製パン業界向け紙トレーの耐油性強化事例と課題
製パン業界における紙トレー活用の現状
製パン業界において紙トレーは、パンの製造や陳列・販売など多くのシーンで利用されています。
紙トレーは、環境問題への配慮からプラスチック製品の代替品として注目されており、焼き立てパンや惣菜パンの盛り付け、省人化を支える資材として幅広く普及しています。
紙素材はリサイクル性が高いことに加え、販促デザインがしやすいという利点もあります。
その一方で、パンや油分の多い製品を直接のせるためには、高い耐油性が求められるという課題も浮き彫りになっています。
紙トレーの耐油性強化が必要とされる理由
油脂分が多いパン商品の増加
近年の製パン業界では、クロワッサンやデニッシュ、カレーパンなど油脂分が多く含まれる商品が人気を集めています。
これらの商品を盛り付ける際、紙トレーに直接油がしみ込んでしまうと、パン生地の食感や風味が損なわれたり、売り場での視覚的な印象が悪化するリスクがあります。
食用油やチーズ、クリームを使ったパンの場合、従来の紙トレーでは油しみが表面や裏面に広がってしまい、購買意欲の低下や衛生面での不安にも繋がる恐れがありました。
環境負荷低減とプラスチック規制対応
脱プラスチックやSDGsへの取り組みが業界全体に求められる中、プラスチックトレーに頼らない資材設計が加速しています。
そのため、紙トレーにも従来のプラスチック製トレー並の機能性が求められ、特に耐油性の強化は最重要ポイントとなっています。
耐油性強化紙トレーの主流な技術
樹脂コーティング・ラミネート処理
現在、もっとも普及している耐油性強化方法は、紙トレーの内面に樹脂でコーティングやラミネートを施す方法です。
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの樹脂薄膜で紙面を覆うことで、油分や水分の浸透を防ぎます。
コーティング量や塗布方法の微調整によって、厚みを抑えつつ高いバリア性を発揮できます。
ラミネート紙を使ったトレーは、レンジ加熱やオーブン加熱にも対応できる製品設計が進んでいます。
ワックス加工・グリースプルーフ紙
ワックス加工紙や薬剤で表面を処理するグリースプルーフ紙も、広く使われている耐油性強化素材です。
ワックスが紙繊維同士の隙間を埋めることで、油分が浸透しにくくなり、表面に油じみやしっとり感が現れづらくなります。
グリースプルーフ紙はパルプに特殊な薬剤を混ぜることで紙全体が油をはじき、非プラスチックながらも優れた耐油性が得られるのが特徴です。
生分解性・バイオ素材コーティング
近年、サステナブルな製品へのニーズからグリーンPEやPLAなど植物由来の生分解性樹脂を使った耐油性紙トレーも登場しています。
また、コーンスターチやセルロース系素材を原料としたバリアコーティングが試みられています。
石油系素材からの脱却と同時に、使用後は適切な方法で土に還る環境調和型トレーとして消費者や事業者に関心が高まっています。
製パン業界向け紙トレーの耐油性強化事例
大手ベーカリーチェーンの採用ケース
ある全国展開のベーカリーチェーンでは、人気商品のデニッシュ類の見た目や品質を維持するために、グリースプルーフ紙を使用したオリジナル紙トレーを導入しています。
この紙トレーは、高吸収性と防油性を両立し、ショーケース内での長時間陳列でも油じみやトレーマット表面の色抜けが見られません。
さらに、トレー自体のカラーやロゴをフルカラープリント可能にすることで、ブランド訴求にも成功しています。
地域パン屋のテスト導入事例
個人経営の地域パン屋では、焼き立てカレーパンやクリームパン用の高耐油性トレーの試用が進みました。
ワックスペーパーに近いコーティングを持つ紙トレーを利用したところ、油じみの出現までに従来比で約2〜3時間長持ちし、テイクアウト需要の拡大に対応。
また、紙素材のトレーに切り替えたことでゴミ分別の手間が減り、廃棄コスト削減や顧客からの評価向上に繋がったとの報告があります。
製造OEM向けのスペック提案事例
小売大手向けにパンのOEM生産を行う製パン工場では、冷凍・輸送・店舗陳列を視野に入れた耐油性・耐水性紙トレーのスペック検証が行われています。
複合素材(コーティング紙+厚紙)の複層構造や、成形時の機械適性など細部に至るまで仕様が調整され、高度な品質管理下で採用が進んでいます。
紙トレーの耐油性強化にともなう課題
環境対応と回収リサイクル性の両立
樹脂コーティングやラミネートを施した紙トレーは、耐油性が高い一方で一般ごみとして処分されるケースが多いです。
自治体や廃棄物処理工場によっては、ラミネート加工がごみ分別・焼却工程で問題視される場合もあります。
また、バイオ樹脂や生分解性コーティング製品であっても、インクや多層構造がリサイクル性の阻害要因になることが指摘されています。
コストの増加と価格競争
特殊なコーティング紙や環境配慮型紙トレーは、多くの場合コストが高くなります。
小規模ベーカリーにとっては薄利多売の中で耐油強化紙トレーの導入は悩ましいところです。
一方で、大量生産が必要な工場パンでも、ロット数や仕様次第ではコスト問題に直面しています。
そのため、用途や商品の油分量、必要とされる耐油時間などとコストを天秤にかけた最適化設計が求められています。
パンの品質への影響と供給側の課題
一部の耐油性紙トレーは、コーティング破れや加熱時の溶け黙、防油剤の臭い移りなど課題も残されています。
また、表面処理剤の安全性・添加物規制など法的要件も厳しくなってきています。
新材料の安定供給や国内外基準への対応も重要な課題です。
今後の展望と解決策
バリア素材の多様化、技術進化の期待
非プラスチック・リサイクル容易なバリア紙素材の研究開発が加速しており、今後さらなる耐油性強化と分解性・安全性・印刷性の両立が期待されています。
繊維をナノレベルで多層化することで物理的に油分子の侵入をブロックする新発想素材や、天然由来コーティング剤など新技術が登場しています。
各社ごとのオーダーメイド対応の拡大
製パン各社ごとにパン種・油分・陳列時間といった利用環境が多様なため、紙トレー専門メーカーによる個別対応力がポイントです。
必要機能だけを満たす最適コスト・最小資源利用のスペック提案や、パーソナルブランドを活かしたデザイン適合型製品の開発が進むでしょう。
広がる紙トレーリサイクルと回収スキーム
“脱使い捨て”化と同時に、使用済トレーの資源循環をどう実現するか―が次のテーマです。
自治体や業界団体が連携し、古紙リサイクル適合仕様の紙トレー普及や、店舗・物流現場での分別回収スキーム構築が進められています。
今後は、紙トレーとしての機能強化と、バリューチェーン全体のサステナビリティを高める工夫が求められるでしょう。
まとめ:製パン業界向け紙トレー耐油性強化の今とこれから
製パン業界で急速に拡大する紙トレー市場では、耐油性強化が品質維持・コスト管理・環境対応すべての面で欠かせないテーマとなっています。
樹脂コーティングやグリースプルーフ紙、さらには生分解性バリアなど多様な技術革新が生まれ、それぞれの業態・商品特性に最適な資材選定が要となっています。
同時に、環境配慮・資源循環・コスト抑制などサステナビリティの観点がますます求められています。
今後も、製パン業界と紙資材業界の連携、技術開発の深化によって、より高機能で持続可能な紙トレーの普及が進んでいくでしょう。