投稿日:2025年9月8日

OEM商品を売れるまでに必要なマーケティングと販促施策

はじめに:OEM商品が売れるまでのリアルな課題

製造業界においてOEM(Original Equipment Manufacturer)形態での商品展開は、今や多くの企業で標準的なビジネスモデルになりました。

ただし、OEM商品が「作れば売れる」時代はとうに終わっています。

バイヤーの立場、サプライヤーとしての立場、それぞれの現場で数多くのOEM案件に携わった経験から断言できますが、OEM商品はマーケティング施策と販促活動なくして売上拡大はあり得ません。

ここでは、「OEM商品を売れるまでに必要なマーケティング戦略と販促施策」を現場視点で徹底解説します。

OEMビジネスに初めて挑戦する中小メーカーや、既存販路に甘んじがちな昭和型企業が「今、本気で動くべき理由」と「具体的な実践手法」を知って、持続的な成長へつなげましょう。

OEM商品の販売ステージ別マーケティングマップ

OEM商品販売の成功には、闇雲なアプローチではなくステージ別戦略が不可欠です。

各ステージにおける実務上のポイントを整理してみます。

ステージ1:受託先の選定・開拓

近年は単なる「価格での競争」や「既存顧客の囲い込み」では、OEM案件を取ることが難しくなっています。

受託先となるバイヤーは、下記の点を明確に判断しています。

– 御社独自の技術・生産能力があるか
– 柔軟なロット対応や納期遵守体制があるか
– サステナビリティや品質保証の取り組みレベル
– コミュニケーション体制や提案力の質

この時点からマーケティングの一貫として「自社技術の見える化」「強みを打ち出す資料・WEBコンテンツ作り」が必須です。

ステージ2:OEM商品の共同企画と価値設計

受託前提のヒアリング〜提案段階でよくあるのが、「言われた通り作る」だけの開発姿勢です。

これでは価格競争の泥沼から抜け出せません。

– ターゲット市場や用途分析を行い、OEM先と共通の価値基準を設計
– 他社製品のベンチマーキングを実施し、オリジナリティと差別化軸を創出

この共創プロセス自体が「バイヤーに選ばれるサプライヤー」の大きな強みになり、次案件にもつながります。

ステージ3:OEM商品の販路開拓と拡販施策

OEM品はよく「受託して終わり」となりがちですが、販路拡大支援や共催プロモーションの有無で次のリピート受注率が大きく変わります。

– OEM先ブランドの販促計画に自社が積極的にコミット
– BtoB展示会やWEBセミナー等でのコラボ企画提案
– エンドユーザーへの情報提供やカスタマーサポートへの連携

こうした活動がOEM元・先双方の利益を高め、「選ばれる、続くパートナーシップ」につながります。

なぜ製造業は「昭和的営業手法」から脱却できないのか

長らく日本の製造業は「優れたものを作れば売れる」「一度系列に入れば安泰」という神話がありました。

ところが市場変化やサプライチェーンの多様化、コロナ禍のサプライショック以降、そんな常識は通用しなくなっています。

なぜ多くの現場が「変われない」のか。

– 現場部門と営業部門・マーケティング部門の分断
– ITリテラシー不足やデジタルマーケティング不理解
– 古い商習慣(FAX、対面、勘と経験重視)
– 受け身体質(指示待ち、既存ルート重視)

こうした慣習にとらわれて、みすみす販路拡大や収益向上の機会を失っているケースが目立ちます。

新しい地平を切り開くには現場起点でのマーケティング発想が不可欠です。

OEM商品に効くマーケティング施策の具体例

業界内部での常識に縛られず、ラテラルシンキング(水平思考)で既存の枠を超えてみましょう。

特に製造業のOEMビジネスで今おすすめしたいマーケティング施策を紹介します。

1. テクニカルブログ・ホワイトペーパー配布

自社技術の強みや事例、課題解決型のストーリーを定期的に発信します。

– 物流コスト削減事例、導入前後の業務改善データ
– 業界動向×自社技術の可能性など論点設定
– PDF資料、動画、成功事例インタビュー

Google検索流入やOEM元企業からの新規問い合わせ率アップにつながります。

2. BtoB特化のウェビナー(オンラインセミナー)活用

リアル展示会だけでなく、オンラインで技術・製品プレゼンを行う機会が年々増加しています。

– バイヤー視点の「選定ポイント解説」レクチャー
– 過去の事例から学ぶOEM成功のカギ
– 質疑応答・個別相談会の実施

情報をオープンに伝えることが、業界の信頼獲得と見込顧客の囲い込みに有効です。

3. 受注後の「OEM元サポートプログラム」策定

案件獲得で終わらず、OEM品が市場に出た後の「共販体制」を整える会社が増えています。

– マーケティング資料や販促物、説明会の共同開催
– エンド向けFAQや保守技術情報提供
– 新機能・改善フィードバック会の定期開催

自社がOEM商品の“共同販促者”の姿勢で臨むことで、顧客ロイヤルティ向上とリピート受注が期待できます。

OEM取引でバイヤーが重視する「サプライヤーの発信力」

昭和的な「黙って作る」だけから一歩抜けだし、今OEMバイヤーが重視しているのは「サプライヤー自身のマーケティング力」や「発信力」です。

– 製品・技術トレンドを理解しているか
– 市場動向やニーズを自発的に調べているか
– エンドユーザーや代理店の声を基に改善提案ができるか

このような「現場との対話力」を持つサプライヤーは、未経験分野であっても長期的なパートナーシップ候補として評価されやすいのです。

実例:OEM取引が拡大したメーカーの変革例

例えば、ある中堅部品メーカーでは、現場リーダー主導でテクニカルブログ運営を始めた結果、年間十数件だったOEM案件が2年で40件超に成長しました。

また、協調した販促活動(共催セミナーやエンドユーザーワークショップ)によって、OEM元の自社ブランド商品の売上も20%以上アップ。

個人プレーから、バイヤーやOEM元と「一緒に考え作る」体制へと変革したことが奏功したと言えます。

これからの製造業に求められるラテラルシンキング

「OEM商品は指示通りに作ればよい」という思い込みが通用しない今、業界全体で新しい発想が求められています。

– ネットワーク・共創型思考(社内外の知見をつなげて新価値を生む)
– デジタル活用(データ収集・発信力を軸とするマーケティング)
– 顧客体験重視(自社都合ではなくOEM元やエンドユーザー起点)

以上の点を意識し、OEMの商品企画・開発・販促をトータル提案できるサプライヤーこそ“これからの時代の勝者”です。

まとめ:OEMビジネスで生き残るための3つの鉄則

1. 市場やバイヤーの「本音」を常にキャッチし、情報発信と共創体制を確立する
2. 単なる受託から一歩進み、OEM元と“販促までも共同”で進めるスタンスをもつ
3. アナログな「守り」から脱却し、現場の知恵・データ・顧客満足で差別化を図る

時代の変わり目にこそ、現場の声とマーケティング発想を連携させた変革が有効です。

OEMでの受注・販路拡大に悩む現場担当者、またサプライヤー・バイヤー双方にとって、本記事が新たな一歩を踏み出すヒントとなれば幸いです。

製造業の未来を、共に切り拓いていきましょう。

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