投稿日:2026年1月1日

売上があるのに将来計画が描けない理由

売上があるのに将来計画が描けない理由

はじめに:なぜ「売上があるのに不安」が生まれるのか

製造業の現場で20年以上、購買や生産管理、品質管理、そして現場マネジメントに携わってきた私の目から見て、「毎年一定の売上があるのに、将来の見通しがなぜか描きにくい」という悩みは、決して珍しいものではありません。

バイヤー、サプライヤー、あるいは経営層と幅広く接してきた中で、業界特有の「昭和的な」安定志向、属人化した判断、そして変化を嫌う文化もまた、その根底にあると痛感しています。

本記事では、なぜ安定した売上があっても製造業の現場で「未来が見えない」のか?
その構造的な理由、課題、そして脱却へのヒントを、ラテラルシンキングも交えて深堀りしていきます。

1. 売上の「安定」と「安心」は必ずしも一致しない

売上高が前年並み、あるいは微増。
一見すると企業の健康状態は良好に思えます。

しかし、数字の追跡だけで本当に安心している製造現場はありません。
なぜでしょうか?

それは、売上高が「過去の積み上げ」で構成されている構造にあります。

多くの日本の製造業は、長年の得意先との信頼関係や既存製品を安定供給するという「守り」のビジネスを主軸に展開してきました。
そのため、下請け構造やヒエラルキーが固定化し、「新規事業や新市場への挑戦」が二の次になりがちです。

「今は大丈夫だけど…」という将来不安の正体は、土台となるビジネスモデルが次世代(新規性、成長性)へ対応できていないことに端を発しています。

2. 計画が描けない理由は「属人化」と「見える化不足」

現場で将来的な計画を立てようにも、「○○部長の経験値」や「△△さんの勘」に頼る場面は依然多いのが実状です。

これは、デジタル化や自動化の流れが進む現代においても、実は根強く残る「昭和的な現場力」の名残りです。

属人化の弊害としては以下があげられます。

  • 知見や意思決定が一部のベテラン層に依存し、新任者や若手にノウハウが伝承されづらい
  • 判断基準や競争力の源泉がブラックボックス化し、外部変化への対応力が低い
  • 全社的な戦略に基づいた設備投資・新製品開発・原価低減などのテーマ設定が遅れる

ひとたび環境変化が起きた際、「データがない」「次の打ち手がわからない」ために、事業計画が立案できなくなる。
これが、売上があるのに将来計画が描けない根本要因となっています。

3. サプライチェーン変化に「追いつけない」現実

グローバル化、市場の縮小、価格競争、調達リスク…。
製造業を取り巻く外部環境はここ10年で劇的に変化しました。

バイヤー(調達担当)が最も重視するのは「安定供給」と「コスト」ですが、サプライヤー側はその要求に対して「過去の信頼」に頼りがちです。

そのため、

  • 業界再編や顧客側の事業撤退で突如売上基盤が崩れる
  • コスト低減圧力や値下げ要請に柔軟に対応できない
  • 納期・品質・対応力で後発サプライヤーに追い抜かれる

といった出来事が年々増えています。

サプライヤーとしてバイヤーの志向=「どんなサプライチェーン像を描きたいか」まで知り、自社の強みを再定義しない限り、同じ「売上」を維持しているつもりでも水面下で「座礁」が始まっていることも少なくありません。

4. 「昭和モデル」の限界と真の問題点

ではなぜ多くの製造現場は「古いやり方」から脱却できないのでしょうか?

製造業は職人気質や現場主義が根付きやすく、「変えること」に対して慎重になりやすい傾向にあります。
実際に、

  • IT投資や自動化が経営判断でストップされる
  • 生産性向上のKPIが形骸化している
  • 見える化ツールが紙文化に埋もれる

こうしたケースを多々見てきました。

背景には、

  • 既存顧客や販路を失うリスクを避けたい心理
  • ベテラン層のポジション低下や業務切り替えへの抵抗
  • 変革の「旗振り役」がいない(属人化からの脱却が進まない)

など人間の「心の壁」も大きく作用しています。

しかし、古い体制や慣習の安全弁に頼り切ることこそが、実は最大の「不安の温床」であることを、現場感覚として改めて伝えたいと考えています。

5. 将来計画を描くためのラテラルシンキング的処方箋

「売上=今」を守りつつ、10年後・20年後の「新たな成長」を描くヒントは、ラテラルシンキング、つまり“横断的な発想”にあります。

  • 「手持ちの資産(技術・顧客基盤・人財)」を製品以外のサービス展開に応用できないか?
  • 自社の工程・設備・データを「他社にシェアしてもらう」ことで新たな価値を創出できないか?
  • バイヤーやサプライヤーと「共創」型の事業を始めてみるチャレンジ精神はないか?

これらは決して夢物語ではありません。
実際、多くのメーカーでリバースエンジニアリング、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、「工場のショールーム化」など、多彩な“発想の転換”による新規収益創出プロジェクトが生まれています。

将来計画の第一歩は、現場発のイノベーションを受け入れる「余白」を経営がつくること、そして現場が安心して新しいことに挑戦できる仕組み作りが不可欠です。

6. 実践的なステップ—現場で明日から始められること

最後に、これまでの内容を踏まえて「売上はあるが、将来計画を描けない」状況を打破するための具体的なアクションをいくつか紹介します。

  1. 現場起点での「業務の見える化」を徹底し、意思決定のパターンや工程を可視化する
  2. 若手や中堅、人材の多様な意見を吸い上げるため、意見交換の場を定期的に設ける
  3. 事例研究と失敗例の共有会を開き、変化に対する心理的ハードルを下げる
  4. サプライヤー、バイヤーの立場交換ワークショップを開催し、相互理解を深める
  5. 中期計画(3~5年)を“仮説駆動”で立て、人事ローテーションや技能の見直しも含めてPDCAサイクルを強化する

もちろん、いきなりすべてを実行することは簡単ではありません。
しかし「対話」と「現状の客観的見直し」から始めれば、必ず何かしらの気付きが得られるはずです。

まとめ:安定の中の「見えない危機」をチャンスに

「売上があるのに将来計画が描けない」という現象は、多くの日本の製造業が抱える構造的なものであり、昭和から続く安心感の裏に“変化の停滞”があります。

しかし、激しい環境変化の今こそ、現場・現実・現物に根ざしたラテラル発想と、小さくても新しい一歩を踏み出す勇気が求められています。

私自身が長年現場で痛感してきたのは、「変えないリスク」こそが最大のリスクであるという事実です。

明日へのヒントは、今日、あなたの目の前の“慣れきった日常”の中に必ずあります。
ぜひ今だからこそ、対話と行動から新しい計画作りに挑戦してみてください。

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