投稿日:2024年6月12日

リチウムイオン二次電池の特性、劣化・寿命予測と性能評価

リチウムイオン二次電池の特性とは

リチウムイオン二次電池は、携帯電話から電気自動車まで幅広い用途で使用されている、現代のエネルギー保存技術の中核を成すデバイスです。
その特性には、エネルギー密度の高さ、長寿命、軽量性、環境負荷の低さなどが挙げられます。
以下に、リチウムイオン二次電池の主要な特性を詳しく説明します。

エネルギー密度の高さ

リチウムイオン二次電池は、他のエネルギー保存デバイス(例えばニッケルカドミウム電池や鉛蓄電池)と比較して、非常に高いエネルギー密度を持っています。
これは同じ重量・体積でより多くのエネルギーを保存できることを意味します。
エネルギー密度の高さはバッテリーの小型化・軽量化を図り、携帯性や使用効率を向上させます。

長寿命

リチウムイオン二次電池は、充放電サイクルが多くても性能を維持する特性があります。
適切に使用すれば、数百回から数千回のサイクルを経ても容量低下が少なく、長期間にわたって安定した性能を提供します。
ただし、過充電や過放電、極端な温度条件などはバッテリーの寿命を短くする可能性があります。

軽量性

リチウムイオン二次電池は、他の材料を用いたバッテリーに比べて軽量です。
これは、電気自動車やドローン、ポータブル電子機器など多くの用途において、重要な利点となります。
重量が軽ければ、それだけ装置全体の重量を減らすことができ、効率と使い勝手が向上します。

環境負荷の低さ

リチウムイオン二次電池は、他の化学電池と比較して環境負荷が低いです。
カドミウムや鉛などの有害物質を使用していないため、廃棄時の環境への影響も少ないです。
また、リユース・リサイクルの研究が進んでおり、さらなる環境負荷の低減が期待されています。

リチウムイオン二次電池の劣化メカニズム

リチウムイオン二次電池の寿命は、使用環境や条件によって大きく左右されます。
劣化メカニズムを理解することで、バッテリー寿命の延長や適切な保守が可能となります。
以下に主な劣化要因を説明します。

サイクル劣化

リチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返すことで次第に劣化します。
この現象をサイクル劣化と呼びます。
サイクル劣化の主な原因は、リチウムイオンが正極や負極で副生成物を生成し、これが電極の表面に堆積することによります。
この堆積物は、イオンの移動を阻害し、内部抵抗を増加させます。

カレンダー劣化

カレンダー劣化は、バッテリーが使用されずに保存されている期間中に発生する劣化です。
保存環境の温度や湿度、バッテリーの残存容量などが影響します。
高温環境や満充電状態での長期間の保存は、化学反応を加速させ、劣化を早める原因となります。

過充電・過放電

バッテリーの過充電や過放電は、セルの内部構造を損傷し、寿命を短くする大きな要因です。
過充電状態では、電解質が分解し、ガスの発生や内部短絡を引き起こす可能性があります。
過放電状態では、リチウム金属が析出し、セパレーターを貫通する危険性があります。

内部抵抗の増加

内部抵抗の増加もバッテリーの劣化を示します。
充放電により電極間で副生成物が生成され、イオンの流れを阻害することによって内部抵抗が増加します。
内部抵抗が増加すると、放電時の電圧降下が大きくなり、使える容量が減少します。

リチウムイオン二次電池の寿命予測と性能評価

リチウムイオン二次電池の寿命予測と性能評価は、バッテリーの長期使用計画や適切な保守計画を立てる際に重要です。
以下に、代表的な手法と技術を紹介します。

等価回路モデル

等価回路モデルを用いた寿命予測は、バッテリーの電気特性を数学的にモデル化する方法です。
このモデルでは、電極の抵抗や容量などを回路素子として表現し、電流と電圧の関係からバッテリーの状態を予測します。
精度の高い等価回路モデルを構築することで、信頼性の高い寿命予測が可能です。

データ駆動型モデル

データ駆動型モデルは、膨大な蓄積データをもとに機械学習アルゴリズムを用いてバッテリーの寿命を予測する方法です。
センサーデータや使用履歴データを解析し、バッテリーの劣化傾向を学習させ、寿命予測に役立てます。
これにより、リアルタイムの予測精度が向上します。

インパルス法

インパルス法は、リチウムイオン二次電池のインピーダンス特性を測定し、バッテリーの劣化状態を評価する方法です。
インピーダンスとは、バッテリー内部の電気的抵抗のことで、周波数に依存する特性を持ちます。
インパルス法では小さなパルス信号をバッテリーに与え、その応答を解析することで内部抵抗や容量変化を評価します。

サイクリング試験

サイクリング試験は、実際に充放電を繰り返し行い、バッテリーの劣化速度や寿命を評価する試験です。
長期間にわたる試験データをもとに、実際の劣化プロセスを観察し、バッテリーの寿命を見積もります。
この試験は現実的かつ実践的な評価方法ですが、時間とコストがかかる点に注意が必要です。

最新技術と研究動向

リチウムイオン二次電池の技術は日々進化しており、劣化対策や性能向上に関する多くの研究が行われています。
ここでは、最新の技術動向について紹介します。

高エネルギー密度材料の開発

現在、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度をさらに向上させるため、高エネルギー密度材料の開発が進んでいます。
例えば、シリコン系負極材料や高電圧正極材料が注目されています。
これにより、バッテリーの小型化や電気自動車の航続距離の延伸が期待されています。

固体電解質バッテリー

固体電解質バッテリーは、液体電解質を固体に置き換えることで安全性を大幅に向上させる技術です。
固体電解質は漏れや燃えたりするリスクが少なく、高温でも安定した性能を発揮します。
将来的には、リチウムイオン二次電池の新たなスタンダードとなる可能性があります。

AIとIoT技術の活用

AIとIoT技術を活用したバッテリー管理システム(BMS)の開発が進んでいます。
これにより、リアルタイムでバッテリーの状態を監視し、最適な充電・放電スケジュールを立てることが可能となります。
また、故障予測や早期警告機能を備えることで、バッテリーの寿命を延ばすとともに、安全性を向上させます。

リサイクル技術の進展

リチウムイオン二次電池の普及が進む中、使用済みバッテリーのリサイクル技術も重要です。
リサイクル技術の進展により、リチウムやコバルトなどの希少資源を効率的に回収し、再利用することが可能となります。
これにより、資源の枯渇を防ぎ、環境負荷の低減に寄与します。

 

リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度や長寿命、軽量性といった優れた特性を備えており、現代のエネルギー保存技術の中核を成しています。
しかし、劣化メカニズムを理解し、適切な保守を行うことがバッテリーの性能と寿命を最大限に引き出すために重要です。
また、最新の技術動向を常に追い続け、劣化対策や性能向上のための新しい手法を取り入れることも欠かせません。
リチウムイオン二次電池の未来は非常に明るく、多くの可能性が開かれています。
製造業においても、この技術の進化に注目し、活用していくことが求められます。

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