摩耗故障と危険側故障

はじめに

製造業の現場で機械や設備を扱う際に避けて通れないのが故障という問題です。
そして、その故障の種類の一つに「摩耗故障」と「危険側故障」という概念があります。
これらは機器の保守管理や予防保全を行う上で重要な役割を果たすため、製造業に従事する方はぜひ理解を深めておきたい部分です。

摩耗故障とは

摩耗故障は、機械や部品の材料が長期間使用することにより徐々に摩耗し、最終的に機能を損なう状態になる故障のことを指します。
例えば、歯車やベアリングなどが長時間の使用によってすり減って故障する場合があります。
このような故障は、使用時間や使用条件に比例して進行するため、予測可能であり、定期的なメンテナンスによってある程度防ぐことができます。

摩耗故障の特徴

摩耗故障の特徴として挙げられるのは、その予測可能性です。
摩耗による故障は、使用期間や使用条件（荷重、速度、環境など）の影響を受けて進行するため、適切な条件設定と定期的な点検やメンテナンスによって事前に対応することが可能です。
また、摩耗故障は通常、使用の初期段階ではほとんど発生せず、使用期間が長くなるに連れて徐々に発生頻度が高まるという特性も持っています。

危険側故障とは

一方、危険側故障は、機器の突然の機能不全や予測不能なトラブルを引き起こす可能性のある故障です。
多くの場合、設計上の欠陥や製造上の不具合、不慮の事故などによって引き起こされます。
危険側故障は予測が難しく、発生すると即座に生産ライン全体に大きな影響を及ぼす可能性があるため、事前にリスク評価を行い緊急対応策を立てておくことが重要です。

危険側故障の特徴

危険側故障の特徴としては、その突然性と予測の難しさが挙げられます。
発生が突然であるため、通常のメンテナンスだけでは予防が難しく、またその影響度も非常に大きい場合があります。
従って、危険側故障に備えて、緊急時の対応計画やリスクマネジメントの重要性が増します。
具体的な対策としては、設計段階での安全性評価、リダンダンシー設計、定期的な点検の中でのリスク検証などが考えられます。

摩耗故障と危険側故障の違い

摩耗故障と危険側故障は、その性質や原因において根本的に異なります。
摩耗故障は物理的な摩耗によって時間の経過と共に進行するため、定期的なチェックやメンテナンスで管理が可能です。
一方、危険側故障は突然発生するものであり、その原因が設計や外部要因による場合が多く、事前予測が難しいことからリスクマネジメントが重要となります。

故障予防と保守管理の重要性

製造現場においては、これらの故障を予防するための取り組みが必要不可欠です。
従業員の安全確保や生産性の向上、コスト削減のためにも、計画的な保守管理が不可欠です。
摩耗故障に対しては予定されたメンテナンス、危険側故障に対してはリスクアセスメントと早期対応計画が鍵となります。

PCM（予防保全）の導入

PCM（予防保全）は、摩耗や劣化による故障を未然に防ぐための手法です。
製造設備の耐久性や使用条件を踏まえた上で、定期的な点検・部品交換を行い、故障リスクを最小限に抑えることを目的としています。

DR（デザインレビュー）の活用

特に危険側故障に対しては、設計段階でのデザインレビューが効果的です。
機械設備の設計を複数人でレビューし、安全性や信頼性を確保することで、潜在的な危険を早期に発見、対策することが可能です。

まとめ

摩耗故障と危険側故障は、製造業における機器管理の中でも重要なテーマです。
それぞれの特性を理解し、適切な予防保全策を講じることが、安定的で高効率な生産活動の維持に繋がります。
製造現場における安全性と生産性の向上のために、日々の管理活動を怠らず、業界動向も踏まえながら最新の知識を取り入れていくことが重要です。