投稿日:2025年12月29日

製造設備のボイラーで使う保守用工具掛け部材の製作と現場改善効果

はじめに

製造業の現場において、設備の稼働率と生産性を高めるためには、日常的な保守点検が欠かせません。
特に、ボイラー設備のような基幹機器は、定期的な点検・整備が安全の確保とトラブル未然防止の要となります。
しかし現場では、工具や点検用備品の管理が煩雑であるがゆえに、作業効率の低下や紛失による余計なコストが生じていることが少なくありません。
今回は、現場目線で「ボイラーで使う保守用工具掛け部材(ツールハンガー)」を自作し、その導入によって得られた現場改善効果を詳述します。

製造現場におけるボイラー設備と保守の現実

ボイラー設備の重要性

ボイラーは、工場の動力供給や加熱工程、暖房用途など多岐にわたり使用されています。
その役割は水や蒸気の供給にとどまらず、ライン全体の安定稼働にも大きく影響します。
故障発生時には、生産ラインが全面ストップすることさえあり、定期保守や点検作業の質とスピードが利益・安全に直結します。

保守作業の課題とアナログな現場の実態

とはいえ、昭和的アナログ文化の色濃い現場では、工具管理も未だにカゴや棚、工具箱への一括収納が主流です。
使用後の工具が決められた場所に戻されない、点検中に「アレどこいった?」と探し回る、必要数の工具や部材が揃っていない、といった“小さいが積み重なるムダ”が日常化しています。

こうした状態が続くと、
– 作業のムダな中断(探し物時間の増加)
– 工具紛失による買い直しコスト
– タクトタイム延長による保守効率低下
– 匠職人に依存した属人的管理
といった現場ロスに直結します。

工具掛け部材(ツールハンガー)自作のきっかけと目的

なぜ工具ハンガーを作ろうと思ったのか

ボイラーの日常点検を担当していた時、毎回同じ工具を探し、工具箱の中を掘り返す作業に時間がかかっていました。
工具の置き忘れや紛失も頻発し、探すこと自体が「仕事」になりかけていました。
また、点検のたびに不要な工具まで一式持ち運ぶムダもあり、現場に合った「必要なものだけスマートに管理・アクセスしたい」と考えました。

使用頻度の高い工具(レンチ、ドライバー、ゲージ、グリスガンなど)を、ボイラー設備の近くにまとめて吊るしておくことで「現場に即した、最も効率の良い収納と作業動線」を実現したかったのです。

改善の目的

– 工具の定位置管理による探し時間“ゼロ”化
– 現場動線最適化による点検作業時間短縮
– 工具の紛失・置き忘れ防止
– 属人化の排除:誰がやっても同じ品質に標準化
– 工場内5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の推進

この5点を満たすことを自作ハンガーの目的としました。

具体的な製作手順

現場調査(Gembaカイゼンの視点)

まず重要なのは、実際に現場で使う工具とその種類・サイズ・個数を洗い出すことです。
「必要最小限」の原則に立ち返り、点検項目ごとに使う道具リストを作成。
「一期一会」でしか使わない工具は削除、必須工具のみピックアップします。

続いて、ボイラー設備周辺の設置スペース、安全動線、耐熱・耐候性など制約条件を確認します。
特に「歩行動線に干渉しない」「火気近辺で溶けたり割れたりしない」「設備メンテ時に脱着できる」ことは必須ポイントです。

素材選びとデザイン

工具の重量、設置場所、屋内外の環境(高温・多湿・埃)、取り出しやすさを考慮し、
– 金属フック付きのスチールプレート
– サイズごとに分けた複数のハンガー
– オイルや水分がかかっても拭き取りやすい表面処理(塗装亜鉛メッキ等)
を設計条件とします。

「自作」であるため、現場にあった廃材や端材を有効活用。
余剰在庫のアングル材やパンチングメタル、既製品のフックなどを加工しコストダウンも目指します。

加工・組立・仮設置

– 各工具に応じた取付ピッチの穴開け(現物合わせで現場加工)
– ボルトナット固定 or マグネット式で着脱可能構造
– 現場作業者の身長や利き手を考慮した高さ・向きにハンガー設置

まずは仮設置し、実際の作業で一日使ってもらい、使い勝手や改善点をヒアリング。
「触って検証→調整(カイゼン)→再検証」のPDCAを短サイクルで繰り返します。

導入後の現場改善効果

目に見える時短効果

・工具探索に費やしていた平均5~10分/回がほぼゼロになり、
点検‐記録‐後片付けまで一連フローが約30%短縮されました。

ミス・紛失の激減

「型枠管理」(工具の形に合わせた専用置き場)によって、使ったら“定位置に戻す”習慣が根付きます。
個数が一目で確認できるため、戻し忘れ・置き忘れ・紛失といった重大事故が格段に減りました。

5S・現場の標準化が進展

どんな作業者でも同じ手順で点検できる「視える化道具棚」になったことで、
属人化の弊害がなくなりました。
掲示用のピクトグラムや写真を貼ると、より分かりやすくなります。

業界としてのムダ取り~昭和からの脱却~

アナログな現場では「探し物をする時間」が日常に溶け込み、それをムダと認識できていない場合が非常に多いです。
本来道具に振り回されることは“仕事”ではなく、“ムダ”です。
定位置管理を徹底することで、昭和由来の非効率を一掃し、「人が道具に使われる」→「道具を使いこなす現場」へと意識改革が進みます。
他の工程や作業にも同じ考え方(場所ごとの定位置化)が応用され、現場全体が整流されていきます。

コスト抑制と現場活性化の両立

自作ツールハンガーは、既製品の工具棚を購入する予算がなくても、廃材活用や現場DIYで実践できます。
実際、年間数万円レベルの工具ロス・購入費が、わずか千円程度の部材費に置き換わりました。
また、作業者自身が「現場を良くしたい」「使いやすくしたい」という思いで改善に参画でき、
小さな成功体験の積み重ねが現場の“活性剤”となります。

バイヤー・サプライヤーへ与える示唆

バイヤーの視点から見ると、こうした地味な改善活動こそが、
「設備の稼働率最大化」「保守コスト低減」「品質安定」という経営目標に直結します。
サプライヤーの立場でも、現場密着型の改善要素を“製品サービスの付加価値”として提案できれば、
単なるモノ売りから脱却し、ファンを生みやすくなります。

今後の展望とまとめ

ボイラー設備をはじめ、全ての生産現場で「道具・部材の定位置管理」は時代を超えて有効な現場カイゼン手法です。
小規模・低コストから始められ、現場作業者を巻き込んだPDCAによってスパイラル的に深化できます。
数十年続いたアナログ体質・属人管理にメスを入れ、“人に優しく、設備に厳しい”現場構築のヒントとなるはずです。

明日からでも、あなたの工場でできるツール管理改革。
小さな一歩が、製造業の未来と収益力を大きく変える――この事例がその道標になれば幸いです。

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