現、薄紙対応が強みです。
プロジェクトの目的、デザイン、素材、環境要件、コスト・納期を総合的に検討し、最適な工法を選択することで、製品の魅力を最大限に高められます。
両技術のメリットと制約を理解し、テスト加工とコミュニケーションを重ねれば、顧客満足度の高いパッケージや印刷物を提供できるでしょう。

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