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フラーレン誘導体は、炭素原子のみで構成される球状分子C60またはC70に官能基を導入して溶解性や電子特性を高めた有機化合物です。
1990年代にC60が発見されて以来、その高い電子受容能力が注目され、太陽電池やトランジスタなどの有機エレクトロニクス分野で不可欠な材料となりました。
フラーレン骨格のπ共役系は電子を容易に受け取るため、ドナー材料からの電子を効率的に引き抜き、電荷分離を促進する役割を果たします。
純粋なC60は疎水性が高く、一般的な有機溶媒への溶解度が低いため、デバイス製造の際に均一な薄膜を形成しにくいという課題があります。
そこで、メトキシ、カルボキシル、フェニルなどの官能基を付加することで溶解度を劇的に向上させた誘導体が開発されました。
官能基は分子間距離を調整し、薄膜内でのパッキングモードを制御するため、電子移動度やフィルムモルフォロジーにも大きな影響を与えます。
最も広く利用されているフラーレン誘導体が[6,6]-フェニルC61ブチル酸メチルエステル、通称PCBMです。
PCBMはクロロベンゼンやオルトジクロロベンゼンに高い溶解度を示し、スピンコートやインクジェットといった溶液プロセスで均一なバルクヘテロ接合膜を形成できます。
また、HOMOレベルは約−6.1 eV、LUMOレベルは約−3.7 eVとドナー高分子の典型的なLUMOよりも低いため、電荷移動が熱的に駆動されやすい点が利点です。
フラーレン誘導体の電子受容特性は、分子軌道エネルギー、電子親和力、そして分子間相互作用に起因します。
導入された官能基は電子供与性または求電子性を付加し、LUMO準位を微調整することでデバイス全体の開放電圧を最適化できます。
有機薄膜太陽電池では、ドナーのHOMOと受容体のLUMOの差で決まるエネルギーオフセットが0.3 eV以上あると効率的に励起子が分離すると報告されています。
フラーレン誘導体は固有の高電子親和力により低いLUMOを示すため、ほとんどのπ共役高分子ドナーと組み合わせて十分なオフセットを確保できます。
一方で、LUMOが低すぎると開放電圧が犠牲になるため、最近はフッ素置換やナフチル基導入によってLUMOを高位にシフトさせる研究が盛んです。
フラーレン誘導体は球状構造によって三次元的にπ共役ネットワークを形成しやすく、薄膜中での電子移動度が10⁻³ 〜 10⁻¹ cm² V⁻¹ s⁻¹に達します。
高い移動度は電荷収集を迅速にし、ドナーと受容体間で生じる再結合損失を低減します。
さらに、誘導体の表面エネルギーをチューニングすることで、ドナー・受容体間のナノ相分離構造を制御し、励起子拡散長(10〜20 nm)以内に界面を配置できます。
フラーレン誘導体はバルクヘテロ接合(BHJ)デバイスの電子受容層として最も長い実用実績を持ち、高い光電変換効率と安定性を同時に実現してきました。
BHJ構造では、ドナー高分子とフラーレン誘導体を同一溶媒で溶解し、同時にスピンコートして薄膜を形成します。
乾燥過程でドメインサイズが自己組織化的に数十ナノメートルに調整され、広大な界面が生成されます。
この結果、励起子が生成点から界面まで拡散する間に失活する確率が低くなり、高い短絡電流密度(Jsc)を生み出します。
開放電圧(Voc)は基本的にドナーのHOMOと受容体のLUMO差で決まるため、フラーレン誘導体のLUMO制御はデバイス設計の鍵です。
誘導体に高電子求引基を導入するとLUMOが下がり、電荷分離は促進されますがVocが低下します。
逆に電子供与的なアルキル基やシロキサン基を導入するとLUMOが上昇しVocが向上しますが、十分なエネルギーオフセットを保つ必要があります。
最適化により、PCBM系デバイスでは10 %を超える変換効率が多数報告されています。
近年は非フラーレン系受容体が注目を浴びていますが、それでもフラーレン誘導体は高い熱安定性と長期動作信頼性で優位性を保っています。
開放電圧向上を目的に、イミドフラーレン、アミノ置換フラーレン、フルオレン基導入フラーレンなどが合成されています。
これらはPCBMより0.1 〜 0.2 eV高いLUMOを示し、P3HTやPTB7と組み合わせてVocを0.8 V超に到達させています。
さらに、大容量バッチ合成法やグリーン溶媒への溶解性付与によって、産業的な量産適合性も向上しています。
非フラーレン受容体は高吸収係数を持ち光取り込みを向上できますが、結晶化度の高さゆえにドメインが粗大化しやすく、フィルム形成が難しい場合があります。
その点、フラーレン誘導体は球状構造による等方的な凝集挙動で、安定したナノ相分離を得やすいメリットがあります。
さらに、界面ダイポール形成により電子抽出層としても機能し、デバイスのシリーズ抵抗を低減できます。
最大の課題は、可視光領域の吸収が弱いため、光取り込み効率をドナー材料に依存してしまう点です。
この弱点を補うため、長波長側に吸収を持つアントラセンやペリレン誘導基をフラーレン骨格に連結した広帯域吸収型誘導体が研究されています。
また、紫外線照射によるエピサイド化や酸素吸収によるLUMOシフトなど、デバイス劣化メカニズムの解明と対策も進められています。
製造面では、ロール・ツー・ロール成膜に適した低沸点溶媒でのインク設計や、ハロゲンフリー溶媒への完全移行が求められています。
今後は、フラーレン誘導体と非フラーレン受容体をハイブリッド化したマルチコンポーネントBHJや、インターカレート型タンデムセルでの活用が期待されます。
高い電子受容特性と加工適性を両立した新規誘導体の創出により、有機薄膜太陽電池のさらなる高効率化と低コスト化が実現すると見込まれます。

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