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マグカップの印刷品質を左右する感光乳剤の混合比と撹拌時間の最適化

目次
はじめに:ものづくり現場で高まるマグカップ印刷の品質ニーズ
昨今、オリジナルマグカップの需要が高まっています。
企業ノベルティやギフト、EC販売など多様な用途で活用され、カラフルかつ高精細なデザイン表現が求められる流れにあります。
そんな中、スクリーン印刷によるマグカップ印刷技術の中核を担うのが、「感光乳剤」です。
感光乳剤は、版を形成する際に繊細な画像再現性や耐久性を担保する要といえる材料です。
とりわけアートワークの細部、発色、耐水性、耐薬品性など、すべての基本品質に直結します。
しかしながら、感光乳剤の「混合比」「撹拌方法と時間」への現場のこだわりや最適化への取り組みは、意外と見過ごされがちです。
この記事では、私自身が20年以上の製造現場と品質管理の経験から体得したノウハウや失敗事例とともに、感光乳剤の最適な混合比や撹拌条件を科学的かつ現場目線で徹底解説します。
バイヤー目指す方や、サプライヤーの立場でもバイヤー視点で知っておくべきポイントも交え、昭和から抜け出せないアナログ領域に新風を吹き込みます。
スクリーン印刷における感光乳剤の役割と選定のポイント
マグカップ印刷で主に活用されるスクリーン印刷は、版となるメッシュに感光乳剤を塗布し、デザインの部分だけ露光現像する工程を経てインキを通します。
このプロセスの成否を決定づけるのが感光乳剤です。
感光乳剤の基本構成と種類
感光乳剤は主成分のポリマー、感光剤、溶剤、添加剤で構成されます。
種類は大きく「ダイアゾ型」と「SBQ型」などに大別され、求める版性能(洗浄耐性、インキ適性、シャープさ、膜厚など)や製版方式によって選定されます。
材料選定時の現場視点
マグカップ向けの場合、インクの定着性や食洗機耐性、製版時の微細表現力も不可欠です。
また、カップ特有の曲面に適応できる柔軟性や、高い歩留まり支援も重要です。
材料メーカーの推奨値のみを鵜呑みにせず、自社でテストを行い、印刷用途、ロット変動、現場の温湿度条件にフィットするか確かめることが王道です。
感光乳剤の混合比が印刷品質に及ぼす影響
感光乳剤は、主成分+感光剤液を単純な体積比や重量比で混ぜれば終わり…ではありません。
おすすめの割合はメーカーから提示されますが、現場状況により最適解は変動します。
混合比のアンダー/オーバーがもたらす失敗例
混合比が誤ると、以下のような品質トラブルが発生します。
・オーバー感光剤(多すぎる)
露光ムラによる画像抜け、インク汚れ、版のベタ抜け、細線の掠れ、洗浄耐性の低下
・アンダー感光剤(少なすぎる)
現像性不良、膜厚不足、データの滲み、密着不良、指で触れるとすぐ剥がれる
現場でありがちな失敗は、「アバウトな目分量による混合」「計量機器の不適切な使用」「添加剤の入れ忘れ」です。
朝早い製版現場や、急ぎの生産ではつい手を抜きがちですが、「最適比率」と「精密計量」が安定品質の起点です。
推奨される混合比の見極め方
製品説明書記載の基準値(例:乳剤100gに感光剤5gなど)は、あくまで「標準環境下」の参考値です。
印刷温度や湿度、乳剤と感光剤のロット差、希釈液の有無などによっても微妙に変化します。
定期的にテスト版を作成して以下の点を品質指標とするのが実践的です。
・細線・微細部のシャープさ
・ベタ面の抜け・にじみの発生有無
・露光後の膜厚/硬化状態
・実際のインキ定着性(密着、耐摩耗、耐洗浄性)
これらをもとに、現場の温湿度・作業者の手順までフィードバックした最適化が不可欠です。
「標準値+自社現場独自の経験則」で最適解を見出しましょう。
撹拌時間・撹拌方法の現場的実践と科学的根拠
配合して終わり…ではなく、「どう混ぜるか」「どこまで撹拌するか」も工程強化のカギです。
この“撹拌”こそ、現場でバラつきやすく、昭和型現場では感覚値が先行しやすいポイントです。
不適切な撹拌が招く主な問題
・撹拌不足:
感光剤成分が均一に乳剤内に分散せず、露光ムラ・ピンホール・製版不良が起こりやすいです。
・撹拌過多:
空気泡が混入し、印刷時にピンホールや膜厚変動、洗浄時の膜破れが生じます。
また、撹拌容器や撹拌棒が汚れていると、余計な混入物質(前の乳剤、ほこり等)が混ざり、品質不良に直結します。
特に、現場では「混ぜすぎ注意」「素手撹拌」など慣習や思い込みが障害となるケースも多いです。
おすすめの撹拌方法とタイミング
・計量後、ゆっくりと2~3分かけてやさしく混ぜることが最適です。
・エアが極力入り込まないよう、流れるような動作で底から持ち上げるようにします。
・撹拌器具は必ず都度洗浄。ステンレス製やフッ素コートタイプが衛生的です。
・泡が立った場合は、10~20分静置して泡抜きします。
・混合直後の乳剤を使用せず、一晩寝かす(脱泡、安定化)のも現場では効果的です。
この“ひと手間”が、微細デザインや品質安定化、高歩留まりへの近道となります。
自動化・DX化の導入事例とヒント
近年、一部現場では「自動乳剤撹拌機」や「IoT撹拌記録装置」の活用も進み始めています。
作業履歴をデータ化すると、再現性の高い品質管理が可能です。
アナログ業界でも「誰がやっても同じ条件」「トレーサビリティ管理」というバイヤーの強い信頼確保につながります。
品質安定化のための現場改善・バイヤーが重視するポイント
現場の見える化・標準化の重要性
熟練工が感覚で作った高品質乳剤の「言語化」「数値化」が、次世代現場のカギです。
・混合比や撹拌時間の標準作業書化
・計量器の定期校正、メンテナンス
・温湿度や原料ロット変化のモニタリング
・工程ごとの簡易記録票導入
これらは、バイヤーから見たときの「安定製品の納入」「再現力ある取引先」という評価にもつながります。
サプライヤーの立場から押さえるべき観点
サプライヤーとしては、「ロット間のバラツキ」「作業員依存性」「品質記録の有無」を強く問われます。
納期順守や低コストも重要ですが、長期視点では「プロセスまで正直に、数値管理で説明できること」が信頼に直結します。
また、技術的トラブルが発生した際、混合比・撹拌状況・環境変動まで遡及検証できる体制整備が、取引継続の条件となる時代です。
今後の業界動向:アナログ現場からの脱却とデジタル活用の展望
マグカップ印刷の現場は、アナログ的な微調整や職人技が一定の必要性を持ちます。
しかし、バイヤーの目線は着実に「再現性・データ・見える化」へ移行しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化の波は緩やかでも、以下のような改善への取り組みが求められています。
・工程管理のデータ化(IoT化):撹拌記録・温湿度管理・ロット管理
・デジタルマニュアルの整備:動画・ピクト図併用で誰でも同品質
・自動撹拌装置の普及:ヒューマンエラー排除、効率改善
こうした新たなチャレンジこそが、従来型現場から抜け出し、バイヤーとの強固な信頼・選ばれるサプライヤーへの進化につながります。
まとめ:現場発の「最適化」が次代の標準をつくる
マグカップへのスクリーン印刷における感光乳剤の最適な混合比と撹拌方法・時間の管理は、小さな積み重ねの工夫によって劇的な品質向上をもたらします。
アナログ業界ゆえの“暗黙知”を「見える化」し、時にデジタルの力を借りて標準化することが、安定した製品供給・バイヤーからの信頼獲得に直結します。
「感覚」だけ頼みにせず、「数値」や「記録」「データ化」「工程見直し」の視点を持った現場改善が、激しい顧客要求や認証時代を生き抜く最大の武器です。
マグカップ印刷に携わる製造業現場やサプライヤーの皆様に、本記事が実践的かつ新たな気づきの一助となれば幸いです。
今後も現場の課題やヒント、バイヤー視点での情報発信を続けてまいります。
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