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スナック菓子の気泡構造を均一にする油温と圧力の管理

目次
はじめに:スナック菓子の品質に欠かせない「気泡構造」の重要性
スナック菓子は長きにわたり多くの人々に親しまれてきた菓子の一つです。
その味や香り、形状の多様性もさることながら、口に入れた瞬間の「サクッ」とした軽快な食感は格別であり、製造現場でもこの食感をどのように生み出すか、日々工夫が重ねられてきました。
このサクサク感の要となるのが「気泡構造」です。
気泡が均一に形成されたスナック菓子ほど食味が良く、また見た目も優れています。
しかし「均一な気泡構造」を安定的に生み出し続けることは、実は想像以上に難しい工程です。
油温や圧力など、製造ラインの微妙な管理が求められ、少しの誤差やむらが大きな品質ロスにつながることもあります。
この記事では、昭和から現代に至るまで現場で根強く続くアナログ管理の課題も踏まえながら、スナック菓子の気泡構造を均一にするための油温と圧力管理について、現場目線で掘り下げていきます。
スナック菓子の気泡構造はこうして決まる
気泡の生成の基本メカニズム
スナック菓子は多くの場合、生地を油で揚げる、あるいはオーブンで加熱することで製造されます。
この工程において生地内部の水分が蒸発し、発生した水蒸気が生地を押し広げて気泡を作ります。
この時、「油温」「加熱時間」「加圧(もしくは真空)」の条件が発泡バランスに大きく影響を与えます。
例えば油温が高過ぎると一気に水蒸気が発生してしまい、大きな気泡ができやすくなります。
逆に油温が低いと十分な加熱が行われず、膨らみが不十分で重たい食感になりがちです。
また、圧力や加圧タイミング次第で気泡の大きさや分布にむらが発生します。
均一な気泡をつくる難しさ
スナック菓子の生産現場では、基本的に材料の種類、配合、環境温度や湿度、揚げ油のロット差など、様々な環境変動の影響を受けます。
長年の経験則で「この油温、この加圧、この揚げ時間なら、いつも安定している」といったノウハウが受け継がれている場合も多いですが、原材料の微妙なばらつきや設備の経年変化などが原因で、気泡の均一性が再現できない悩みも多いのが実情です。
スナック菓子製造における「油温」の管理ポイント
油温コントロールの基本とリスク
スナック菓子の揚げ工程で最も重要なのが「油温管理」です。
最適油温はレシピや原材料によって異なりますが、例えば120℃~180℃程度の範囲で細かく設定されることが多いです。
油温が一定に保てないと、揚げムラが発生しやすく、気泡の大きさも不揃いになります。
油の投入ロットごとに温度計(センサー)でモニタリングし、加熱ヒーターや循環ポンプで微調整します。
ですが、油槽に生地を投入した瞬間に急激な温度低下が起こることや、油中の汚れや老化による伝熱効率の低下など、常に油温は変動要素を抱えています。
センサーの設置位置とその課題
現場ではサーミスタ式や熱電対式の温度センサーが主に使われていますが、油の流動性や撹拌状況によって油槽内の温度分布が均一とは限りません。
センサーの設置場所が悪いと、実際の揚げ条件との間に差が生じ、品質ばらつきの原因となります。
たとえば、油槽の底面温度を測って制御しているつもりでも、揚げカゴの中央部は予想以上に低温だった、というケースもあります。
また、経年劣化したセンサー類の誤差(キャリブレーションズレ)も見逃せません。
アナログ時代の工場では実測温度とメーター表示が乖離しているまま運用されていることも散見されます。
AI・IoTによる最新油温管理の潮流
最近では複数の温度センサーを要所要所に設け、ICTやIoT技術を使って油温データをリアルタイムで取得し、AIを用いて制御パラメータの最適化を図る動きも出てきました。
しかし現場では「データは取っているが、使いこなせていない」「リアルタイムで監視するオペレーター不足」といった悩みもつきまとっています。
実際に油温だけでなく、油の汚れレベルやフィルター交換時期など、間接的な要素も加味して総合的に判断できる熟練工のノウハウを、いかにデジタル化していくかが次の課題となっています。
スナック菓子製造における「圧力」管理の重要性と現場の工夫
加圧 or 減圧?どちらが効果的か
スナック菓子の加工工程では、「常圧」「加圧」「減圧(真空)」など、揚げる・加熱する環境の圧力条件を変えることで、気泡の生成制御が可能です。
特に近年、低温減圧フライ(真空フライ)技術が注目されています。
これは120℃前後の比較的低温で生地を加熱し、かつ減圧(真空)状態で水分を素早く抜くことで、膨張気泡をコントロールしやすく、しかも油分の吸収を抑えることができます。
結果として、食感がサクサクで見た目も明快なスナックができる、というメリットがあります。
一方で、従来の常圧・加圧によるフライ工程では、急激な膨張力で一気に気泡を作るため、生地の設計や圧力タイミングに応じて気泡の入り方が変化します。
圧力が不安定になると、「割れ」や「大気中での破砕」など不良品発生のリスクも高まるため、意外なほど細やかな現場対応が必要とされています。
現場での実務:気泡指数をどう測るか
実際に現場では、揚げ上がったサンプルを「割って断面を目視観察」「水中に漬けて気泡体積を計測」「画像解析で気泡分布をデジタル判定」など、多様な手法で品質検査がされています。
このようなアナログ×デジタルの現場融合が、徐々に業界標準となりつつあります。
とはいえ、「サンプルをどのタイミングで」「どのくらいの頻度で」「どの品番を検査するか」など日々の運用ルールは、現場スタッフの裁量や経験則に依存している工場も多く、異常の早期発見やトレーサビリティ確保の観点でも一層の仕組み化が求められています。
昭和的アナログ管理と最新テクノロジーの融合が求められる
なぜ「昭和のやり方」が残るのか
多くの製造現場では、ベテラン工員の五感や経験値による調整が今も強く信頼されています。
「油の匂い」「揚げ上がりの色味」「手触り」などを頼りに、細かな判断が積み重ねられているためです。
一方でデジタルや自動化の導入に積極的な企業も増えていますが、急な過渡的デジタル化に現場がついていけない、システムコストがネックとなることも少なくありません。
特にスナック菓子のような生鮮系食品の加工では、「設計どおり(設計通り)」では追えない微妙なバラつきを人間が最後に調整することも多いのです。
融合・新地平を開くために必要なこと
昭和型の「目利き」+デジタル自動化制御、この二本立てで生産現場の強化を進めていくのが理想です。
具体的には、以下のようなアプローチが効果的です。
– AI・IoT導入によるリアルタイム油温・圧力モニタリングと制御自動化
– ベテラン作業者の「ノウハウ」言語化/モデル化(動画・音声・データ記録)
– 工程異常の早期検知とフィードバックループの自動化
– トレサビリティを強化したサンプル管理+品質検査データ連動
単なる省人化・自動化だけでなく、現場の知見をいかにテクノロジーに活かす仕組みが、製造業の新しい競争力へとつながるはずです。
バイヤー視点・サプライヤー視点:どこがポイントになるのか
バイヤーが見るのは「安定品質」と「証拠データ」
メーカー調達やバイヤーが最重視するのは「均一な品質」と「その根拠となるデータ」です。
どんなに見栄えが良くても、毎回品質のバラつきが多い商品や、クレーム時の追跡ができないサプライヤーからは、長期調達が難しくなります。
つまり、スナック菓子の気泡構造が均一であることに加え、その状態を安定供給するための管理体制(油温記録、圧力記録、サンプリング履歴、異常時の対応履歴等)をどこまで見せられるかが評価ポイントになってきます。
サプライヤー現場の工夫:現代型アピールポイント
逆にサプライヤーとしては、技術や現場の「工夫」を積極的にアピールすべきです。
たとえば、
– 「我々は油温多点記録とAI制御で、揚げムラ0.5%以内を実現」
– 「現場スタッフ全員が日次で目視+計測検査を行い、管理基準を守っています」
など、現場の努力が数値や記録で示せると、取引先の信頼度が格段に高まります。
まとめ:伝統を守りつつ、新しい現場づくりを
スナック菓子の気泡構造を均一に保つためには、油温と圧力を高精度で管理し続けることが不可欠です。
そのためには、昭和の時代から受け継がれる現場力と、デジタル自動化による定量的な管理の両立が今後の成長戦略となります。
「人間の知恵×AI・IoT」の融合によって、より高い品質の安定提供や新たな商品価値の創出につなげていくことが、これからの製造業に求められているのです。
現場の皆さん・バイヤーを志す方・サプライヤーの皆さんも、ぜひ日々の業務の中で「アナログ」と「デジタル」それぞれの持ち味を見極め、新たな付加価値を発見していただければと思います。
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