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陶器マグの製版で印刷再現性を高めるための高精細メッシュと露光プロファイル

目次
はじめに:陶器マグ製版の課題と重要性
陶器マグカップは、ノベルティや販促品のみならず、カフェやレストラン、そしてECブランドでも「個性」の演出に欠かせない存在です。
その表面に印刷されるロゴやグラフィックは、企業やブランドの「顔」ともいえます。
しかし、陶器は非常に表面が滑らかな素材でありながら、曲面や微細な凹凸もあるため、印刷の再現性を安定して確保するのは決して容易ではありません。
特に多色・微細表現が求められるデザイン再現には、昔ながらの製版技術だけでは限界があります。
製造現場では「なぜこの仕上がりにならないのか」「色ムラや版ズレが頻発するのはなぜか」といった声が絶えません。
本記事では、20年以上の現場経験と管理職としての視点から、「高精細メッシュ」と「露光プロファイル」に焦点をあて、陶器マグ印刷の再現性向上について解説します。
陶器マグ印刷の基礎:工程と従来の問題点
スクリーン印刷製版の全体フロー
陶器マグの印刷には、パッド印刷や昇華印刷、最近はインクジェットもありますが、大ロット・高耐久・コストメリットを両立するには、依然としてスクリーン印刷が主流です。
その流れは大まかに以下の通りです。
1. デザインデータ作成・分解
2. フィルム出力
3. メッシュ枠への感光乳剤コート
4. 陽画(露光)によるパターン転写
5. インク盛りと印刷
この一連の中で、最も再現性と仕上がりの品質を左右するのが「製版」、つまりフィルムからメッシュ(版)への像転写部分です。
従来は200〜250メッシュ程度の汎用的なものが多く使用されてきました。
現場で起きやすい不具合
– 印刷時のインク抜け、カスレ
– 細かな線やハーフトーンのつぶれ・太り
– 多色刷りでの色ズレ・重ね刷りの滲み
これらの問題は最終的な商品価値に直結し、「次の受注が来なくなる」リスクとも隣り合わせです。
高精細メッシュ:なぜ今必要なのか
顧客・バイヤーの目線で高まる要求
現在、大手ブランドやOEMバイヤーでは「微細なデザイン再現」への要求が高まっています。
Adobeなどのグラフィックツール普及により、入稿データも年々「繊細・高解像度」になっています。
その一方で、製版現場が昭和のアナログ管理から脱却できず、「致命的な解像度ギャップ」を招いているケースは珍しくありません。
高精細メッシュとは?
高精細メッシュとは、一本あたりの糸密度が300〜420メッシュ(目)という、極めて細かい網目を持つ版材です。
これにより次のような効果を実現できます。
– 繊細なラインやドット表現の再現
– グラデーションやハイライト部の表現力向上
– インクの適正転写によるムラ・にじみ低減
原理としては「転写するインクの量」と「像のエッジ」のコントロール性が格段に上がるため、グラフィックが意図通りなめらかに出力できるのです。
導入の現場的ハードル
しかし、高精細メッシュの運用はそれ自体「一朝一夕でマスターできる」ものではありません。
– インク粘度調整がシビアになる
– 版洗浄やメンテナンス頻度が増す
– 製版コストが一時的に上がる
現場全体の意識とスキルアップ、管理工程の最適化(後述)が必要となります。
露光プロファイル:美しい再現の鍵
露光プロファイルとは何か?
スクリーン印刷における「露光プロファイル」とは、感光乳剤に紫外線を一定時間あてて固化パターンを転写する工程のことです。
このとき、
– UV光源の種類(波長・強度)
– 露光時間
– 乳剤の厚みや性質
– 原反(メッシュ)の色や材質
など様々なファクターが印刷精度に大きな影響を与えます。
再現性に効く露光管理の実践ポイント
– 適正な露光時間の設定には「段階露光テスト」が有効
– 長すぎるとエッジが甘くなり、短すぎるとインク漏れが発生する
– 乳剤の膜厚を厳密に管理(デジタル膜厚計の導入がおすすめ)
– UV強度を定期的にキャリブレーション
– 作業場の温湿度管理も忘れず徹底
昭和時代の「勘と経験」から、一歩踏み込んでデジタルな露光管理と実測・記録を徹底することで、「同じ条件で誰がやっても、同じ品質」が担保できるようになります。
事例で考える:現場課題と改善手順
現場でよくあるQ&A
Q. 高精細メッシュに替えたのに印刷が改善しないのはなぜ?
A. メッシュだけでなく、乳剤の選定/インクとの相性/露光条件/印刷機の設定まで総合的な最適化が必要です。
小規模ロットのテストランと段階環境設定努力が不可欠です。
Q. 抜け・滲みが減らない場合は?
A. 粘度や温湿度、版洗浄回数、刃(スキージー)ストローク調整など細部条件をひとつずつ潰すことがポイントです。
乳剤の経時劣化や、光源の紫外線劣化チェックも忘れずに。
Q. 量産時の「個体差」が問題になるのは?
A. 一元化・標準化プロセス(SOPのマニュアル化、日報・サンプル記録、製版担当を固定せずローテーション)で、属人化から脱却します。
現場管理職だからできる“再現性改善”の実践アクション
– QC7つ道具を活用して製版起因不良を定量的に管理
– 改善PDCAを週次単位で数字ベースで回す
– バイヤーの立場から「現物(色見本)提出」「再現確認テスト」体制をつくる
現場の改善アクション例としては、
– 製版ルームのクリーン度を高める(エアシャワー導入、帳票管理)
– 仕入先を巻き込んだ「メッシュ・乳剤共同開発」への投資
– 定期的な技能トレーニングと工程監査
これにより、ムラや不安定要素の「見える化」「ナレッジ共有」が現場標準となり、長期で安定した品質が実現します。
業界トレンド:アナログから脱却する変革の波
昭和時代から続く「ベテランの勘と度胸」だけに頼ったオペレーションは、デジタル×データ管理により大きな転換点を迎えています。
特に昨今では、
– 海外サプライヤーとの共同案件が増加(グローバル標準への適応)
– OEMバイヤーやエンドユーザーからの「根拠ある品質担保」要求
– 社内カイゼン活動(自動化/省人化)
など、現場と経営が一体となった「再現性革命」が求められています。
陶器マグのような「見た目が全て」の商品だからこそ、その印刷工程を徹底して磨き上げることで、大手ブランド案件や新規顧客の信頼を勝ち取るチャンスになります。
まとめ:現場と管理が一体になって再現性を高める
陶器マグ印刷の製版工程における“美しいグラフィック再現性”の鍵は、高精細メッシュの活用と、露光プロファイル最適化による「安定した再現性の仕組み化」にあります。
– 顧客・バイヤーの立場からも納得できる「理論的な管理」の導入
– 現場作業員の技能と工程標準のバランス
– そして昭和流の属人技術から組織力・デジタル管理への転換
これらを推進することで、小さな町工場でも国際競争力を持つ「ジャパン・クオリティ」を実現できます。
今後も現場目線のナレッジや、具体的なカイゼン施策を積極的に共有し、製造業の発展と業界全体の底上げにつなげていきましょう。
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