投稿日:2025年11月20日

海外製造業の購買が嫌う“理由説明の弱さ”の改善策

はじめに:なぜ「理由説明」が重要なのか?

製造業の購買現場では、国内外のサプライヤーと日々交渉を重ねています。
特に海外サプライヤーを相手にする場合、単なる価格交渉や納期調整だけでなく、「なぜ」「どうして」といった背景・理由をしっかり説明することが極めて重要です。
しかし日本の製造業では、特に昭和年代から続く文化の中で「阿吽の呼吸」や「空気を読む」ことが重視され、理由説明が疎かになるケースが少なくありません。
この“理由説明の弱さ”が、グローバル調達の現場で摩擦を生み、サプライヤーから敬遠されてしまう大きな要因となっています。

本記事では、私自身が長年海外調達・購買業務に携わって得た経験をもとに、理由説明の重要性や、改善策を現場目線でご紹介します。
バイヤーを目指す方、サプライヤー側の立場の方、そして昭和文化の名残が色濃い製造業の現状を変えたい方にとってお役に立てれば幸いです。

なぜ「理由説明」できないのか ― 日本の製造業の根深い問題

空気を読む文化と「察してほしい」姿勢

日本の製造業には、仕事の現場で「長く一緒に働いていれば伝わる」「細かく言わずとも分かってくれるはず」といった空気があります。
このため、交渉や取引条件の変更の場面でも、「そこはわかってくれるだろう」「当然これくらいは譲歩してよ」といった、曖昧な伝え方に終始しがちです。
理由を明確に示すことが「相手を疑うようで失礼」と考える方も少なくありません。

属人化、ヒエラルキー文化と情報共有不足

長年勤めているベテランが「何がどうして必要なのか」を暗黙知として持っていても、それが文書や数字、具体的な理由で周囲に伝わっていないケースが多いです。
結果、「上から言われたから」「昔からこうだから」という曖昧な動機で交渉することとなり、相手は理由が見えないまま受け身になってしまいます。

海外との常識のギャップ

欧米やアジアの製造業では、要求や条件に必ず背景や根拠を求められます。
合理性や納得性がなければ、どんな条件も承認されません。
「なぜそうなのか」「これを満たさないとどう困るのか」をはっきり言語化することは商習慣の前提です。
日本流の「忖度」は、むしろ不信や誤解を生んでしまいます。

「理由説明の弱さ」は現場でどう影響しているのか

■ サプライヤーの信頼・対等な関係構築の障害になる

サプライヤーに対して「なぜその納期で」「なぜその価格なのか」と合理的説明ができないと、要求がワガママや搾取に見えてしまうことがあります。
特に海外サプライヤーの目線では、「日本のバイヤーは一方的だ」「理由なく強引な要求を突きつけてくる」と印象づけられ、信頼関係の構築が難しくなります。

■ 円滑な品質・納期対応が難しくなる

例えば品質クレームや仕様変更依頼の際、「なぜこのスペックが必要なのか」「どの工程でどんな問題が発生したのか」を明確に根拠をもって伝えないと、サプライヤー側では適切な対応策が立てられません。
結果として本質的な改善や再発防止が進まず、トラブルや遅延を繰り返すことになります。

■ 価格交渉やコストダウン成果も薄くなる

単に「もっと安くしてほしい」「コストダウンしてほしい」と訴えても、サプライヤーにすれば「根拠不明の値引き圧力」としか映りません。
「なんのために」「どの部分で」「どんなインパクトがあるのか」を合理的に示せれば、協力関係のもとでウィンウィンのコストダウン案も引き出しやすくなります。

「理由説明の弱さ」を克服するための改善策

1. ロジカルシンキングを鍛える:根拠と背景の意識

何事も「なぜ」「どうして」を掘り下げて考える癖をつけることが大切です。
例えば、納期を短縮してほしい場面。
「どうしても顧客の要求で…」「上からの指示なので…」と伝えるだけではなく、「顧客納期から逆算し、●日までに納品されないと量産立ち上げ全体が遅延し、●●万円の損失リスクがある」というファクトや背景、数字を添えて説明しましょう。

日々の業務で5W1H(いつ、どこで、誰が、なにを、なぜ、どのように)を意識して、理由説明を鍛える訓練が効果的です。

2. データやエビデンスを用いて客観的説明を

納期、品質、コストに関する要求については、業界標準や自社基準、実際のトラブル履歴など、客観的根拠をできるだけ用いることが信頼を生みます。
例えば品質基準なら「OECD基準に則りこのスペックが必要」や、「昨年実際にこれだけのトラブルがあったので再発防止が必要」という事例があると説得力が増します。

3. 技術・現場現物主義に立脚した説明を

品質や工程改善、技術的相談では「現場」を必ず確認した上で説明することが有効です。
可能であれば現場の写真や工程図、自社の実機測定データなどを添付し、「現実にこうなっている、そのためこういう対応が不可欠」と伝えると相手も状況を把握しやすくなります。
サプライヤーと現場を一緒に見て、現物を前にして議論することで、目的・理由の共有が深まります。

4. シナリオ型・なぜなぜ分析型の説明を実践する

トラブルの再発防止やコストアップ要因の交渉では、「なぜこうしなければならないか」をシナリオに沿ってストーリーで伝えることが有効です。
また、“なぜなぜ分析”を使い、要求や課題の根本的原因(ルートコーズ)まで掘り下げると、改善策や代替案の提案にもつなげやすくなります。

5. 相手へのリスペクトと共感をもって伝える

上から目線や詰問口調では反発を招きます。
「なぜこの変更をお願いしたいのか、どこで困っているのか」など目的を素直に伝えつつ、「この条件でご協力いただければこちらも長期的な取引を約束できる」「この改善で双方の負担が軽くなる」といった相手メリットもセットで説明しましょう。

現場でできる具体的アクションプラン

■ 日頃から「理由と目的」をペアで言語化する習慣

何かを社内外に依頼する時、指示する時は必ず「なぜ必要か(理由)」「それでどうしたいか(目的)」を明確にし、書面や打ち合わせメモとして残しておきます。
これを積み重ねることで自らの思考も鍛えられ、説明力が向上します。

■ サプライヤーからの質問や意見を歓迎する姿勢

「なぜそこまで必要?」と問われたら「こっちの都合を分かってよ」ではなく、「良い質問だ」と前向きにとらえて、きちんと理由や背景を伝えましょう。
こうした積極的な対話が、信頼関係を築く要です。

■ 海外サプライヤー向けのドキュメント・メールの作成テンプレート活用

海外とのやり取りでは「要求事項」「理由・目的」「影響やリスク」「お願い」の4点セットを明確にするテンプレートを日常的に使うと有効です。
簡潔な箇条書きと、根本理由の一文を毎回添えるだけでも劇的に伝わり方が変わります。

昭和的慣習から脱却し、グローバルに通用する調達購買へ

私自身、かつては「社内指示だから価格はこれ以下にしてほしい」「とにかく納期は死守で」と、理由が曖昧な交渉を繰り返し、海外サプライヤーとの軋轢を生みだした苦い経験があります。
そこから現場視点で理由説明を意識するうちに、サプライヤーの対応が柔らかく、協力的になり、トラブルも減り、お互いにとって良い成果につながるのを何度も目の当たりにしました。

昭和から続く「阿吽の呼吸」や「空気」でつながる調達スタイルから、「目的と理由で納得・共感をベースにした交渉」へと変革を遂げること。
これは今後の日本の製造業がグローバル競争の中で生き残るための必須の条件です。

まとめ:まずは一歩踏み出してみよう

「なぜこの要求なのか」をしっかり説明するために、自分の考えを整理し、数字や現場情報を根拠とし、相手の疑問や不安まで見据えて対応する姿勢がこれからの調達購買・現場のスタンダードになります。

本質的な「理由説明の力」を身につけ、サプライヤーとの信頼と協力体制を構築することが、製造業全体の発展と自らの成長につながります。
これまでの慣習の殻を破り、ロジカルな理由説明という新たな武器を手にして、グローバルで活躍するバイヤー・サプライヤーを目指しましょう。

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