再生パルプ漂白工程での過酸化水素消費量と白色度効率

再生パルプ漂白工程における過酸化水素消費量と白色度効率の基礎

再生パルプ漂白工程は、リサイクルされた古紙パルプから色素や不純物を除去し、最終製品の白色度を向上させる重要なプロセスです。
この工程で広く使用されている漂白剤が過酸化水素(H₂O₂)です。
過酸化水素は環境負荷が低く、パルプの品質維持にも優れているため、現在の製紙業界では不可欠な薬品となっています。

過酸化水素消費量と白色度効率は、再生パルプ漂白工程の経済性や品質、さらには環境への影響を測る重要な指標です。
この記事では、再生パルプ漂白工程の概要から、過酸化水素の消費量と白色度効率の関係、効率化するための方法、さらには現場での最適化事例までを詳しく解説します。

再生パルプ漂白工程の概要と重要性

再生パルプ漂白工程は、古紙から回収されたパルプの着色成分やリグニン、インクなどの除去を目的としています。
特に新聞紙や雑誌などの印刷物から回収されたパルプには多量のインク分や染料が含まれており、これらの残留物が最終製品の白色度低下の原因となります。

このため、適切な漂白工程を経ることが、高い白色度の再生紙を安定して生産するための必須条件になります。
また、再生パルプはバージンパルプと比較すると強度や白色度がやや劣る傾向にあるため、漂白工程の最適化はこうした差を埋め、高品位の製品を作り続けるうえで重要です。

漂白剤としての過酸化水素の特徴

再生パルプ漂白工程で使用される漂白剤には、過酸化水素のほか、次亜塩素酸ナトリウムなどが候補となります。
しかし、次亜塩素酸系は環境汚染の原因となるクロロ有機化合物を生成することから、世界的な規制強化が進んでいます。

そのため、分解して水と酸素に戻るため環境負荷が低い過酸化水素が主流です。
過酸化水素はアルカリ性環境下で強い酸化作用を示し、有機着色物や残留リグニンなどを高効率で分解・脱色します。

過酸化水素消費量の決定要因

漂白工程における過酸化水素の消費量は、そのままコストや排出物質の量、白色度効率にも直結するため、装置の運転や薬品投入量の最適化が求められます。

原料パルプの品質

回収古紙の原料構成やインク残留量によって、過酸化水素の必要量が大きく異なります。
特にインク残量の多い古紙や、リグニン分の多いパルプが多く混在する場合は、追加の過酸化水素が必要となります。

アルカリ条件とpH制御

過酸化水素漂白は通常、アルカリ条件(pH10〜12)で進行します。
pHが低すぎる場合、過酸化水素の分解が促進され、十分な漂白効果を発揮できません。
逆に高すぎる場合も薬剤分解ロスが大きくなり、消費量が増加します。
適切なpH管理は過酸化水素消費量削減の鍵となります。

温度・滞留時間

漂白温度や処理時間も消費量に影響します。
一般的に温度を40〜60℃程度に設定し、滞留時間を30分~1時間程度確保するのが標準的です。
温度が高すぎると過酸化水素分解が促進され、消費効率が低下するリスクもあります。

白色度効率の定義と評価方法

白色度効率とは、投入された過酸化水素1kgあたり、どの程度パルプの白色度が向上したかを表す指標です。
通常は、「白色度上昇度(%ISO)」を「過酸化水素消費量(kg/乾燥トンパルプ)」で割ることで算出します。

白色度効率が高いほど、薬品使用量あたりの効果が大きく、経済的かつ環境的に優れた運転をしていることになります。
逆に効率が低い場合は、薬剤ロスが大きい、もしくは工程条件が最適化されていない可能性が考えられます。

白色度効率向上のための運転管理と技術革新

再生パルプの高白色度化と過酸化水素効率化には、現場におけるきめ細かな運転管理と最新技術の導入が不可欠です。

前処理の徹底

インク除去工程(ディインキング)の効率化により、漂白段での薬品負荷軽減が可能です。
例えば、フローテーション効果を高めるために界面活性剤を適切に選択したり、水温や撹拌条件を最適化することで、過酸化水素消費量を30%以上カットできた事例もあります。

添加剤・触媒の活用

過酸化水素漂白には適切な金属キレート剤(例:エチレンジアミン四酢酸=EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸=DTPA)を併用することで、鉄イオン等のカタラーゼ反応によるH₂O₂分解を抑制できます。

また、触媒(酵素・金属イオン制御剤)によって過酸化水素の漂白反応に選択性をもたせるアプローチも進められています。

オンライン計測と自動制御

リアルタイムでパルプ白色度や残留過酸化水素濃度を計測し、自動的に薬品投入量やpH、温度を調整するシステムの導入が国内外で加速しています。
こうした自動制御は、過酸化水素消費量を5〜15%削減し、かつ均一な白色度を保持することに寄与します。

過酸化水素消費量・白色度効率とコスト・環境負荷

過酸化水素はバージンパルプよりも再生パルプ漂白で消費量が高くなりがちですが、そのコスト負担や排水処理負荷も無視できません。
投入過剰な場合、経済的損失のみならず、未分解の過酸化水素が排水に残ることで下流処理コスト増、装置寿命短縮、さらに希薄ながら環境リスクも伴います。

一方で白色度効率を高めることにより、同品質の製品をより低いコストと低環境負荷で実現させることができます。
異なる再生パルプ原料、装置設計、運転技術の三位一体で改善を図ることが重要です。

再生パルプ漂白工程における最新トレンドと今後

近年では、より低薬剤で高白色度を狙う目的から新たな技術開発が進展しています。

酵素漂白との組み合わせ

過酸化水素前処理、もしくは後段にセルラーゼやリパーゼといった酵素を適用することで、非セルロース系の着色物質やインク残差を低減し、主工程の過酸化水素削減を実現する動きが広がっています。

分散式漂白システム

従来のバッチ(槽)処理から、連続式で薬品を分散注入・撹拌する分散式漂白工程への移行が進みつつあります。
この方法では薬剤がムラなく全体に行き渡り、全体としての漂白効率が高まります。

AI活用によるスマート制御

センサーから得られる大容量データとAIを活用し、原料や運転状態に応じて最適な薬剤投入プランを自律的に提言するシステムも登場しています。
これにより、再生パルプ特有のばらつきや工程中の異常に対応し、極めて高い効率で過酸化水素消費量を管理することが可能です。

まとめ:最適な過酸化水素運用で高付加価値化へ

再生パルプ漂白工程における過酸化水素消費量と白色度効率は、製品の見栄えだけでなくコスト・環境負荷に直結する極めて重要な指標です。
現場でのきめ細かなパルプ前処理、薬品管理、最新の制御技術知見の適用により、過酸化水素消費量を抑えつつ高い白色度効率を実現できるようになっています。

また、漂白工程の最適化は、再生パルプ紙・板紙の市場競争力を高め、サステナブルな社会にも貢献します。
今後も新たな技術や運転手法の導入・発展により、より効率の高い再生パルプ漂白工程を目指すことが、製紙現場の恒久的なテーマとなります。

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