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OEMアウターで成功するためのプロダクトストーリーデザインの構築法

目次
はじめに ~なぜ「プロダクトストーリーデザイン」がOEMアウター成功の鍵になるのか~
製造業の世界では日々、技術革新や自動化が進む一方で、「なぜこの製品が今、作られるのか」という根本的な問いが疎かにされがちです。
特にOEM(Original Equipment Manufacturer)によるアウター生産の現場では、下請けのタスクに終始しがちで、「売れる」製品や差別化された製品づくりの本質に迫ることが難しい現実があります。
本記事では、OEMアウター事業で成功するための「プロダクトストーリーデザイン」の構築法について、20年以上の現場経験を活かし、実務の目線から深く掘り下げていきます。
OEMアウター市場の現状と課題
OEMアウター市場の拡大と成熟化
ファッション業界のグローバル化とともに、OEMによるアウター生産は多様なブランドからの発注が増加し、拡大の一途を辿りました。
しかし近年はコスト競争に拍車が掛かり、単なる「安価で大量生産できる工場」の価値が相対的に下がっています。
発注元バイヤーが真に求めているものとは
バイヤーは「ただ安く・それなりに作れる」外注先ではなく、「ブランドのコンセプトを理解し、消費者心理を動かすストーリーを製品で表現できる」パートナーを求め始めています。
価格競争のレッドオーシャンから脱却し、選ばれる工場になるには「プロダクトストーリーデザイン」が欠かせません。
プロダクトストーリーデザインとは何か
単なるプロダクトアウトでは生き残れない理由
「良い素材を使いました」「縫製が高品質です」。
もちろん基礎力は重要ですが、それだけではコモディティ化を避けられません。
消費者は日常的に無数の商品を見ていて、すべてを価格やスペックで選んではいません。
ストーリーが「売れ筋」をつくる仕組み
「どうしてこのダウンジャケットにはこのキルティングが使われているのか」
「なぜこのポケットがここに?それは、山歩きをするお客様の体験から生まれたのです」
こうした”背景”がある製品は、売り手である小売やバイヤーも自信を持って薦めることができ、消費者にもリーチしやすくなります。
プロダクトストーリーデザインとは、
技術・生産の視点+マーケットのニーズ+ブランドが大切にする思想
これらが交錯する「強い物語」を持った商品づくりのことです。
プロダクトストーリーデザインのステップ
1. ブランド理念と市場調査の“融合”
本当に売上に繋がるストーリーとは、机上で考えた理屈でなく、市場や現場の生の声から生まれます。
OEMとして求められるのは
・ブランドバイヤーへのヒアリングで核となる思想や課題を聞き出す力
・同業他社や先進ブランドのリサーチ
・自分たち(工場・サプライヤー)にしか実現できない現場技術や強みの洗い出し
これらを掛け合わせ、より説得力のある「なぜこのアウターが必要か」を言語化します。
2. 消費者起点の”生活者ストーリー”を練り上げる
例えば通勤用コートならば、混雑した改札での動きやすさ・スマホ収納の便利さなど、具体的なユーザーシーンを設定します。
現場経験を生かすなら
「こういう用途ならこの素材はどうだろう」
「絶対ここに隠しポケットはあったほうがいい」
というリアルな会話が設計段階から生まれるようにします。
3. 複数セクション(調達・生産・品質管理)一体での試作検証
案をカタチにする段階では、調達(資材の入手難度やコスト)、生産現場(ラインの対応力)、品質管理(歩留まりや耐久試験)を巻き込むことが大切です。
従来型の縦割り発想ではなく、ラテラルシンキングで意見を交差させ、ストーリー軸に即して「本当に消費者とブランドが喜ぶポイントはどこなのか」を見極めていきます。
4. 商談・提案で生きる「プロダクトストーリー化」
最終的に、OEMの立場でもバイヤーとの会話や商談・プレゼン資料には「この商品の背景」「どんな悩みや課題から生まれたか」を示します。
昭和的な「ただ作ります」という姿勢から、「こういう価値を提案できます、だからこのコストになる」と堂々と説明・提案することで、受注率・信頼ともに大きな差が生まれます。
“売れる”OEMアウターの事例研究
成功例:アウトドアブランドのファンクションジャケット
A社は、40年続く縫製工場からOEMアウター事業へ転換。
バイヤーの「アウトドアファンが週末街でも着られるブルゾンがほしい」という声をヒントに、
以下のようなプロセスでヒット商品を生みました。
1. ブランドの都市×アウトドアというテーマを徹底理解。コンセプトを「ON/OFF切り替え可能ジャケット」に決定。
2. 街着としてのスマートさと、汗抜けする裏地・隠しファスナーなど現場発のソリューションをデザイン。
3. 試作時には実際に購買層となる営業パーソンやトレッキング愛好者にヒアリングして微調整。
4. 提案時に「このアイデアは、現場で何百着ものジャケットを手掛けてきた現場リーダーの“こういうのが欲しい”から生まれました」とストーリーを語ったことで、受注獲得。
結果、競合他社との差別化に成功し、OEMとしてブランドと深いパートナー関係を築くに至りました。
失敗例:仕様書依存型OEMからの脱却に失敗
一方で、「言われたことをそのままやる」従来型OEMの現場は、ブランドやバイヤーからの信頼を徐々に失いつつあります。
どれだけ品質が高くても「このスペックなら中国や東南アジアで十分…」と流され、残念ながら国内生産の現場が空洞化してしまう事例も多く見受けられます。
アナログ業界の昭和的慣習と“抜け出すべき壁”
現在も現場では、定例会議で「先月と同じで大丈夫だね」と進むケースや、「失敗したことは隠そう」という慣習が根強く残っています。
OEMの現場発想がストップしてしまうのは、こうした“横並び安心文化”と“情報の壁”がもたらしています。
ここで踏み出せるOEMこそ、プロダクトストーリーデザイン時代の勝ち組になれます。
・QC(品質管理)やIE(生産技術)の人材も積極参加させる
・バイヤー参加の現場見学会や、ストーリーマッピングのワークショップ開催
・現場リーダーにも「お客様にこう使って欲しい。この機能が“お守り”になる」という意識を持たせる
こうした一歩が、今後の競争力の源泉となります。
廃れない“現場感覚”が価値となる時代へ
海外の低コスト生産が進むなかでも、日本の現場には「微差」にこだわる目と、使い手を思う“仕事観”が脈々と流れています。
・10回洗濯しても型崩れしない
・ジッパーの開閉触感にまで工夫を盛り込む
・真夏の試着で「本当に涼しいか」を汗だくで検証する
自動化やデジタル化に頼るだけでは伝わりにくい、こうした“現場の感性”をプロダクトストーリーとしてどう表現し、バイヤーと連携するかが問われています。
おわりに ~OEMアウターの未来は「物語」にあり~
これからのOEMアウター開発は、単なる受注生産・コスト競争でなく、
「どんなストーリーを生み、その価値をどう伝え、共感を獲得するか」の勝負となります。
調達・品質管理・生産管理など、昭和時代から連綿と繋がる現場知見をベースに、バイヤーや消費者と“物語”で深く結びつけることが、これからの製造業のウェルビーイングにも繋がると信じています。
今こそ全員で現場の声と技術、「本当にいいものを生み出す力」に誇りを持ち、ストーリーのあるOEMアウター開発で新たな地平を切り拓いていきましょう。
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