貴社の強みや特徴を一言で表現
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高合金鋼は、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウムなどの合金元素を合わせて12質量%以上含有する鋼を指します。
炭素鋼や低合金鋼と比べ、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れ、航空機部品、化学プラント、金型、医療機器など幅広い用途で採用されています。
製造業で求められる強度向上のニーズに応えるため、元素設計と最適な熱処理プロセスの組み合わせが不可欠です。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ後に高強度を得られ、バルブやシャフトに使用されます。
オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性が高く配管や圧力容器に最適ですが、析出硬化処理により追加強化が可能です。
工具鋼・高速度鋼は複数の硬質炭化物を生成し、高温でも硬さを維持できるため切削工具や金型に活躍します。
耐熱鋼やニッケル基超合金は800℃超でのクリープ強度が求められ、ガスタービンや排ガス処理設備に組み込まれています。
高合金鋼で強度を高めるには、金属組織の緻密化と析出相の制御がポイントです。
クロムやモリブデンが母相格子を歪ませ、転位の移動を阻害することで降伏強さを高めます。
固溶度限界を超えると粗大な炭化物が生成するため、元素添加量と熱処理温度のバランスが重要です。
時効処理により、銅やニオブ、チタンの微細析出物が生成します。
析出粒径を数nmに保つと転位が釘付けされ、大幅な引張強さ向上が得られます。
過度の時効は粗大化と結晶粒成長を招き、かえって靭性を損なうため注意が必要です。
オーステナイト系鋼を冷間加工後に低温焼戻しすると、εマルテンサイトや変形双晶が形成され加工硬化が進みます。
TRIP鋼と同様の効果を狙い、冷間圧延+時効処理を組み合わせる事例もあります。
高合金鋼の強度を最大化するためには、基礎熱処理プロセスを理解し、目的に応じて組み合わせることが求められます。
一次硬化相であるマルテンサイトを生成後、焼戻しで残留応力を緩和しながら二次硬化析出物を生成します。
焼戻し温度は500〜600℃が一般的ですが、二次硬化ピークを外すと脆性破壊が起こるため、材質ごとに綿密な温度設定が必要です。
−80℃以下での深冷処理により、残留オーステナイトをマルテンサイト化させ、硬さ安定性と寸法精度を向上させます。
工具鋼ではサイズ変動を抑え、金型寿命を20〜30%向上させた実績があります。
析出硬化系ステンレス(17-4PHなど)は、1040℃溶体化後、480〜620℃で4時間前後の時効を行います。
硬度HRC40以上を保持しつつ高耐食性を維持できる点が特徴です。
均一なパーライトやベイナイト組織を得て、機械的特性と加工性を両立します。
厚肉ワークの内部割れ防止や後加工の切削性向上に有効です。
焼入れ温度1000〜1050℃、油冷後に200℃焼戻しを2時間実施すると、HRC50以上の硬度を確保できます。
さらにサブゼロ処理を併用すると残留オーステナイトが2%以下に低減し、耐摩耗性が約1.3倍に向上します。
溶体化後、H900(480℃×1h)で時効すると、高硬度と0.2%耐力1,000MPa以上を両立します。
反対に高靭性が必要な場合はH1150(620℃×4h)で析出粒子を粗大化させ、靭性を2倍確保する選択肢もあります。
1250℃で予熱後、1210℃に保持し高速ガス冷却を行い、560℃で二段焼戻しを2回実施します。
その結果、二次硬化ピークでM6C、MC型炭化物が均一析出し、赤熱硬さHRC60以上を達成します。
980℃溶体化、空冷後に720℃で16時間時効させることで、γ’析出物が微細に分散し、650℃でのクリープ強度を大幅に高めます。
高合金鋼は合金元素が多く、拡散速度が遅いため、温度上昇が不十分だと未溶解炭化物が残留します。
一方、長時間の高温保持は粒成長を促進し、靭性低下を招きます。
シミュレーションソフト(Thermo-Calcなど)を活用し、Fe-Cr-Ni系平衡図を参照しながら最適温度域を決定する方法が有効です。
高温での酸化・脱炭を防ぐため、真空炉やN₂+H₂混合ガス炉が多用されます。
酸素濃度1ppm以下を維持することで、表面酸化膜厚を10nm以下に抑え、研磨工程を簡略化できます。
油冷、ガス冷、ポリマー冷却のうち、ワーク形状と必要冷却速度を照合し選定します。
大型鍛造部品ではポリマー濃度を変化させ、割れを防ぎつつマルテンサイト変態を完結させる事例が増えています。
内部温度を熱電対と赤外線カメラでリアルタイム監視し、デジタルツインで予測した温度分布と比較することで、オーバーヒートや冷却ムラを即座に検知できます。
焼戻し後はロックウェル硬度試験とシャルピー衝撃試験をセットで実施し、脆性温度域の確認を徹底します。
微小域の硬さ分布はマイクロビッカースで測定し、ワーク中心部と表面のバラツキを±10HV以内に管理するのが理想です。
高合金鋼は高強度ゆえに内部割れのリスクが高まります。
超音波探傷で0.5mm以上の割れを検出し、必要に応じて放射線透過検査で再確認します。
鋭角部や肉厚急変部は応力集中部となり、焼入れ割れが発生しやすいです。
設計段階でR形状を持たせ、熱処理前に応力除去焼鈍(650℃×2h)を行うことで被害を最小化できます。
真空炉でもベーキング中のガス放出で脱炭が起こる場合があります。
炉壁の洗浄と定期的なオーバーホールに加え、表面に0.02mmの仕上げ余肉を設けて最終研磨で除去する方法が一般的です。
ピット炉から連続真空炉へ置換すると、搬送時間を短縮しつつ温度分布のバラツキを±5℃以内に抑えられます。
ロボット搬送とRFIDタグで部品を個別管理し、トレーサビリティを確保する取り組みが加速しています。
多層断熱材や高反射コーティングを施したヒータ部材で放熱ロスを20%削減した事例があります。
さらにヒートポンプ廃熱回収システムを併設し、前処理洗浄槽の温水加熱に再利用することでCO₂排出を年間50t削減できた報告もあります。
炉内温度、真空度、ガス流量のビッグデータをAIが解析し、最適なパラメータをリアルタイムでフィードバックするスマートファクトリー化が進展しています。
熟練技術者の経験を数値化することで、夜間運転時の不良率を15%低減した実績があります。
高合金鋼の強度向上を図るには、合金元素の役割理解と精密な熱処理コントロールが欠かせません。
固溶強化、析出強化、マルテンサイト変態など複合メカニズムを活かしつつ、焼入れ・焼戻し、時効処理、サブゼロ処理などを目的別に使い分けることで、要求性能を満たすことが可能です。
また、温度・時間・雰囲気・冷却媒体をシミュレーションとセンシングで最適化し、非破壊検査や硬度測定で品質を担保することが製造業における競争力強化につながります。
連続炉、自動化、AI解析といった最新技術を取り入れることで、省エネと歩留まり向上を同時に実現できる時代です。
高合金鋼のポテンシャルを最大限に引き出す熱処理技術を継続的にブラッシュアップし、付加価値の高い製品づくりに挑戦しましょう。

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