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ワイヤー破断が起きる典型パターン

目次
はじめに:ワイヤー破断がもたらすリスクと課題
製造業にとってワイヤーは、日々の生産活動に欠かせない重要な部品です。
クレーン、昇降機、搬送装置、そして精密機器など、多種多様な現場でワイヤーは「つなぐ」「支える」「動かす」役割を担っています。
しかし、ワイヤーの破断は時として重大な事故や納期遅延、コスト増加を引き起こします。
特に、アナログ的な感覚や昭和時代のやり方が根強く残る現場では、しばしば“経験則”や“なんとなく大丈夫”という漠然とした判断で扱われる傾向も見られます。
ここでは、ワイヤー破断が発生する典型的なパターンや、その背後にある要因、備えるべき実践ポイントについて、現場目線で掘り下げていきます。
ワイヤー破断の主な原因
1. 過負荷による断線
ワイヤーの破断原因として最も多いのが、設計許容荷重を超えた「過負荷運転」です。
たとえば、クレーンで規定以上の重量物を持ち上げる、連続して無理な角度で荷をひっぱるなど、本来のスペック以上の力がワイヤーにかかることで、内部の素線が次第に切れ、ついには全断に至ります。
現場では「これくらい大丈夫」や「過去にやったことがある」という短絡的な判断で、許容荷重を超えるケースが見受けられます。
この“なんとなく現場感覚”が、ワイヤー破断事故を招く大きな原因となっています。
2. 摩耗とサビによる強度低下
ワイヤーは動かすと必ず摩耗します。
表面の素線が何度もこすれるうちに徐々に細くなり、目視だけでは分かりにくい“五感では把握できない”強度劣化が進行します。
また、湿度変化やケミカル、洗浄液などによるサビの発生も脅威です。
日本の工場や屋外現場では、梅雨や結露、一時的な温度高低によりサビの発生リスクが極めて高く、腐食による強度低下で破断が起こります。
3. 繰返し屈曲疲労(ベンディング疲労)
ドラムや滑車を通して何度も曲げられるワイヤーは、微細な疲労が蓄積します。
いわゆる「金属疲労」と呼ばれる現象で、たとえ使用荷重や速度が適正でも、長時間にわたる繰返しの屈曲運動によって内部から素線が損傷し、破断が起こりやすくなります。
昭和の時代から続く「目視点検」だけに依存していると、こうした微妙な累積疲労に気付けないまま事故へと発展してしまうのです。
4. 不適切な巻取り・取り扱い
製造現場ではワイヤーの保管や巻き取り方法に無頓着な場合も散見されます。
ワイヤーが絡む、ねじれる、乱暴に巻き付けるといった動作が重なると、早期の素線切れや全断につながります。
また、曲げ半径が狭すぎるプーリーやドラムに無理やり通した場合も、屈曲による寿命減が加速します。
現場でありがちなワイヤー破断の「典型的パターン」
現場作業でよくあるヒューマンエラー
現場ではさまざまな制約や急な仕様変更、納期圧力のなかで作業を進めています。
その中でよくある典型的な誤りとしては以下が挙げられます。
– ピークタイムに重複作業が発生し、ワイヤー本来の用途以外に臨時利用される
– バイヤーが”コスト優先”で安価なワイヤーを選定し、十分な強度検討をしない
– 昭和方式の“感覚検査”で点検を済ませてしまい、摩耗や腐食の進行を見逃す
– 張力調整を現場任せにして、規定値をドキュメント化しないまま運用される
これらはいずれも、書類上やセオリーではNGとされながら、「現場の空気」「前例踏襲」のなかで見過ごされやすいポイントです。
“分かっているつもり”が危険!点検頻度と交換基準の形骸化
多くの現場では、定期点検と交換基準が制定されています。
しかし、「前回も大丈夫だったから今回もOKだろう」の精神で、点検項目が形骸化しやすいのも事実です。
点検担当が十分な教育・訓練を受けていない、専任制でなく持ち回りで担当させている等、現場実態に即した問題も浮かび上がります。
昭和的な「経験の伝承」に頼っているうちは、根本的なリスク低減にはつながりません。
調達・バイヤー視点での課題
バイヤーはワイヤー選定において「コスト・納期・スペック」のバランスを求められます。
しかし、安価な材料やサプライヤーとの値下げ交渉が強まるほど、品質管理部門や現場との認識ギャップが拡大し、潜在不良リスクが増します。
下請けサプライヤーはバイヤーの考える「コスト/納期優先」の裏側に潜む現場課題(摩耗速度・交換タイミングなど)になかなか目を向けられません。
実践的なワイヤー管理・破断防止法
1. フロントローディングによる設計・選定の徹底
現場トラブルの9割は、設計・仕様選定時の意思決定に端を発することが多いです。
設計時点から耐荷重、疲労寿命、使用環境(気温・湿度・化学薬品)を明確にし、メーカー・専門商社と密に連携して選定基準を策定すべきです。
安易なコスト優先や、スペック未確定のまま進行する“見切り発車”は避けましょう。
2. データベース・AI活用による傾向分析
IoT化・デジタル化が進む今だからこそ、作業記録や使用履歴をデータベース管理できる環境を整備しましょう。
摩耗度合いや破断の前兆現象(例えば引っ掛かり、引張音、振動パターン等)をAIで分析すれば、従来の“熟練者感覚”よりも早期に交換・点検タイミングを予測できます。
デジタル点検記録で属人化を防ぎ、トレーサビリティも強化できます。
3. 教育・訓練と“気付き”の仕組み作り
現場担当者への教育に力を注ぎましょう。
点検方法や判定基準に加え、「おかしい」「危なそう」と感じた際の報告ルートを設け、“気付き”を現場全体で拾い上げる文化を作ります。
点検シートや写真記録など“エビデンス主義”を徹底し、感覚の伝承からデータ重視・ルール重視へシフトすることが効果的です。
4. サプライヤーとの高度なパートナーシップ
単なる価格交渉の相手ではなく、サプライヤーを“技術パートナー”として位置付けましょう。
現場で起こった破断事例や不具合を率直にフィードバックし、次の開発や改良提案につなげてもらいます。
バイヤー目線での要求と、現場の“使いにくさ”の橋渡し役にこそ、サプライヤーの真価が問われます。
今後求められるワイヤー管理の新しい地平線
製造業はいま、大きな変革期を迎えています。
依然として現場主義・経験主義が色濃く残る一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)も急速に進みつつあります。
ワイヤー管理でも、感覚と経験にAIやセンサーを加える“ハイブリッドマネジメント”が次の常識となるでしょう。
具体的には、以下のようなイノベーションが想定されます。
– ワイヤーに埋め込んだスマートセンサーが負荷・振動・摩耗度合いをリアルタイム監視
– クラウド経由で点検タイミングや警告を自動配信
– 必要以上の早期交換や、危険な延命運用を抑制し、コストと安全性を両立
現場の“自律的・予防的”なメンテナンスが進み、ヒューマンエラーも大幅に減少できます。
昭和から続く感覚主義と、現代のDXやサプライチェーン最適化は一見対立しがちですが、両者の「いいとこ取り」を目指すのが、真の競争力アップにつながるはずです。
まとめ:現場で本当に起きていることから学び、未来を開く
ワイヤー破断は、決して特殊な事故ではなく、現場のほんのちょっとした見落としや妥協から生まれます。
昭和時代の“なんとなく”を脱し、科学的根拠を持ったマネジメント、現場教育、デジタル化、サプライヤーとのタッグ強化など、多面的な知恵と工夫がこれからの時代には不可欠です。
「常に新しい視点を持ち、過去のやり方にとらわれず、失敗や課題から本質を抽出して次に活かす」
この姿勢こそが、製造業で長く培ってきた“現場力”をさらに進化させるキーファクターになるのではないでしょうか。
ワイヤー1本の管理から未来を変える。
そんな志を持った皆さんにとって、この記事が現場変革のヒントとなれば幸いです。
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