キャピラリーレオメータのバグリー補正とパワーロー指数推定

キャピラリーレオメータのバグリー補正とパワーロー指数推定

キャピラリーレオメータとは何か

キャピラリーレオメータは、主に高分子、粘性材料、樹脂などの流動特性を測定するために非常に広く利用されています。
特に押出法によるレオロジー測定において、その有効性は多くの材料開発や生産工程で証明されています。
キャピラリーレオメータは、細長いチューブ(キャピラリー)を通じて材料を押し出すことで、せん断応力とせん断速度の関係から流動曲線を取得します。
この流動特性の分析により、材料の加工適性や最適な成形条件の決定が行われています。

材料をキャピラリー中に連続的に押し出すことで圧力損失を計測し、流動挙動を定量的に把握できます。
しかし、測定結果から材料の真のレオロジー特性を引き出すためには、いくつかの補正が必要となります。
その代表的な補正法の一つが「バグリー補正」です。

バグリー補正の重要性とその概要

キャピラリーレオメータで測定される圧力損失には、単純なキャピラリーチューブの摩擦抵抗だけでなく、ダイ入射部におけるエントランス圧力損失も含まれます。
このダイエントランスで生じる損失を補正しなければ、せん断応力の過大評価につながります。
この問題を解決するために用いられるのが「バグリー補正(Bagley correction)」です。

バグリー補正では、異なる長さのキャピラリーダイを用いて各場合の圧力損失を測定し、純粋なせん断流動による圧力損失とエントランス損失を分離します。
実際には、同じ入口径で異なる長さのダイを用い、それぞれの押出圧力をプロットします。
これを外挿することで、理論的な「ダイ長さゼロ」の時の圧力、すなわちエントランス損失を算出します。

バグリー補正は、測定精度の向上だけでなく、その後のパワーローモデルなど流動特性モデルの当てはめにも不可欠です。
正確な応力-速度関係を得られなければ、材料評価や最適化の根拠が崩れてしまうためです。

バグリー補正の具体的な手順

バグリー補正を適用するためには、以下の手順に従います。

キャピラリーレオメータの準備

まず、同じ入口径(例:1mm、2mmなど)で、異なる長さ(例:10mm、20mm、30mmなど)のキャピラリーダイを複数用意します。
測定する材料の温度条件や予熱時間なども事前に統一しておきます。

圧力損失データの取得

各キャピラリーダイについて、一定の流速(またはボリュームレート)で材料を押し出します。
得られた圧力差(エクストルーダ内部–吐出口)のデータを記録します。
必要に応じて、異なる流速でも同様の測定を繰り返します。

バグリー補正グラフの作成

あるひとつの流速ごとに、キャピラリーダイの長さを横軸、圧力損失を縦軸としてプロットします。
得られた点を直線で回帰(フィッティング)します。
この回帰線をダイ長さゼロの位置まで外挿します。
切片として得られる値が、エントランス圧力損失となります。

補正後のせん断応力の算出

各ダイ長さで測定した圧力損失から、エントランス圧力損失(切片値)を差し引きます。
これにより、純粋なキャピラリー内で発生した圧力損失のみが得られます。
この補正済み圧力データをもとに、正しいせん断応力-せん断速度関係を作図します。

パワーローモデルとは何か

流動特性を簡潔に表現するため、パワーローモデル(オストワルド・ド・ヴァイル方程式)を用いることが一般的です。
このモデルは、せん断応力(τ)とせん断速度(γ̇)の関係を以下の式で表します。

τ = K × γ̇ⁿ

ここで、
K:一貫性指数(Consistency Index、Pa・sⁿ)
n:パワーロー指数(Power Law Index、無次元)

材料がニュートン流体の場合、n=1となり、粘度は一定です。
多くの高分子や溶融樹脂はn<1(剪断薄化性)を示します。

パワーロー指数(n値)の推定方法

パワーローモデルを材料データに当てはめることで、その流動挙動を数値的に説明できます。
n値の推定は以下の手順で行います。

バグリー補正済みデータの用意

まず先述のバグリー補正を適用した「せん断応力-せん断速度」データを用意します。
このデータは、エントランス損失除去済みである必要があります。

対数変換による直線化

パワーローモデルの両辺を対数変換すると、log(τ) = log(K) + n × log(γ̇) の一次方程式になります。
せん断速度γ̇、せん断応力τそれぞれを対数(logもしくはln)スケールでプロットします。

回帰直線からn値を求める

対数グラフ上にプロットした複数点に線形回帰を行い、傾き(n)がパワーロー指数となります。
切片log(K)から、一貫性指数Kも算出できます。

このn値が0.8~0.3程度の範囲にある場合、強い剪断薄化性(流動性の増大)が認められます。
n値が1に近い場合は、流動特性がニュートン流体に近いことを示します。

キャピラリーレオメータ測定時の注意点とバグリー補正の限界

バグリー補正やパワーロー指数の算定は、正確な材料評価のために不可欠ですが、以下の課題や限界にも注意が必要です。

再現性の確保

測定時の温度管理、測定速度、ダイ加工精度、材料の前処理など、試験条件に微妙な違いがあると再現性が低下します。
ダイ表面の汚れや摩耗、エッジ損傷も測定に大きく影響します。

エントランス損失の非理想性

エントランス圧力損失は、単純な直線外挿で全て補正できない場合があります。
特に高分子のような弾性変形が大きい材料の場合、ダイ入口部で特殊な流動が発生し、バグリー補正の前提が崩れることもあります。

温度依存性の考慮

樹脂やポリマー材料の場合、温度による粘度変化が大きいため、測定温度の安定性と制御精度が極めて重要です。
温度が0.5℃異なるだけでも、せん断応力や粘度に大きな変動が現れることがあります。

測定レンジとモデル適合性

パワーローモデルはあくまで簡易的な近似式です。
広範なせん断速度レンジで厳密に一致するわけではなく、高速域・低速域ではワイセンベルク―ラビリーモデルなど、他の数式モデルも併せて検討します。

まとめ:キャピラリーレオメータでの精度向上の鍵

キャピラリーレオメータは、高分子材料や樹脂、粘性流体の加工作業における流動性評価に不可欠な装置です。
正しい流動特性データを得るには、バグリー補正やパワーロー指数推定が不可欠です。
これらの手順を正しく理解し、試験条件管理やデータ評価の流れを厳格に守ることで、より信頼性の高い材料選定や製造プロセス最適化が実現します。

キャピラリーレオメータを活用した材料研究・品質管理の精度と再現性を高めるためには、安全管理・装置チューニング・計測プロトコルの標準化が欠かせません。
それらのポイントを押さえ、バグリー補正やパワーローモデル活用のノウハウを積み重ねることで、今後の高付加価値材料開発や生産工程でのイノベーションに大きく貢献できるでしょう。

You cannot copy content of this page