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リチウム硫黄電池は、理論エネルギー密度が2500Wh/kgを超える次世代蓄電池として注目されている。
正極に硫黄、負極にリチウム金属を用いることで従来のリチウムイオン電池を大幅に上回る容量を達成できる。
しかし、液体電解質系ではポリスルフィドの溶出によるシャトル効果やリチウムデンドライトの成長が問題となり、サイクル寿命と安全性の両立が難しい。
この課題を根本的に解決する手段として、可燃性溶媒を含まない固体電解質の採用が提案されている。
固体電解質は化学的に安定で漏液リスクがなく、シャトル効果の抑制、デンドライトの抑制に寄与する。
一方で、室温域でのイオン伝導率が液体に比べて低い傾向にあり、性能最大化にはイオン伝導性の最適化が必須である。
固体電解質中を移動するLi⁺イオンの抵抗は、内部バルク抵抗と粒界抵抗に大別される。
イオン伝導率が0.1mS/cmを下回る場合、内部抵抗に起因するIRドロップが顕著となり、出力電圧低下や発熱を招く。
特に硫黄正極は本質的に導電性が低いため、電解質抵抗が高いと反応均一性が損なわれ、容量低下が顕著に表れる。
したがって、300–500Wh/kg級の実用パックを設計する際には、室温で1mS/cm以上、60°Cで10mS/cm以上のイオン伝導率が望ましいとされる。
この指標を満たす材料・構造設計こそ、リチウム硫黄電池の商業化を左右する鍵となる。
硫化物系電解質は広いイオンチャネルと低い結合エネルギーにより、高いイオン伝導率を示す。
Li₁₀GeP₂S₁₂(LGPS)は室温で10mS/cmを超え、現在知られる中でも最高クラスの伝導性を有する。
結晶構造内の一軸方向にLi⁺が高速拡散する「トンネルパス」が連続的に存在することが主因である。
元素置換によりサイトエネルギーを平坦化し、拡散障壁を下げることでさらなる向上が期待できる。
硫化物母相にCl⁻やI⁻を部分置換すると、リチウム空孔の生成エネルギーが低下しキャリア濃度が増加する。
最新報告ではLi₃PS₄にLiClを5mol%添加するとバルク伝導率が二倍に向上した。
加えて粒界で形成されるLiClアモルファス層が電子絶縁バリアとして機能し、硫黄正極との界面抵抗も抑制する。
機械的脆性を補うために、PEOやPVDFを数wt%共混したハイブリッド電解質が開発されている。
ポリマー相が粒界を充填し、良好な接触を確保することで実効的なイオン伝導経路が増加する。
さらに外部応力に対する耐性が向上し、充放電膨張を吸収できるため長寿命化に寄与する。
硫化物粉末を高エネルギーボールミルでナノサイズ化すると、粒子間接触面積が増加し、圧縮成形後の緻密度が向上する。
これにより粒界抵抗が1/3以下に低減した事例が報告されている。
ただし過粉砕によりアモルファス化が進むと結晶パスが途切れ伝導率低下を招くため、適切なミリング時間の最適化が必要である。
原子層堆積(ALD)によるLiNbO₃皮膜を硫黄正極上に形成すると、固体電解質との化学反応を抑止し界面抵抗を100Ωcm²以下に抑えられる。
また硫化物粒子自体をLi₄Ti₅O₁₂でナノコートし、電子伝導パスを遮断しながらイオン拡散パスを保持するアプローチも有効である。
第一原理計算によりリチウム拡散バリアを高精度で評価し、低障壁化に有効な置換元素をスクリーニングできる。
さらにDFT計算データを機械学習モデルに入力し、組成空間を包括的に探索することで、従来の経験則では到達できなかった高伝導材料を短期間で発見できる。
2023年にはガラス状態のLi₃.₀₉₅Cl₀.₂₇S₀.₇3が5mS/cmを示し、計算主導で設計された最初の例として話題となった。
プロセス条件についても多変量解析でホットプレス温度、圧力、雰囲気の最適値を提示し、実験の試行回数を最大80%削減した実績がある。
固体電解質単体のイオン伝導率は目標値に近づきつつあるが、全固体リチウム硫黄電池セルとしてのエネルギー密度、コスト、量産性にはまだ課題が残る。
特にスケールアップ時のシート厚均一性、界面接合の再現性、硫黄の体積変化吸収メカニズムの確立が急務である。
加えて原料コストの高いGeやNbを用いず、地球豊富元素で同等性能を達成する低資源依存型材料の開発が求められる。
政策面では、EUの電池規制に対応するリサイクルフレンドリーな設計や、ISO規格に基づく安全試験の標準化が進む。
これらの課題をクリアできれば、2030年以降の航空ドローン、長距離EV、分散型蓄電網のコア技術としてリチウム硫黄全固体電池が本格普及すると予測される。
リチウム硫黄電池の実用化には、固体電解質のイオン伝導性最適化が不可欠である。
硫化物系材料の高伝導メカニズム解明と、ハロゲン化物添加、ポリマー複合化によるキャリア濃度・機械特性の両立が鍵となる。
ナノ構造制御により粒界抵抗を低減し、界面コーティングで化学安定性を確保することで、セルの出力と寿命を大幅に向上できる。
さらに第一原理計算と機械学習の活用により、新規組成とプロセス条件の探索効率が飛躍的に高まりつつある。
今後も材料科学、プロセス工学、システム設計が連携し、持続可能かつ高性能なリチウム硫黄全固体電池の実現に向けた研究が加速すると期待される。

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