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地方企業が自社ブランドを立ち上げるときに避けるべき“内輪感”の罠

地方企業が自社ブランドを立ち上げるときに避けるべき“内輪感”の罠
はじめに ― 地方企業の挑戦が加速する今
近年、地方の中小製造業が自社ブランドを立ち上げる事例は全国各地で増えています。
人手不足や取引先依存の経営リスク、また“地元で選ばれる存在”を目指す意識の高まりが起点となっています。
しかし、現場で長年働いている方や、ひたむきに品質や技術を磨いてきた方ほど「うちはこのやり方でやってきた」「昔からの得意先に通用すれば十分」という、いわば“内輪感”に陥りがちです。
この“内輪感”は、ブランド化・商品開発における最大の落とし穴のひとつです。
この記事では、現役の製造業プロとしての視点から「内輪感の罠」について解説し、現場目線かつ具体的な打開策を探ります。
“内輪感”とは何か? その本質と構造
そもそも内輪感とは何でしょうか。
それは、“自社(もしくは限られたコミュニティ)の常識や価値観が、世間の常識や顧客の価値観とズレたままで進化・発展していない状態”を指します。
昭和時代から続く製造業の現場では、この現象がしばしば見受けられます。
– 既存取引先の反応ばかりを気にしている
– 過去の成功体験や慣習が最優先される
– 製品の仕様やデザインが現場都合になっている
– 社長や幹部の「勘」による意思決定
– “うちの地元なら大丈夫”という根拠なき安心感
以上のような状況では商品企画もブランディングも現代社会に適合しません。
大都市の感覚や新しい顧客層に選ばれることは難しく、せっかくの新ブランドも埋もれてしまいます。
ブランド立ち上げでよくある内輪的失敗例
私の経験上、地方メーカーが新ブランド展開に失敗する多くの“あるある”は、驚くほど共通しています。
一例を紹介します。
– 地元の人(社長の親戚や常連客)ばかりをターゲットにした商品づくり
– 「この設備で作れるもの」という“現場都合”で商品を設計
– ネーミングやパッケージにも地域の方言・ローカル色を過剰に盛り込む
– 展示会やネット通販の口コミ欄に社員や関係者しか書き込んでいない
– “昔ながら”の営業スタイルをインターネットに持ち込む
– 外部からの率直なフィードバックを受け入れない
このような状況では、「新しい価値」や「外のマーケットに向けた挑戦」はほとんど起きません。
結果的に“身内”だけで盛り上がるだけに留まり、市場での成功からは遠ざかります。
内輪感を打破し、次のステージに踏み出すには
それでは、どうすればこの厄介な“内輪感”を突破できるのでしょうか。
20年以上製造現場で鍛えられた私の視点から、いくつかの打ち手をご紹介します。
1. 顧客像を「いちばん遠く」に設定する
内輪感の極みは“顧客があいまい”なままプロジェクトが進むことです。
本当に売りたい顧客像を明確にし、「地元の昔からの取引先」ではなく「最も自社から遠い存在」に設定してみてください。
例えば、「都市圏の30代共働き夫婦」「海外のデザイナー」「DXに敏感な購買担当」など、今まで接点のなかった層を徹底的にイメージし、その生活や価値観に寄り添った情報収集・商品設計を心がけましょう。
2. 内部の常識だけでなく、外部アドバイザーを活用する
社内だけでブレストし、意思決定が“古株”の感覚に偏ることは非常に危険です。
積極的に外部の専門家、デザイナー、バイヤー経験者、他業界のプロの意見を取り入れましょう。
その際、特に「自分たちのモノサシでは測れない価値基準」を受け入れる寛容さが大切になります。
自社の歴史や文化に誇りを持ちつつ、「お客様の声」と徹底的に向き合う姿勢がブランド成功の鍵を握ります。
3. 現場主義から「顧客主義」へのマインドセット転換
“現場で生き残ること=顧客に選ばれること”という意識改革は、組織内で最も重要な変化です。
現場での工夫や手間は尊いものですが、それが固定観念となり「うちのやり方」で顧客体験が損なわれていないか、ゼロベースで疑う視点を持ち続けましょう。
製造側の論理・言い分が通用した昭和の人口増時代と違い、今は「バイヤー視点」「顧客視点」なしでは商品は選ばれません。
現場社員の声を吸い上げつつも、最終的な意思決定は“誰(どこ)の、どんなニーズのためなのか”を常に再確認してください。
4. デジタル活用と“見える化”で外部との接点を高速化
地方メーカーにありがちな「展示会→営業訪問→口コミ待ち」だけでなく、SNS、クラウドファンディング、YouTubeなどデジタル活用も大きな武器になります。
– 短期間で外部評価を得やすい
– 全国・世界からフィードバックがもらえる
– “自己満足”な開発になりにくい
こうしたツールを駆使することで、“内輪感”から抜け出しやすくなります。
「答えは現場に落ちている」だけでなく、「答えはお客様や社会に落ちている」ことを実感できるはずです。
5. サプライヤーも“バイヤー目線”を徹底的に学ぶ
最後に、サプライヤーの立場からも大切な視点を提案します。
新ブランドを立ち上げたい場合、製品を納める相手が“自社製品をバイヤーとして選ぶとき、どんな視点で比較・選考しているのか”を本気で学ぶことです。
– 取引先バイヤーの意思決定プロセス
– プレゼン資料に必要な客観的データ、ストーリー構成
– 価格以外の「選ばれる理由」や新規取引基準
こうした目線は、バイヤー経験者の講習や専門誌、あるいは新規事業を成功させた事例などから学ぶことができます。
会社の外側を「敵」とみなすのではなく、「バイヤー目線=お客様の目線」と受け取りなおすことが、内輪感ブレイクスルーの近道となります。
まとめ ― 内輪感から抜け出し、新しい価値共創へ
地方企業が自社ブランドを育て、現代の製造業で飛躍するには「内輪感」という無意識の壁を打ち破る勇気と知恵が欠かせません。
– 顧客像を遠くに設定する
– 外部の声(プロフェッショナル)を活用する
– 現場主義から顧客主義に変わる
– デジタルで即時にフィードバックを得る
– サプライヤーもバイヤー目線を徹底する
これらを現場にしっかり落とし込み、地に足をつけてトライ&エラーする。
その積み重ねこそが“地方発 世界ブランド”への一歩となるはずです。
現場で汗をかき続けてきた皆さんこそが、最も説得力のあるブランドづくりの主役です。
“内輪感”を恐れず、一歩を踏み出しましょう。
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