- お役立ち記事
- 板鍛造順送工法に学ぶ金型設計と工法転換トラブル対策
板鍛造順送工法に学ぶ金型設計と工法転換トラブル対策

目次
はじめに:板鍛造順送工法の重要性と現場課題
長年製造業に携わっていると、「既存工法を大きく変更したときのトラブル」による現場混乱、コスト超過、さらには部品調達の遅延など、数多くの壁に直面します。
特に昨今の自動車・家電など多品種少量生産が求められる中で、プレス加工現場が従来型の金型設計と工法から脱却し、板鍛造など高精度・複雑形状の加工に柔軟に転換する動きが加速しています。
そこで今回、「板鍛造順送工法」に焦点を当て、金型設計の勘所や工法転換時の現場トラブル対策について、現場管理経験者の視点で深掘りします。
板鍛造順送工法とは何か?従来工法からのブレークスルー
板鍛造順送工法とは、プレスマシンで金属板材を順次送りながら、複数の工程で段階的に塑性加工(鍛造)を施す成形技術です。
従来の板金プレスは「打ち抜く」「曲げる」「絞る」といった単純形状向きが主でしたが、板鍛造を取り入れることで、精度の高い三次元的な形状形成や部分的な肉厚変化も可能になりました。
これにより
・部品の軽量化
・溶接・ねじ締結など組立レス化
・工程集約によるリードタイム短縮
など、従来の課題を解決しうるポテンシャルを秘めています。
サプライチェーン再編と板鍛造順送工法の位置づけ
近年サプライチェーンの再編が進み、調達・購買部門は「コスト・品質・納期」の三兎を追う必要があります。
また、コロナ禍・半導体不足などによる部材調達難が常態化するなかで、バイヤーもサプライヤーも「工程を集約し、外部依存度を下げ、自工程完結化」を強く意識し始めています。
板鍛造順送工法はまさにこの「自工程完結」に資する工法です。
設計初期段階から調達部門・金型設計者・現場作業者が密な連携をとり、「工法転換」を主導できるかが競争力の鍵と言えるでしょう。
現場発・金型設計で失敗しやすいポイントとその回避策
1. 板鍛造の塑性流動解析の甘さ
昭和型現場では、経験則や手作業図面から設計を進めがちです。
そのため金属材料の塑性流動やひずみ集中点などを見誤り、実際のトライ後に割れや皺(しわ)など大きな不具合が発覚するケースが多くあります。
これを避けるためには、CAE(コンピュータシミュレーション)を活用した事前流動解析が必須です。
近年は設計者でも扱えるプリセットメニュー付きの解析ソフトが増えているため、現場オペレーターが自ら解析できる体制づくりが重要です。
2. 順送工程設計の詰めの甘さ
順送型の場合、1工程ごとの位置決め精度やストリップ送り量設定ミスが命取りとなります。
「1工程目で材料が壊れる」「ピッチが狂い最終製品の公差が確保できない」などの地獄を何度も経験してきました。
初期設計時点でピッチ計算書を徹底し、試作段階でダミーブランク・空打ち工程を盛り込むことが、量産安定化の近道です。
3. 金型メンテナンス性を軽視しがち
意外な落とし穴として、「順送型は複雑なため、現場での型保守が困難になる」問題があります。
特に板鍛造部の圧力が集中する部位では、早期摩耗やチッピングによる突発停止リスクも高まります。
設計時点からメンテナンスのやりやすさ(分割構造、着脱工具、予備部品の備蓄)を仕込んでおくとトラブル発生時のダウンタイム削減に効果的です。
現場目線の工法転換 成功させる4つのポイント
1. 金型設計と調達担当の早期連携によるリスク低減
設計は自部署だけで完結させず、早い段階から調達購買およびサプライヤーとも打合せを重ねることが重要です。
「材料手配リードタイム」「金型用SKD材質の在庫・納期」「追加設備投資の抑制」など、調達視点の目配りが後戻り工数激減に直結します。
2. 昭和型アナログ現場にもデジタルツールを持ち込む
DX(デジタルトランスフォーメーション)は一朝一夕では進みませんが、少しずつ業務フローの中にシステムを取り入れる習慣化が大切です。
型保守履歴をエクセルで始める、トライデータをクラウド管理する、といった小さな実践から始めましょう。
3. トライ&エラーのカルチャーを推奨する
板鍛造は「一発成功」が難しく、何度も試作トライを重ねて暗黙知・技能を磨いていく必要があります。
現場と設計、営業、生産技術が壁を取払い、知恵を持ち寄る風土を育てることこそ「工法転換トラブル対策」の一丁目一番地です。
4. サプライヤーとバイヤー双方の「思い込みリスク」を排除する
バイヤーはコストと品質ばかりを見がち、サプライヤーは技術自負が強く融通が利かなくなる傾向があります。
両者が密にミーティングし、「ことばの壁」「暗黙の思い込み」を洗い出すことで、工法転換時のコミュニケーションロスを防ぎましょう。
板鍛造工法転換でよくあるトラブル事例と対策
1. 材料ひずみ・割れ問題
従来板厚・材料規格からの設計流用を安易に行い、板鍛造工程で割れが多発する例が見られます。
解析と現場テストの反復で「絶対安全加工域」を定め、マージンを設計に取り込むよう徹底しましょう。
2. 工程間搬送ミスによるジャム(部品詰まり)
順送工法は、工程ごとのピッチ・送り方向の精度が狂うと、すぐに部品詰まりや工具破損のリスクが高まります。
日常点検リストを標準化し、定期自主点検をオペレーターの役割としましょう。
3. 金型補修頻度の増加と生産ロス拡大
環境規制やコストダウン活動による材料スペックダウンが急増しています。
SKDや粉末ハイス材などの金型部材を現場主導でテストし、量産時に交換・補修コストが膨らまない体制作りが大切です。
今からできる板鍛造工法転換時の“現場強化”アクション
1. 設計書・試作・トライ日報を、デジタル・紙のダブルトラックで残す
2. オンライン会議を活用したサプライヤー・バイヤー連携(遠隔工場同士の知識共有)
3. 「失敗事例集」を部門横断で蓄積し、定期的に勉強会を実施
4. 新工法導入の設備投資計画に「人材教育費」をきちんと含める
5. 調達部門が材料メーカーと直接定期面談し、最新素材情報を吸い上げる
まとめ:昭和から未来へ、現場を変える「工法変革」のすすめ
板鍛造順送工法は、ただの技術革新にとどまりません。
現場の設計、調達、製造、営業、サプライヤーが一体となって「トラブル未然防止・工程集約・QCD(品質・コスト・納期)改革」にチャレンジできる、まさに“現場革新”の切り札です。
アナログな現場ほど、ちょっとした意識変化・チーム間コミュニケーションで工法転換は劇的な成功につながります。
ベテランも若手も、またバイヤー・サプライヤーの立場を超えて、「未来型ものづくり」への一歩に挑戦してみませんか。
そして「現場の知見を未来の競争力へ」、ぜひ日常改善の積み重ねから進めていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)