投稿日:2025年7月3日

圧力センサ信頼性向上と不具合事例から学ぶ設計活用ガイド

はじめに:圧力センサが果たす製造業の役割

製造現場において圧力センサは、プロセスコントロールや安全管理、品質確保の要として機能しています。

特に自動化が加速する中で、デジタル化の波に乗り遅れがちな“昭和的”な体質の工場でも、圧力センサによるモニタリングは既に不可欠な存在となっています。

しかし、「壊れやすい」「時々データが乱れる」「なぜか交換頻度が高い」といった悩みも少なくありません。

この記事では、圧力センサの信頼性を高める設計・運用のポイントや、私自身が数多く見てきた不具合事例から得られた実践的な学びを、現場感覚で解説します。

サプライヤーにとってはバイヤー目線の考え方、バイヤーを目指す方には現場で求められる知見、製造業従事者全般には“使えるノウハウ”を提供します。

圧力センサとは?製造ラインを支える仕組みと種類

圧力センサの基礎知識

圧力センサは、液体や気体の圧力を電気信号に変換し、機械やシステムにフィードバックを与える装置です。

製造業では主に次のような用途があります。

– 液圧・空圧制御
– タンクや配管内圧のモニタリング
– 泄漏検出、異常圧検出による安全対策
– 製品出荷前検査ラインでの品質検証

これらの役割は、製造工程の安定化とコストダウンの観点からも欠かせません。

代表的な方式と選定ポイント

圧力センサには主に以下の方式があります。

– ピエゾ抵抗式
– 静電容量式
– 圧電式
– 電磁式

選定の際は、計測レンジ、耐環境性能(防水・防塵・耐薬品等)、応答速度、設置スペース、コストなどを現場ニーズに照らし合わせることが重要です。

「高ければ良い」「よく売れているから安心」という安易な選び方は、現場トラブルの原因となりやすいです。

現場目線で考える圧力センサ不具合の“リアル”事例

事例1:突発的なセンサ故障と「思い込みのワナ」

ある食品工場では、数年使い続けた圧力センサで突如検出値がゼロになる不具合が発生しました。

現場では「センサの製造不良」と疑いがちですが、調査の結果は“蒸気洗浄作業時の高温水侵入”でした。

「防水タイプのはず」という思い込みで、IP規格を読み解かず使い続けたことが原因です。

この例は“アナログ時代の慣習がデジタル機器に通用しない”典型です。

事例2:設置環境無視による誤作動

鋳造ラインでの空圧監視で、圧力センサが突発的に異常信号を出す問題が頻発しました。

原因は“溶湯からの輻射熱”によるセンサ内部温度上昇でした。

適応温度範囲を確認せず、汎用品をそのまま設置した結果、数か月ごとに交換が必要になっていたのです。

コストを意識するあまり、“適材適所”の意識が薄れたことが損失に繋がりました。

事例3:ケーブル結露と長期信頼性への盲点

某化学工場では、年に数台ペースで圧力センサが“徐々に値ブレ”する問題に悩まされていました。

実態は、夏場の温度差によるケーブル内結露の集積が、端子腐食や信号インピーダンス異常に繋がっていたのです。

現場ではセンサ本体のみならず、“配線含めた全体設計”が信頼性を左右する現実が突き付けられました。

設計段階での信頼性向上ポイント

1. 現場環境分析とリスク評価の徹底

圧力センサ選定では、「何の圧力を、どんな条件下で、どれくらいの精度で測るか」を、現場の作業者や保全スタッフとも連携して徹底分析する必要があります。

– 流体(液体or気体)の種類
– 温度・湿度範囲
– 洗浄や薬液などの付着リスク
– 取付方向と可搬性

これらの因子を押さえ込み、想定外の環境要因を可視化することがポイントです。

2. 配線設計・保護の見直し

センサ単体ばかりに目が行きがちですが、「信号ケーブルの結露防止」「曲げ・引っ掛け対策」「接続部のシール処理」なども信頼性向上の重要なノウハウです。

現場で「センサだけを定期交換しても、ケーブル周辺が悪ければ根本解決しない」ことは頻発しています。

予算配分や手間のかけ方も、全体最適で考えることが肝要です。

3. サプライヤー管理とテクニカルコミュニケーション

海外含めた複数サプライヤーを活用する場合、単なる「安さ」で決めるとリスクが高まります。

– 技術相談への対応速度
– 不具合時の原因究明能力
– 現場見学やサンプル貸与への柔軟姿勢

これらの姿勢が、納品後の信頼性と改善力に直結するといえるでしょう。

“買って終わり”ではなく、“使い続けて信頼できる相手”であるか。
バイヤーとしては、この観点での取引先選びが重要です。

運用段階でのトラブル予防術

1. センサ監視と異常検知の仕組み化

IVI(Industrial Value Chain Initiative)などでも指摘されますが、従来の「定期パトロール」「壊れたら交換」型の管理から、「データで予兆を捕まえ、能動的に対処」する視点が重要です。

– センサ値の“ナマ”監視による故障予兆の早期発見
– 複数センサのトレンド監視による異常パターンの自動検出
– 異常兆候が見えた時、原因特定と再発防止のFE(現場実証)連携

IoT化が進む現場では、各装置の「正常値・異常値のしきい値設定」を地道に蓄積していく意識が大切です。

2. 保全・現場作業者のレベルアップ

装置の自動化が進むほど、現場作業者の“アナログ的観察力”が埋没しがちです。

ですが、「音」「振動」「におい」などの五感も活用しつつ、圧力センサの値も“数字だけでなく挙動との照合”が理想です。

保全担当には、「トラブル事例の共有会」や「サンプル分解研修」を定期実施し、場当たり的な交換から脱却するノウハウを根付かせましょう。

3. 昭和的管理からの脱却と“IT活用の一歩”

多くの工場では「紙帳票への転記」「エクセルでの手集計」が当たり前という“昭和メンタリティ”が根強く残っています。

圧力センサのデータも、手書きで記録した直後にセンサ本体が壊れていて本当の異常が分からない、といった事例が後を絶ちません。

– 安価なIoTゲートウェイ導入
– クラウド管理ソフト等の無理のない活用
– ベテラン作業者の“カンピュータ”のデジタル化

これらの“小さな一歩”が、現場力向上と設備稼働率アップに直結します。

サプライヤー目線:バイヤーが本当に求めること

サプライヤーにとって、バイヤー(調達担当)は単純な価格交渉の相手ではありません。

下記は実際の現場で評価されるポイントの一例です。

– 納期短縮や小口対応などの柔軟性
– 異常発生時の現場立会い・アフターフォロー力
– 品質トレーサビリティや最新トレンドへの情報提供
– 実際の現場ニーズを踏まえた適材適所提案力

単なる“スペック比較”や“値引き合戦”に終始せず、現場感覚による「バイヤーの困りごとを先回りする姿勢」が取引拡大の決め手です。

加えて、「御社の設備でこう活用できます」などの具体例や、類似業界の改善事例の提供はバイヤー受けが非常に良いものです。

最後に:圧力センサは“現場力強化”の鍵

圧力センサの信頼性は、単体品質やスペックだけでなく、設置・配線・設計・運用の全体最適によって決まります。

昭和から根強く続く現場ルールと、デジタル時代の要求水準をどうバランスさせるか。

そこに現場目線・ラテラル思考による新たな知恵が求められています。

調達購買・生産管理・現場保全、そして現場に寄り添うサプライヤーが一体となり、「不具合事例から学び、より強い現場を作る」こと。

その積み重ねが、製造業の持続的発展と競争力強化に繋がるのです。

どの立場であっても、次の一歩は“現場で本当に役立つ知恵”の獲得からはじまります。

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