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倉庫スペースが慢性的に不足する原因が実は在庫政策にある話

目次
はじめに:なぜ倉庫スペースはいつも足りないのか?
製造業において、倉庫スペース不足の悩みはつねに現場と管理層を悩ませている大きな課題です。
どんなに倉庫を拡張しても、なぜか数年も経たずにスペースが埋まってしまい、「倉庫が足りないので棚を追加しよう」といった議論が繰り返されています。
しかし、これは本当に倉庫の物理的な広さや設備が根本原因なのでしょうか。
筆者が20年以上現場管理者・工場長として経験した結論からお伝えすると、多くの場合その根本には「在庫政策」に原因が隠されています。
本記事では、アナログ色の強い日本の製造業現場がなぜ在庫に頼りがちなのか、時代の流れとともにどのような発想転換が求められているのか、そして具体的な解決策までを実践例を交えて詳しく解説します。
昭和モデルから続く在庫至上主義とその影響
かつての「在庫は正義」だった時代背景
高度経済成長期から続く製造業の伝統的マインドとして「在庫=安心・安全」「在庫があればラインが止まらない」「材料を持っていれば売り逃がさない」という考えが深く根付いています。
これは戦後の不安定な原材料調達や、急成長する需要の波の中で、どんな突発にも備え万全を期そうとした先人たちの知恵でもありました。
確かに、リードタイムが長い、サプライヤーも少ない、または輸送インフラが十分でない時代では、一定以上の在庫保持によって安心を得ていました。それがいつの間にか「在庫至上主義」へと固着し、今なお多くの工場にその文化が残っています。
在庫が倉庫スペースを圧迫する構造
「念のため…」「念には念を入れて…」と積み上げられた在庫は、しばしば想定以上に倉庫スペースを圧迫します。
調達部門は「生産現場に迷惑をかけないように」と多めに材料を手配し、生産管理部門は「納期遅延が起きないように」と完成品在庫を多めに持ちます。
結果的に、材料、仕掛品、完成品、返品品、余剰品が倉庫に山積みとなり、いざ新規ビジネスや商品の立ち上げをしようとした際に「置き場所がない」「どうやって捌こう」と頭を悩ませることになるのです。
アナログ現場が抜け出せない理由
今なお紙の在庫帳簿やエクセル管理に頼る現場では、「どこに・何が・どれだけあるか」が把握しにくく、結果的に持っていることすら忘れた在庫も多いです。
データが最新でない場合や、現場担当者任せになっている状況では、ダブルカウントや過剰発注を生みやすくなります。
「システム化しよう」という掛け声は聞こえてくるものの、実際は十分な教育や定着活動がなされておらず、昭和のやり方が根強く残っているケースがほとんどです。
慢性的倉庫不足は「在庫政策」が生んでいる
在庫政策とは何か
在庫政策とは「どの品目を・どれくらい・どのタイミングで・どこに」持っておくかという、企業活動における基本方針です。
正しい在庫政策があれば、必要な時に必要な物を必要なだけ持つ仕組みができるため、過剰在庫や欠品リスクをコントロールすることができます。
しかし、様々な部門がそれぞれの事情で自己防衛的に在庫を積むと、企業全体では「持ちすぎ」となり倉庫スペースがじわじわ圧迫されていきます。
なぜ人は過剰在庫を許容するのか
現場担当者は「足りないと怒られる」「ラインが止まると困る」との心理から、多めにストックする傾向にあります。
またバイヤーはサプライヤーとの価格交渉やロット単位の調整が難しい時、「どうせ使うから…」とまとめ買いを選ぶことも多いのです。
こうした「属人的な最適化=会社全体の不最適化」という構図が、あちこちで進行しているのが現実です。
需要予測の精度不足と情報伝達の壁
営業が月次・週次で出す「需要予測」が現実と大きく食い違っていた場合、当然生産計画や調達計画もそのズレを吸収しきれません。
特にアナログな現場では、コミュニケーションの壁や情報連携の遅れが重なり「不安なので多めに…」という判断が横行します。
このような背景から、余剰在庫の山と常態化した倉庫スペース不足という状況に陥る現場が少なくないのです。
根本的に変えるには:これからの在庫政策への転換
現代的な在庫管理の最前線
グローバル企業や先進的な工場では、「ジャストインタイム(JIT)」や「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の導入が進んでいます。
これらは在庫の保有量を最小限にし、情報ネットワークを駆使して調達から生産・販売までのムダを減らす手法です。
センサーやIoT、WMS(倉庫管理システム)の導入によってリアルタイムで在庫を見える化し、現物と帳簿のズレをほぼゼロに抑える仕組みができつつあります。
中小・伝統的製造業における現実的なアプローチ
しかし全ての現場が最先端の技術をすぐに導入できるわけではありません。
まず大切なのは「現場の見える化」と「意識改革」です。
例えば次のような取り組みがあります。
– 週1回/月1回の“棚卸”をルーチンにして在庫の見直しを行う。
– 「最小発注単位」や「安全在庫」の設定を再評価し、必要最小限への見直しを行う。
– 現場、調達、営業などの横断的な情報共有会議を設け、需要の最新情報を共有する。
– 在庫の回転率・死蔵率などの数字をKPIとして“見える化”し、経営層へ定期報告する。
こうした地道な活動が現場の意識転換や改善文化の定着に繋がります。
発想の転換が未来を築く
「在庫は安心」の呪縛を解いて「在庫は資金拘束・コスト増大のリスク」と再定義しなければなりません。
倉庫過密が原因で“新たなビジネス機会が失われている”“不要な土地や建屋コストを増やしている”という客観的事実に正面から向き合う必要があります。
また調達や生産計画を「個人技」でなく「部門連携」で整合させ、全社最適を目指すことが今の時代に求められる姿勢です。
まとめ:在庫政策を見直した先に生まれる価値
倉庫スペース不足の本質的な原因は、「本当に持つべき在庫」を見極め、全社的な“在庫政策”を適切にマネジメントできていないことにあります。
伝統的なやり方や組織内の慣習に頼るのではなく、客観的なデータ・数字・仕組みで現場を変えていくことが不可欠です。
在庫の削減は単に省スペース・コストダウンのためだけではありません。
工場の競争力を高め、より多くのビジネスチャンスをモノにし、全社の生産性向上につながる大きな一歩です。
現場のバイヤーも、サプライヤーも、今こそ「在庫の価値」を問い直し、“倉庫スペース慢性的不足”から抜け出す新しい一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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