投稿日:2025年6月28日

DRBFMを効果的に導入して品質トラブルを防ぐ実践ノウハウ

DRBFMとは何か? 製造業における位置付け

DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)は、日本発祥のFMEA(故障モード影響解析)をさらに発展させた品質管理手法です。
トヨタ自動車が生産現場で開発し、製品や工程に発生する問題をミスが起きる前に見つけ出すことを目的としています。

DRBFMの特徴は、「設計変更点にフォーカスする」「現場の知見を持つ人間が集まり議論を深める」「想定外を生む揺らぎを排除する」という点です。
従来の文書作成型FMEAでは網羅性を追求するがゆえに、実は本質を見逃してしまう側面がありました。
それに対しDRBFMは、変更点や新規点にピンポイントで狙いを定め、関係部門の現場担当者同士が直接対話します。

このため、「見逃されがちなリスク」や「過去に類似事例がない進化的トラブル」を炙り出す力に長けています。
今回の記事では、DRBFMが品質トラブル防止にどう役立つのか。
アナログ色がまだ色濃い現場業務でも浸透させる実践ノウハウを、私の現場経験を交えてご紹介します。

なぜ今、DRBFMが再注目されるのか

製造業を取り巻く環境変化の中で

近年、顧客要求の多様化、グローバル競争の激化、新素材やプロセス技術の革新など、製造業の生産現場にはかつてないスピードと複雑性が求められています。
以前ならリスクの芽を十分に検証できた手法でも、変化のスピードが増せば「想定外」の発生率は高まります。

特に、
– サプライチェーンの分断・グローバル化
– 省人化・自動化の進行
– サステナビリティや規制強化
といった大きな外圧が、各部門に日々の現場レベルで降りかかっています。

このような状況では、「設計・生産のちょっとした仕様変更」や「設備・素材の微細なアップデート」が、そのまま大きな問題やリコールに繋がるリスクがあるのです。

昭和的な”暗黙知”頼みが通用しない理由

昭和期の製造現場では、「ベテランの勘」や「現場の経験則」、いわゆる暗黙知が品質維持の砦でした。
文字で書き表せないノウハウ、付き人文化やOJTで伝承されるコツ。
こうした手法は一定の範囲で有効でしたが、世代交代や人材流動性の高まり、海外生産拠点化、高度自動化といった新たな波の前では再現性に乏しくなります。

属人化した品質管理は、いずれ必ず「伝承漏れ=品質事故」につながります。
DRBFMは、その暗黙知を可視化しつつ、現場知のキーマンを巻き込むことで、守りと攻めの両方で次世代型の品質保証を導入できるのです。

DRBFM導入にあたってのポイント

1. 「変化点を見つける力」こそが最大価値

DRBFMの核心は「変更点」に着目することです。
設計変更、新規部品の投入、異動品採用、ラインや治工具のマイナーチェンジ……。
これらすべてが潜在的なリスクの温床です。

多忙な現場業務では、変更管理の書類作成のみが目的化してしまいがちです。
しかし、現場目線で見ると「変わったところ」「怪しいところ」を早期発見し、関係者が集合して議論する場づくりこそが肝心です。

現場での経験を踏まえ、以下のような問いが有効です。
– 今回どの部分が変わるのか?
– 影響を受ける関連部品や機能は何か?
– 類似トラブルの履歴は?
– 過去の検討では見抜けなかった点はどこか?

これらを現場担当・設計担当・品質保証・サプライヤー担当が同席し、ホワイトボードや図面を使ってディスカッションします。
多様な視点や経験値が交差する「生きた知見」の抽出を重視してください。

2. 集中的な議論の場「グッドディスカッション」の作り方

DRBFMの真骨頂は、ディスカッションの質にあります。
会議資料やフォーマット作成に力を入れるのではなく、「その場で考える」「直感的な疑問も発言できる空気」を作ることが重要です。

– 役職・年齢問わず意見を言える雰囲気
– ベテラン・若手・女性など多様性を重視
– コミュニケーションの壁にならない言葉づかい
– 書き込んだホワイトボードや図面を残す仕組み

このような工夫で、現場のリアルな声も拾い上げ易くなり、真のリスクが可視化されます。
「こういう小さな変更がトラブルの引き金になったことがあった」という生目線のエピソードが共有できれば、もはや紙の手順書を上回る効果を発揮します。

3. デジタルツールとのベストミックス

DRBFMはアナログな手法と思われがちですが、デジタル化とも親和性があります。
リモート会議ツールやオンラインホワイトボード、モノづくり現場のチャットツールなどを活用すれば、海外拠点やサプライヤーとも円滑に意見交換が可能です。

また、議論の内容や設計変更理由をナレッジベースに蓄積すれば、次回類似案件時の強力な財産になります。
特に、海外製サプライヤーや若手担当者が増える昨今、言語や文化の壁を越えて「なぜ・どこが・どう危ないか」を履歴化することは、企業としての品質保証体制強化につながります。

DRBFMを現場に定着させる実践ステップ

ステップ1:小さく始めて成果を味わう

初回から全社横断型の大規模プロジェクトとしてDRBFMを導入するのは現実的ではありません。
製造現場の抵抗感を和らげるためには、まず「小さなラインや工程」「限られたパイロットチーム」から始め、得られた効果をフィードバックすることが有効です。

例えば、
– 新型治具導入時だけのDRBFMミーティング
– 部品切替時の一時的なレビュー会
– 社内試作品の品質レビュー
などに限定し、トラブル未然防止や工数削減、サプライヤーとの関係改善など「気づき」を強調しましょう。

ステップ2:現場リーダーを巻き込む

現実には「また余計な会議が増えた」「どうせ設計部門主導だろう」など、現場側の腰は重くなりがちです。
ここで効果的なのが、「現場リーダーや工場長自身が音頭を取る仕掛け」です。

私の経験上、定着を加速させるためには以下のようなアプローチが有効です。
– 失敗事例やヒヤリハット体験談からディスカッションを始める
– よく話すベテラン作業者に進行役を担ってもらう
– 工場見学や現場ツアーを通じて設計陣も「泥臭さ」を知る
– 会議後に「今日のベストリスク発見賞」など表彰制度をつくる

現場リーダーが自ら関与し、チームに「これは重要な仕事だ」と旗を振ることで、知識の属人化防止だけでなく、チーム一体感も生まれやすくなります。

ステップ3:サプライヤー・協力工場との連携強化

サプライヤー主導や海外委託生産が多い現代のものづくり体制では、発注元バイヤーとサプライヤーの間に「本音の議論」が成立しづらいことも多いです。
その壁を打破するためには、DRBFMを両者の”共通言語”とするのが有効です。

具体的には、
– 発注図面や仕様変更の際に必ずDRBFMレビュー会議を設定
– 仕様変更リスクについてサプライヤー側も同席の上、率直に疑問点や懸念点を出し合う
– 1社内、2顧客、3サプライヤーの目線を繰り返し合わせてリスク抽出

業者や工程ごとに「こういうやり方はリスクだね」と多様な知見を結集し、相互理解と信頼感が増せば、重大トラブル未然防止の連携体制となります。

DRBFMを実践した現場事例

自動車サプライチェーン:樹脂部品の設計変更

私が関与したケースでは、樹脂部品の微細な仕様変更(肉厚0.2mmアップ)をサプライヤーから提案されたことがありました。
通常なら「問題なし」と流しがちな案件でしたが、DRBFMレビューを実施。
設計、品質、現場工程、サプライヤーで議論を進める中で、「金型取出工程の冷却効率が落ちることで、収縮バラツキが拡大する」というベテラン作業者の経験談が出ました。

その場で具体的な測定計画と初期ロット追跡を即時決定したことで、数十万円規模の後工程手直し・納期遅延を未然防止できました。
単なる書面確認では拾えなかった生の知識。
これこそDRBFMの”生きた効果”だと痛感しました。

電子部品ライン:AIによる画像検査の導入

あるラインでは、画像判別AIを導入した際に、AIモデルの”訓練用サンプル画像”のバリエーションが現場条件と合っていないことが議論で明らかに。
現場リーダーが「実際は夜勤帯や湿度が変化したとき、検出率が落ちている」と指摘。
仮説検証フェーズを増やしAI再学習を先行実施したことで、市場不具合ゼロを実現できました。

現場に根ざしたDRBFMは、DX時代の工程改良・自動化推進とも高い親和性があります。

まとめ:DRBFMがもたらす新しい品質マネジメントの地平線

DRBFMは単なるツールや会議体ではありません。
設計と現場、バイヤーとサプライヤー、デジタルとアナログ、これらすべての架け橋となる「対話主体」「現場起点」の品質マネジメント手法です。

変化の激しい時代、製造現場では必ず予期せぬトラブルの種が生じます。
その芽を「全員の目線・知見」で早期に発見し、未然防止に結びつけるにはDRBFM的な議論の場が欠かせません。

昭和的な属人的品質管理から、現代的かつ多様性ある知識創造型の品質体制へ。
今後、製造業に関わるバイヤー・サプライヤー・生産現場すべての立場の皆さんにとって、DRBFM導入は”業界のアナログ脱却”のみならず、新たな地平線を切り開く強力な武器となるはずです。

あなたの現場でも、まず一歩、”変化点と対話”に焦点を合わせたDRBFMを、始めてみてはいかがでしょうか。

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