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糸切れを防止するオイリングノズル配置と供給量の均一化

目次
はじめに:糸切れ防止は製造業の生命線
糸切れは繊維業をはじめ、多くの製造現場における重大な課題です。
この問題に直面したことがある方なら、たった1本の糸切れがライン停止や製品不良、納期遅延など多大な損失をもたらすことをご存知でしょう。
現場では「なぜ糸が切れるのか」「どうやれば安定して生産できるのか」という声が絶えません。
本記事では、現場経験と管理職目線のノウハウをもとに、特にオイリングノズルの最適な配置や給油量の均一化方法について解説します。
時代遅れと揶揄されがちなアナログな繊維生産の現場こそ、一歩先の工夫で大きな成果を生み出す余地があります。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとして現場改善を狙う方、全ての製造業従事者にとって、現場に直結するナレッジとなる内容をお届けします。
糸切れの本質的な原因
糸切れの根本原因は、摩擦・張力・温度変化・給油不良・異物混入など多岐にわたります。
その中でも「潤滑不良」―つまりオイリングノズルからの油供給のアンバランスによる摩擦増大―は非常に多い要因です。
ラインを止めて糸の状態や機械の動作を調べ、ようやく「一部のノズルからほとんどオイルが出ていない」「ノズル先端が詰まっていた」「油量が各箇所でバラバラだった」と発覚する現場は枚挙にいとまがありません。
何気ないオイリング作業にも、工程ごと、機種ごとの違い、油の性質、材料の変化などが複雑に絡みます。
昭和時代から続く手作業・経験則に頼ったやり方だけでは時代の変化についていけません。
現場でありがちな失敗例
・ノズルの固定が甘く、送油ポイントからズレている
・ノズルの詰まりや油路のエア噛みを見落とす
・ムラのあるオイル供給で、部分的に糸強度が低下
・油量を「だいたい」で設定し、均一化を怠る
これらは全て、繰り返し発生しやすい典型的なミスです。
オイリングノズル配置の最適化
オイリングノズルの最適配置とは、単純に糸の通過位置に「近ければOK」ではありません。
糸の搬送速度・糸径・撚り方向・搬送経路の曲がり・機械の微振動等、複数の条件によって最適な角度・距離・高さ・噴射範囲が決まります。
現場で優先すべきチェックポイント
1. ノズル先端と糸のクリアランス
2~3mm程度の間隔が理想です。
接触させてしまうと毛羽立ちやノズル損傷、離し過ぎても油が飛散します。
2. ノズルの角度設定
糸に対して直角よりもやや移動方向に傾けると均一な塗布になりやすいです。
メーカー推奨値だけではなく、現物で摩擦テストすることが重要です。
3. 複数本の糸には扇状配置や多点配置
一方向から全て散布すると、外側・内側で油量差が生じます。
ノズルを複数本設けたり、ファンノズルで均一噴射するのが有効です。
4. 固定方法と微調整構造
現場でありがちなのが「元々こうなっていた」と形状だけ真似することです。
樹脂パーツや取付金具は、微妙なたわみ・振動にも強い仕様が必要です。
一度設置した後も、必ず現場で1時間・1日・1週間単位の検証を続けて調整します。
昭和的アプローチとデジタルの融合
多くの熟練工は「音」や「手触り」「臭い」で給油状態を判断します。
これは素晴らしい暗黙知ですが、属人的なノウハウにとどめず、写真や動画で「良好な配置」をデータ化し標準化することが大切です。
近年は廉価なカメラや自動記録装置も増えています。
一度適正条件を見極めたら、係員ごとの「勘」に頼らず、誰でも同じ結果が出せる仕組みに落とし込むことが現場力アップの近道となります。
オイル供給量の均一化がもたらす生産安定化
いくらノズルの配置が最適でも、供給されるオイル量がバラついていては意味がありません。
特に長時間稼働、複数ライン運転、使用油種の変更など、現場環境が複雑なほど油量管理の難易度は跳ね上がります。
よくあるオイル供給トラブル
・一部のノズルから油切れ
・ライン切り替え時に油種が混在
・送り出しポンプの劣化で圧が低下
・フィルター詰まりによる流量低下
これらは日常点検で見逃されることが多く、気付いた時には糸切れや機械トラブルという結果だけが現れます。
現場改善のためのアプローチ
1. 定量ポンプ・フローセンサーの導入
専門メーカーが出している流量計付きの供給ユニットは、予想以上にコストパフォーマンスが高く、「ちゃんと流れているか」の不安が一気に解消します。
2. 日常ECRS点検(Eliminate, Combine, Rearrange, Simplify)
・油タンク的位置、補充ルートの見直し
・ノズル詰り防止のプレフィルター追加
・定時巡視の標準化
これにより属人的なチェックが仕組み化できます。
3. オイル経路の色分け・一元管理
複数油種、複数ノズルが絡む現場では、パイピングやタンク、ノズル先端を油種ごとにカラーリングするだけでヒューマンエラーが激減します。
デジタル機器を併用した「見える化」はその後検討すれば十分です。
糸切れゼロを目指す現場カルチャーの確立
技術的な最適化に加えて、最も大切なのは「糸切れゼロに向けた現場全体の意識」です。
化学繊維、綿糸、フィルム、ワイヤーなど対象は違っても、「安定した供給」というゴールは同じです。
工場長や管理者はもちろん、現場作業者全員が「糸切れの兆候」を共有できる仕組みづくりが成果を左右します。
情報共有と標準化教育
1. 毎日のミーティングで「ヒヤリ・ハット」共有
「今日はここでノズル詰まりがあった」「油量が減っていた」など、現場での小さな気づきを即座にフィードバックします。
2. 標準作業書と動画教材の活用
ノズルの配置や油量チェックなどは作業手順を明文化。
さらに動画で「正しい配置」「均一に出ている状態」を後輩作業員にも伝えます。
こうして属人的なミス・勘違い・引継ぎ漏れを防ぐことができます。
ラテラルシンキング:従来の枠を超える改善提案
・オイルの替わりに低摩擦コートを使えないか?
・ノズル先端に「自動クリーニング機構」を内蔵できるか?
・AI監視カメラで糸表面の光沢や湿潤状態を常時確認できないか?
・無人化工場として全工程の給油・監視をワンオペレーター化できないか?
こうした思考を現場の「できっこない」に閉じ込めず、異業種や若手・外部技術者も巻き込んで検討しましょう。
現実的な小改善を積み上げつつ、新たな視点で生産ラインを再定義すれば、“昭和的な”日本の現場力は今後も世界最強クラスとなり得ます。
まとめ:未来の現場力は現状把握と小さな工夫の連続から
糸切れ防止は一朝一夕で解決できるテーマではありません。
けれど「オイリングノズルの最適配置」や「給油量の均一化」といった基本に忠実な取り組みだけでも、生産性は大きく変わります。
アナログな現場作業の知恵と、最新のデジタル技術を融合した“地に足のついた現場改善”が今こそ求められています。
糸切れで悩むすべての製造業従事者が、この現場ノウハウを活かして安全で高品質なものづくりを実現できることを願っています。
また、サプライヤーやバイヤーを志す方には、ぜひこうした「現場の見えない工夫」にまで目を配っていただき、取引先やお客様との信頼を勝ち取ってほしいと思います。
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