- お役立ち記事
- トライアル出荷のプロフォーマ作成から本船確定までをテンプレート化
トライアル出荷のプロフォーマ作成から本船確定までをテンプレート化

目次
はじめに:トライアル出荷の現状と重要性
製造業のグローバル化とともに、新規取引先とのビジネスが日々増加しています。
その際、必ず通るのが「トライアル出荷(試供出荷)」です。
このとき発生するのが、プロフォーマインボイスの作成から本船確定までの一連のフローです。
しかし、これらの流れを体系的に整理できている企業は意外と多くありません。
昭和から続くアナログな慣習や、現場ごとの個別対応が根強く残っているため、属人的な処理や手戻りが発生しやすいのが実情です。
この記事では、プロのバイヤー経験・工場長経験を持つ筆者が、トライアル出荷のプロフォーマ作成から本船確定までを「テンプレート化」し、現場目線で誰でも実践できる運用方法をご提案します。
トライアル出荷~本船確定の全体フロー
(1)トライアル出荷の意義と目的
トライアル出荷は、新規調達先候補とのビジネスで品質・仕様・納期の確認、物流ルートの検証、安全保障貿易管理の観点など多くの目的があります。
取引先からの信頼を勝ち取る、現場の実力を第三者に示す、量産移行への布石を仕込む…。
この段階での「ミス」は取引失敗へ直結するため、仕組み作りが重要です。
(2)プロフォーマインボイス作成の基本と”型”
プロフォーマインボイス(見積送り状)は、受発注/通関/物流/決済の起点となる書類です。
しかし、受注側・発注側で“書き方”や“必要情報”が微妙に異なります。
現場で使える「テンプレート項目例」は以下です。
– インボイスNo.
– 日付
– 輸出者情報(会社名・住所・担当者名・連絡先)
– 輸入者情報(同上)
– 商品詳細(品番・品名・数量・単位・単価・金額)
– 原産国
– 合計金額(通貨表記も明記)
– インコタームズ(例:FOB, CIF等)
– 支払条件
– ポート情報
– 梱包形態、明細
– サイン・社判
ポイントは、客先事情や現地法令による追加要求(例:輸出規制品の場合のHSコード明記、「用途」記載など)も事前調査し、見積書テンプレートのひな形横に【用途/国別備考】メモ欄を設けておくことです。
(3)輸出仕様書・梱包仕様の標準化
トライアル出荷は“小ロット・手組み”になりがちで、梱包方法も個人差が生まれやすいです。
ここでもテンプレート化が有効です。
【現場で使えるチェックリスト例】
– 梱包材/箱サイズ/重量/個数明記
– ラベル表記(内容物、数量、出荷日、LOT No)
– シール内容(バーコードやQR対応の有無も考慮)
– 輸送強度(段ボール二重/緩衝材入り/バンド留め等)
– 温度・湿度管理要件(電子部品・食品等なら特に)
– 通関ラベル(MADE IN~、規制マーク)
こうしたチェックシートを現場で流用できるよう電子化しておけば、誰がやってもミスが減り、ムリ・ムダ・ムラも排除できます。
(4)輸出許可・通関手配の標準フロー
アナログな製造業現場では、「書類をそろえて通関業者に渡して終わり」な観点が多いものです。
実際はいくつもの“落とし穴”があります。
【事前確認テンプレート例】
– 対象製品は安全保障貿易管理リスト該当/非該当の確認
– 現地規制(CE, CCC, UL, FDA等)の有無
– 梱包明細とインボイスの数量・品名一致確認
– 通関業者への事前連絡・必要書類リスト化
– 輸送手段(航空/船便)の一次決定
– 顧客側の受け入れ書類(受領書・到着通知等)
ExcelやGoogleスプレッドシートで運用可能な「出荷準備ToDoリスト」を設け、各項目を担当者チェック形式にすると抜け・漏れ防止が徹底できます。
(5)輸送・本船確定までの連絡テンプレート
本船・航空便への搭載まではリードタイム短縮、異常時の対応が生命線です。
昨今はサプライチェーン全体のDX化要請も高まっていますが、実情は「現場のメール・FAX」「電話連絡」に依存することがまだ多いです。
【周知・連絡テンプレート例】
– 船積/搭載予定日の事前連絡
– BL(船荷証券)No./船名/航空便No.情報の共有
– 通関許可取得・出荷完了連絡と、タラップリミット(出航確定可否)案内
– トラッキングNo.付通知
– 客先向け到着予定日/イレギュラー対応連絡
5分で流用できる定型文雛形(英語含む)を用意し、社内共有で“誰がやっても”抜けないフローを実装しておきます。
業界特有の「属人文化」と「昭和からの脱却」
アナログ依存の落とし穴
製造業現場では「ベテランAさんしか分からない」ノウハウで回っていることが非常に多いです。
そのため休暇・退職時に業務が属人化し、重大トラブルが発生します。
トライアル出荷はその最たる例です。
これは「前例踏襲主義」「紙文化」「会議最優先」など、いわゆる昭和の仕事観が未だ影響し続けているからです。
テンプレート化・標準化・DXの第一歩は、「あなた自身が現場を変えるマインドセット」を持つことから始まります。
仕組み(テンプレート)の価値とは
テンプレート化は「標準+柔軟性=真の競争力」となります。
特にトライアル出荷のような例外業務は、チェックリストや定型雛形無しでゼロから始めると、99%ミスか手戻りが発生します。
だからこそ“使えるテンプレート”を現場が自ら作る(ボトムアップも交えて)ことで、
習慣化→誰でも出来る→例外時もスピーディーな改善→客先信頼獲得、という良い循環が生まれます。
デジタルツールを使った運用例とメリット
Excel/Googleスプレッドシートの活用
限られたリソースしかない中小企業や現場では、高額なシステム導入は現実的でないことも多いです。
そこで、既存PC環境を最大限活用しましょう。
【具体例】
– プロフォーマインボイステンプレート(自動日付、金額換算式付)
– 梱包内容チェックリスト(チェックボックス付)
– 通関書類ToDoリスト(担当部署・期限管理欄付)
– 出荷納期ガントチャート連動
シンプルな仕組みでも全員が同じ「型」で動けば、驚くほど業務精度が上がります。
クラウド連携・メールテンプレの簡易DB活用
GoogleドライブやOneDriveなど、業務データをクラウド共有し、常に最新版へアクセス可能にすると属人化防止と事故低減につながります。
メール内容も定型分・署名付きで「品名/数量/日程/顧客名」だけ入れ替えればワンクリック送信できる体制を作りましょう。
テンプレート活用の具体的な運用手順まとめ
1. 自社標準のプロフォーマインボイス雛形を作成し、細部まで情報項目を入れ込む
2. 梱包仕様書・出荷依頼書も合わせてチェックシート化
3. 輸出許可・通関手配の事前確認リストを準備
4. 出荷準備ToDoリストをカンバンやデジタル管理ツールで可視化
5. 船積/出荷連絡の定型文を日英準備し、社内外で共有
この流れさえ日常的に“型”で回せば、どんな人でも標準化された高品質なトライアル出荷が可能となります。
サプライヤー・バイヤー双方の目線で理解しよう
新規商談・トライアル出荷のプロセスを「テンプレート」で整備することで、バイヤー側の「期待値」を見える化できます。
サプライヤーは「何をどこまで用意すれば相手に迷惑をかけないか」「何を漏らすとプロジェクト全体が遅延するか」を現場心眼で把握できます。
また、バイヤーや調達担当者を目指す方は「手戻りやトラブルは、常に情報の不揃い/業務の型化不足」から起きていることに目を向けてください。
プロセスを見直し、“攻め”の標準化を自分の強みにしていきましょう。
まとめ:テンプレート活用こそ昭和的現場脱却の近道
トライアル出荷のプロフォーマから本船確定までの流れは、一時的な面倒を嫌がり現場任せにした時点で必ず属人化とトラブルを生みます。
「誰でも・どんな時も・何十件でも高品質」を実現する方法はテンプレートの工夫と運用です。
昭和的な現場文化にメスを入れる――これは難しいですが、現場発の変革で製造業の発展に寄与できる“型作り”は、今後の競争力そのものです。
是非あなたの現場でも、今日から実践できるテンプレート化・標準化を始めてみてください。
きっと想像を超える改善と強い「現場力」が育つはずです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)