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高分子電解質膜は固体高分子形燃料電池においてイオンの通り道となる中核部材です。
特にプロトンを効率よく輸送できるかどうかが、発電効率と耐久性の鍵を握ります。
従来はデュポン社のナフィオンに代表されるパーフルオロスルホン酸系膜が主流でしたが、材料コストや高温低湿度条件での性能劣化が課題として浮上しています。
そのため近年は新規ポリマーの設計、無機フィラーの複合化、官能基導入など多角的なアプローチでプロトン伝導性の向上が進められています。
プロトンは水分子間のグロットゥス機構によってホッピング移動します。
したがって膜中の含水率が高いほど、水素結合ネットワークが発達し伝導経路が確保されます。
しかし過剰な吸水は機械的強度の低下やガス透過の増大を招くため、吸水と寸法安定性のバランス設計が重要です。
スルホン酸、ホスホン酸、カーボン酸などの酸性基はプロトンを供与する起点となります。
官能基密度が高いほどプロトン濃度は向上しますが、ポリマー鎖間の電荷反発により結晶性が低下し、耐熱性が損なわれる恐れがあります。
官能基を側鎖の先端やブロック共重合体の疎水/親水ドメイン境界に配置することで、高密度化と相分離制御を両立できます。
疎水性バックボーンと親水性サイドチェーンのブロック共重合体では、自己組織化により数nmスケールの水路が形成されます。
連続したナノチャネルは高い伝導性を保ちつつ機械的骨格を維持するため、ポリマー設計上の強力な手法として採用例が増えています。
ポリアリールエーテルケトンやポリアリールスルホンをスルホン化することで、耐熱性とプロトン伝導性を兼備した膜が得られます。
芳香族主鎖は350℃級の熱安定性を示し、自動車用燃料電池の高温運転ニーズに応えられます。
ゼオライト、シリカ、グラフェン酸化物などの無機ナノフィラーを分散させると、吸水保持とメカニカル補強を同時に実現できます。
特にスルホン化シリカは膜内部で酸性サイトを提供し、含水率が低下した環境でもプロトンホッピングを支援します。
ポリベンジミダゾール(PBI)はリン酸をドープすると200℃近い高温下でも高い伝導性を維持します。
リン酸のプロトンは水に依存せず移動するため、加湿装置を簡略化できシステム全体の軽量化に寄与します。
室温で液体状態を保つイミダゾリウム系イオン液体を膜に含浸させると、非可燃で揮発性が低く、広温度域で導電経路を確保できます。
イオン液体は膜膨潤を抑えつつ、高温での蒸発損失が小さい点がメリットです。
自動車用スタックでは100℃前後の高温低湿度環境が想定されます。
東レのスルホン化ポリフェニレン系膜は80℃30%RHでも0.1 S/cm以上の伝導性を示し、車載試験でナフィオン比1.5倍の出力を達成しました。
薄膜化技術により膜厚を10µm以下とすることで内部抵抗を低減し、冷始動性能も向上しています。
家庭用燃料電池「エネファーム」では長寿命と高効率が要求されます。
三井化学の芳香族ブロック共重合膜は30,000時間の加速耐久試験で性能劣化率が従来膜の半分に抑えられました。
高い機械的強度により、加湿制御の幅が広がりシステム運用コストが低減しています。
軽量化と急速起動性を活かし、ドローンや災害用可搬電源に燃料電池が採用され始めています。
PBIリン酸系膜を用いたセルは20秒以内で定格電力に到達し、低湿度下でも連続飛行時間を20%延伸しました。
高プロトン伝導性を追求すると吸水膨潤や化学的劣化が進みやすくなります。
ラジカル分解を抑制するために、セリウム系スカベンジャーや自己修復機能を導入する研究が進行中です。
フッ素系樹脂の廃棄問題を受け、フッ素フリー高分子電解質膜への関心が高まっています。
バイオマス由来モノマーを用いたポリマーや、水溶媒プロセスによる製膜技術がCO2排出削減に寄与する見込みです。
革新的ポリマーの多くはラボスケールで留まっており、スケールアップ時のコストが障壁となっています。
連続押出ラミネートやロールツーロールコーティングの導入により、年間生産能力を上げつつ歩留まり向上が期待されます。
高分子電解質膜のプロトン伝導性向上は、燃料電池の性能と耐久性を大きく左右します。
含水率制御、酸性官能基配置、ナノ相分離などの材料設計に加え、無機フィラーやイオン液体の複合化により、多様な運転条件へ対応できる選択肢が広がっています。
自動車、定置、可搬型といった各応用分野で最適解は異なりますが、共通課題は耐久性とコストの両立です。
今後はフッ素フリー材料やリサイクル性向上の観点も取り込みながら、持続可能な水素社会の実現に向けて研究開発が加速すると期待されます。

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