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地方製造業で人が増えないことのしわ寄せ

目次
地方製造業で人が増えない現実、そのしわ寄せはどこに向かうのか
地方の製造業現場は、今も昭和から引き継がれる気風とアナログな手法が色濃く残る一方で、グローバル供給網やデジタルシフトの大波にも否応なく晒されています。
この中で最も深刻な悩みといえるのが「人が増えない」問題です。
少子高齢化が顕在化し、若者の流入もままならず、目先の需要変動すらこなせない現場。
そんな中で待ち受ける「しわ寄せ」は、単なる人手不足の一言で片付けられません。
今回は、地方の製造業現場が直面する、慢性的な人員不足がもたらすリスクや、今現場で起こっている事象、バイヤーやサプライヤーの視点も加味し、現実的な対策を考察します。
人口減少と若年離れが生み出す“現場の負のスパイラル”
1. 採用活動そのものが困難
地方製造業の多くは、長年“地元採用”で成り立ってきました。
しかし、人口流出や高齢化が進み、工場のある地域の学校卒業生が減少。
さらに“ものづくり離れ”で、地元を志望する若手も減り、求人を出しても応募ゼロという風景は珍しくありません。
技術職に限っていえば、高度なスキルが必要なため、採用コストはさらに高まります。
大手メーカーの下請けや中小規模工場ほど、この構造的な「人材空洞化」は深刻です。
2. 事務・管理機能の圧迫
人が増えない状況が続くと、最初に圧迫されるのは間接部門や管理部門です。
調達購買、生産管理、品質管理、それぞれが最低限のリソースで業務を回さなくてはいけなくなります。
それでも納期やコスト、品質維持のプレッシャーは変わりません。
このため、それぞれの担当者が「多能工化」へと自然に追いやられ、やがて一人の担当者に複数の役割が集中します。
工場長クラスに至っては、現場指揮から経営数値の管理、さらには緊急時の営業対応まですべてを兼務せざるを得ないケースも多くなっています。
3. 現場オペレーションの「疲弊」
人が増えない状況は、当然ながら現場オペレーションにもしわ寄せを与えます。
計画通りに人を配置できず、機械はあっても回せない、納期のために残業・休日出勤が慢性化、といった「属人的運用」頼みの毎日です。
昭和時代から培われた「なんとか手作業で乗り切る文化」が今なお生きている一方、ベテランと呼ばれる中高年層の負担が一段と膨らみます。
技術継承がなされず、負担の反動で突然ベテランが辞めてしまえば、現場が一瞬で立ち行かなくなるリスクもはらんでいます。
工場長・生産管理・調達購買…ポジションごとの“しわ寄せ実態”
現場長・工場長の苦悩
現場の顔である工場長・現場長。
人材不足の中で、日々の生産計画に対しどうすれば必要なマンパワーを集めてラインを維持するか頭を悩ませています。
また、従来であれば人員が対応していた突発的なトラブルにも直々に足を運び、リードせざるを得ません。
自動化投資の提案や改善活動の推進をしたい反面、「現場の穴埋め担当」になり、長期的視点の施策に手が回らないのが実情です。
調達購買担当のジレンマ
調達購買業務も専門人材不足の影響を大きく受けています。
本来であれば、サプライヤー選定やコスト交渉、品質トラブル対応など多岐にわたるスキルが求められる重要なポジションですが、人手が減れば減るほど「とにかく発注・納期対応さえ追いつけば良し」となりがちです。
情報収集や市場分析、長期契約の見直しやコストダウン活動といった戦略的業務は後回しになり、結果としてリスクを先送りする構造となります。
この状況は、バイヤーを目指す方や、サプライヤー側でバイヤー担当の“内情”を理解したい方には、極めて重要な示唆となるはずです。
品質管理部門の苦境
人員不足の現場で、品質管理もまた多くの負担を背負う部門です。
検査や工程監査、顧客クレーム対応など膨大な業務量が集中し、ヒューマンエラーや見落としリスクも増加します。
また、品質向上や標準化活動、ISO・顧客監査への対応も手薄になりやすく、必然的にクレームや再発防止策まで遅れが生じます。
このような状況が続けば、顧客信頼の失墜や新規案件の失注にも直結しかねません。
人が増えない業界構造を生み出す昭和的“人材観”
終身雇用的マインドの限界
地方製造業では「一度採用すれば何十年も勤め上げてもらう」という昭和的な人材観が根強く残っています。
しかし、このマインドが新たな採用・人材流動化の阻害要因となり、「即戦力を外部から呼ぶ」柔軟な発想が生まれにくいのも事実です。
また、実際の職場ではOJT偏重で暗黙知に依存、技術・ノウハウの体系化も遅れていたりします。
このため、若手のチャレンジが受け入れられにくく、職場の閉塞感が募れば余計に新卒や中途が定着しないという悪循環が生み出されます。
“属人化”による現場ブラックボックス化
人員が増えず、既存人材の「暗黙知」に頼る文化が続くことで、業務がブラックボックス化しやすくなります。
特定のベテラン社員しかできない工程、当人頼みで改善の芽がでないライン、そうした属人化は品質や効率の停滞ももたらします。
また、万が一、そのキーパーソンが離職や病気などで抜けた場合に大混乱が起きるため、現場は“守り”の姿勢をより強化せざるを得ません。
バイヤー/サプライヤーが知るべき「しわ寄せ」の本質
バイヤーが知るべき「現場リソース事情」
調達側に求められるのは、単なる価格・納期交渉を超え、サプライヤーの現場実態―とくにリソース不足や人手不足から来るリスク要因―にきちんと目を向けることです。
ムリなリードタイム・厳しいコスト要求が継続すれば、現場は疲弊し品質事故や納期遅延につながります。
また、“協働型パートナーシップ”を築けるか否かが、今後のサプライチェーン戦略で大きな差別化ポイントとなるはずです。
サプライヤー目線でのセルフディフェンス
サプライヤー自身も「しわ寄せ」を受け止めつつ、過度な属人化からの脱却や、デジタルツールによる効率化、また外部リソース(派遣、業務委託など)活用など、時代の変化に合わせた業務アプローチが不可欠です。
また、バイヤーとの関係においても「現場の実態」を可視化し、納期や価格交渉で一方的な無理を強いられないためのエビデンスづくりが重要になります。
さらに、サプライヤー同士の協業や、業界横断でのベストプラクティスの共有が業界全体の底上げにつながります。
脱・しわ寄せ現場のために今こそ試すべきアプローチ
自動化・DXの現場主導展開
もう「自動化」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は待ったなしです。
地方製造業であっても、装置化やセンサー活用、計画管理のデジタル化はもはや必須。
小規模でも“できることから始める”ことが重要で、たとえば、
– 日報や工程管理をクラウド化する
– IoTセンサーで見える化を促進する
– 過去ナレッジや不良対策を動画やデータベースで保存・活用する
など、コストを抑えた導入例は数多く存在します。
経営層だけでなく現場を巻き込んで進めば、現場の「自分ごと化」も進みやすくなります。
業務分担・多能工化と外部リソース活用
もはや“一人一工程”には限界があります。
多能工の導入(OJTではなく仕組み化)、業務分担の細分化や一部業務のアウトソーシングは、現場の燃え尽きリスクを減らします。
また、派遣社員や契約社員、定年後再雇用など多様な人材を活かす運用の柔軟性も問われます。
人“を”増やすのではなく、人“で”増やす仕組みへ
「人が集まらない」と嘆くのではなく、「今いる人がパフォーマンスを最大化できる環境」にシフトする発想転換が必要です。
ITを活用した標準化や、ボトムアップ文化、インセンティブの付与など、現場に寄り添った改革が鍵になります。
また、若者や女性、外国人も含めた“多様な人材”に門戸を開く企業姿勢や、働きやすさ・やりがいの可視化も、採用競争力を上げるポイントです。
まとめ:製造現場は“人が増えない”を前提とした新常態へ
これからの地方製造業では、「人が増えない」現実を前提とした業務設計・現場改革が欠かせません。
しわ寄せは必ずどこかに現れますが、それを「現場の我慢」で乗り切る発想は終焉を迎えています。
現場主導のデジタル化、業務設計の柔軟化、多様な人材活用、バイヤーとサプライヤーの健全な関係構築――
失敗や混乱もあるでしょうが、新しい地平線を開拓するのは、昭和型の“我慢文化”を脱する一歩からです。
現場の知恵と技術を武器に、地方から日本の製造業の変革を共に目指しましょう。
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