食品包装用バリア紙のアルミ箔レス化と酸素透過率評価
食品包装用バリア紙のアルミ箔レス化とは
近年、環境問題への意識の高まりと共に、食品包装資材にもサステナビリティが強く求められるようになっています。
その一環として注目されているのが「食品包装用バリア紙のアルミ箔レス化」です。
従来、食品包装では酸素や水蒸気、光などから内容物を保護するために、紙・プラスチック・アルミ箔を多層に積層させた包装材料が一般的に使われてきました。
特にアルミ箔は、バリア性(遮断性能)に優れ、酸素や湿気、光をほぼ完全に遮断する特性を持っているため、長期保存が必要な食品包装に欠かせない存在とされてきました。
しかし、アルミ箔は製造時の環境負荷が大きく、リサイクルも難しい材料です。
そのため、近年ではアルミ箔を使用せず、代替技術によってバリア性を実現する「アルミ箔レス化」の開発が急速に進められています。
この動きは、循環型社会への転換や企業イメージ向上、省資源・省エネルギーの実現など、さまざまな観点から大変重要視されています。
なぜバリア紙にアルミ箔が使われていたのか
アルミ箔には、光・水・酸素など多くの外的要因に対する優れたバリア性という特長があります。
食品の酸化劣化、乾燥、香りの損失、変質などを防ぐためには、こうしたバリア性能が不可欠です。
例えばレトルト食品、粉ミルク、コーヒー豆、スナック菓子などは、わずかな空気や水分にも品質が影響されるため、アルミ箔入り包装が標準的に利用されてきました。
また、アルミは薄く延ばしても完全に隙間ができないため、「実質的にゼロバリア」とも言われ、他の素材にはない唯一無二の性能を持っています。
しかし、資源としてのアルミニウムは採掘から製造・廃棄までのライフサイクルで高い環境負荷があります。
特に、多層複合のためリサイクルしづらく、分別も容易ではありません。
この課題が大きなトピックとなり、食品包装のバリア紙においてもアルミフリー素材への転換が求められるようになったのです。
アルミ箔レス化の主要技術と開発動向
アルミ箔の代替となるバリア材料の開発には大きく分けて3つのアプローチがあります。
1. 高バリアコート(樹脂・無機薄膜)技術
ポリエチレンやEVOH(エチレンビニルアルコール)、ポリエステルなどの高機能樹脂コーティングを紙に積層する技術です。
近年では、EVOHやPVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PVOH(ポリビニルアルコール)など酸素遮断性に優れた樹脂材料が用いられます。
また、シリカ(SiOx)や酸化アルミ(Al2O3)など、無機成分をナノメートル単位で薄膜コーティングする手法も急速に発展しています。
これらは透明性が高く、見た目の美しさも損なわずにバリア性を付与できます。
しかし、アルミ箔に比べると完全遮断というレベルには届かず、一定の酸素透過率(OTR)が残る場合があるため、用途に応じた最適設計が必要です。
2. ラミネート多層構造技術
異なるバリア性樹脂フィルムや紙を複数積層し、各材料の特長を活かす多層ラミネートが挙げられます。
たとえば、紙・バリア樹脂・ヒートシール層の三層構造や、透明バリアフィルムを組み合わせた設計があります。
この応用範囲は広く、スナック菓子や菓子パンの包装など身近な製品で実用化が進んでいます。
しかし、積層材料が複雑化するほどリサイクル性は下がるため、「モノマテリアル(単一素材)化」とバリア性能の両立が今後の課題です。
3. 紙本来のバリア強化技術
化学処理や表面処理によって紙繊維自体の密度・結合を高め、水分や酸素を通しにくい紙を開発するアプローチも進んでいます。
ナノファイバーセルロースを利用したバリア紙や、防湿・耐油加工を付与した特殊原紙などがこれに該当します。
これらは資源循環や焼却時の環境負荷低減の点で大きなメリットを持ちますが、現状ではアルミ箔やバリア樹脂コートに比べてバリア性能がやや劣る場合もあります。
酸素透過率(OTR)評価の重要性
バリア紙のアルミ箔レス化を進める上で最大のポイントは「どれだけ外部から酸素や水分を通しにくくできるか」を客観的に評価することです。
この性能指標の一つが「酸素透過率(OTR: Oxygen Transmission Rate)」です。
OTRは、単位面積あたり1日で何ccの酸素が通過するか(例えばcc/m²・day)で測定されます。
OTR値が小さいほどバリア性が高いとされます。
一般食品の品質劣化を防ぐためにはOTRが1未満、長期保存用の用途では0.1以下、医薬品用では0.01以下が目安というケースもあります。
従来のアルミ箔積層材は「OTR=ゼロ(実質)」ですが、樹脂コートや無機薄膜、紙バリアでは数値レベルでバリア性が評価されるため、この数値をカタログやスペックでしっかり確認することが重要です。
OTR測定方法
一般的なOTR測定はASTM D3985やISO15105などの国際標準規格に沿って行われます。
ガスバリア性があるフィルムまたは紙試料を2室の間にセットし、一方から酸素ガスを一定濃度供給します。
もう一方に透過した酸素量をガスクロマトグラフやセンサーで微量分析することで、1㎡あたり1日で漏れてきた酸素量を測定します。
最近では評価装置自体の高精度化が進み、10のマイナス3乗(cc/m²・day)といった超高バリア水準も測定できるようになっています。
アルミ箔レス包装のメリットと今後の可能性
アルミ箔レス化による恩恵は多岐にわたります。
1. 環境負荷の低減
アルミ箔の製造には多くのエネルギーと化石燃料が必要です。
また、紙や樹脂は再利用や燃焼時のCO₂排出低減がしやすく、ライフサイクル全体で二酸化炭素排出量を削減できます。
2. リサイクル性の向上
紙単独、または樹脂モノマテリアルにすることで、分別・回収・再生利用がしやすくなります。
これにより、自治体や自治体ごとの分別基準にも適合しやすく、市民の協力も得やすくなります。
3. サステナブルなブランド価値の訴求
脱アルミ・脱プラは、企業の社会的責任(CSR)やSDGs達成への姿勢として、生活者にも価値が直感的に伝わるテーマです。
パッケージの「見た目」だけでなく、素材や機能そのものが重要なブランドイメージとなっています。
食品ごとに最適なバリアパッケージ設計とは
一口に「バリア紙」と言っても、コーヒー、紅茶、パン、菓子、レトルト食品など用途によって必要なバリア性能や保存期間は大きく異なります。
例えば、クリスピーなスナック菓子や乾パンなどでは、主に水分バリア(WVTR: 水蒸気透過率)も重要視されます。
また、香りやガスの封じ込めには特定の分子レベルでの透過性も要チェックです。
従って、アルミ箔レス包装に移行する場合は、ターゲット製品の保存条件や消費期限、求められるバリア項目(酸素・水・油・香り等)を明確化した上で、必要十分なOTR・WVTRスペックを選定することが求められます。
今後の課題と展望
現時点でアルミ箔完全レスでも高いバリア性が求められる分野では「アルミ箔と遜色ない性能」を商業的に実現することは容易ではありません。
一方、水や酸素、光にそれほどシビアでない食品では、すでにアルミレス・樹脂バリア紙化の大きな波が来ています。
将来的には、バリア材料自体の生分解化、モノマテリアル化、コストダウン、印刷適性や二次加工適性などのさまざまな技術革新が求められます。
また、持続可能な森林認証紙や、アップサイクル素材との連携も期待されています。
まとめ
食品包装におけるバリア紙のアルミ箔レス化は、環境負荷の低減、リサイクル性や資源循環の向上、そして持続可能社会への貢献としてますます重要なテーマとなっています。
酸素透過率(OTR)や水蒸気透過率(WVTR)など具体的な指標を踏まえ、用途ごとの最適設計を追求することが今後の市場競争力につながります。
今後も新しいバリア材料や加工技術が続々と登場し、「包む」技術が持続可能な食品流通に大きく寄与することが期待されます。
食品業界や包装資材メーカーにとって、アルミ箔レスの最適化は未来への大きな第一歩と言えるでしょう。