バイオ由来ポリマーの成形技術と従来プラスチックとの性能比較

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バイオ由来ポリマーとは何か

バイオ由来ポリマーは再生可能な植物資源や微生物資源を原料に合成された高分子材料です。
従来プラスチックが石油を原料とするのに対し、バイオマスを利用することで環境負荷を低減できる点が注目されています。
現在の市場ではポリ乳酸PLA、バイオPE、バイオPET、ポリヒドロキシアルカノエートPHAなどが主要なバイオポリマーとして流通しています。

定義と種類

国際標準化機構ISOは100%バイオマス由来のものをバイオベースポリマーと定義しています。
一方、石油由来モノマーを一部含みつつもカーボンニュートラルを実現するハイブリッド型も存在します。
生分解性を併せ持つかどうかでさらに分類され、生分解性バイオポリマーと非生分解性バイオポリマーに分けられます。

主な成形技術

成形技術は従来プラスチックと大部分が共通ですが、バイオ由来ポリマー固有の熱物性に合わせた最適化が求められます。

射出成形

射出成形は複雑形状を高速で量産できるため最も利用されています。
PLAを例に取ると、乾燥温度は60〜80℃、シリンダー温度は180〜210℃で設定します。
熱安定剤や結晶化促進剤の添加によりサイクルタイムを短縮し、耐熱性を向上させることが可能です。

押出成形

フィルムやシート製造では押出成形が適します。
PLAやバイオPETは溶融粘度が高いため、スクリューL/Dの最適化と背圧調整が重要です。
冷却工程でテンションを適切に管理するとフィルムの平滑性と結晶性が向上します。

ブロー成形

ボトル容器にはブロー成形が多用されます。
バイオPETは従来PETと同等の透明性とガスバリア性を示し、既存のプリフォーム金型をほぼ流用できます。
成形温度の許容範囲が狭いため、予熱ゾーンでの赤外線ヒーター出力を細かく制御することが歩留まり向上に直結します。

3Dプリンティング

FDM方式ではPLAフィラメントが主力です。
低反り性と無臭性のメリットによりプロトタイピングから最終製品まで用途が拡大しています。
結晶化不足による層間強度低下を抑えるため、ノズル温度200℃前後、ビルドプレート温度60℃程度が推奨されます。

従来プラスチックとの性能比較

性能比較では機械的特性、熱的特性、バリア性、加工性の四つの観点が重要です。

機械的特性

PLAの引張強度は60〜70MPaとポリスチレンPSに匹敵しますが、伸びが5%前後と脆性が課題です。
衝撃改良グレードや繊維強化PLAではシャルピー衝撃値が3倍以上向上します。
バイオPEは従来PEと同等の靭性を持ち、包装用途で急速に置換が進んでいます。

熱的特性

PLAのガラス転移点は60℃前後であり、耐熱食器や車載部品には不十分です。
結晶化度を高めたヒートレジスタントPLAではHDTが120℃まで向上し、電子機器筐体に採用例があります。
バイオPETは従来PETと同じTg約75℃、融点250℃であり、充填飲料ラインの熱殺菌工程にも耐えます。

バリア性と耐薬品性

PLAの酸素透過度は従来PSの1/10と優秀ですが、水蒸気透過が高い点が欠点です。
多層フィルム化やシランコーティングで補完すれば食品包装の保存性を改善できます。
バイオPEは耐酸・耐アルカリ性に優れ、洗剤容器で実績があります。

加工性

バイオポリマーは熱安定性が低いため、長時間の溶融滞留が黄変や分子量低下を招きます。
シリンダー内残留時間を最短化し、必要に応じて真空ベント付き押出機を使うと品質が安定します。

環境影響とライフサイクル評価

環境指標としてカーボンフットプリントとエンドオブライフでの分解性が主要な評価軸です。

カーボンフットプリント

国際的なLCAデータベースによると、PLA樹脂1kg当たりのCO₂排出量は約1.4kgで、従来PETの2.7kgに比べて約50%削減できます。
ただし原料トウモロコシの栽培方法や再生可能エネルギーの使用比率によって数値は変動します。

生分解性とリサイクル

PLAやPHAは工業的コンポスト条件下で半年以内に水とCO₂へ分解します。
生分解性が不要なラベルやキャップにはバイオPETを組み合わせるなど、ハイブリッド設計がリサイクル効率を高めます。
機械的リサイクルでは熱劣化を抑える添加剤が開発され、再生材の強度低下を20%以内に抑制できます。

コスト分析

2023年時点でPLAのスポット価格は約2.5〜3.0米ドル/kgとABSの約2倍です。
しかし石油価格の高騰と炭素税導入を背景に価格差は縮小傾向にあります。
大量生産によるスケールメリットと副生成物の高付加価値化が進めば、2030年にはコストパリティが達成されるとの試算があります。

今後の課題と展望

第一の課題は耐熱性と衝撃強度の両立です。
繊維強化やブレンド技術により自動車外装や家電筐体への応用が期待されます。
第二に、食品と競合しない非可食バイオマスの利用が求められます。
廃棄セルロースや藻類原料を用いたポリマー開発が進行中です。
第三に、インフラ整備です。
生分解性樹脂専用のコンポスト施設やバイオポリマー再生プラントが地域単位で必要になります。
政策支援と業界連携が拡大すれば市場は年間20%以上の成長が見込めます。

まとめ

バイオ由来ポリマーは再生可能資源を活用し、カーボンフットプリントを大幅に削減できる素材です。
射出成形や押出成形など従来技術をベースに最適条件を設定することで、製品品質と生産性を確保できます。
性能面ではPLAやバイオPETが従来プラスチックに近づきつつあり、一部用途では既に置換が進行しています。
コストやインフラ整備の課題は残るものの、環境規制の強化と技術革新によりバイオ由来ポリマーの採用領域は拡大すると予測されます。
今後は耐熱性向上、非可食バイオマス利用、リサイクルネットワーク構築が鍵となり、総合的なエコシステムの中で持続可能なプラスチック代替材として定着していくでしょう。

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