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ブランド立ち上げ初心者が理解すべきアウターOEMのコスト構造

目次
アウターOEMのコスト構造を理解しよう
アパレル業界でブランドを立ち上げようとすると、OEMを活用するケースが多く見受けられます。
特にアウターはパターンや素材選定、縫製など難易度が高く、初心者にとってはハードルの高いアイテムです。
しかし、OEM先に丸投げするだけでは思い通りのモノづくりや利益確保が叶いません。
コスト構造を正しく理解し、主導的に管理できることが、ブランド運営の成功のカギを握ります。
このコスト構造をしっかり把握することで、無駄なコストを削減するとともに、最適な価格設定ができ、競争力のあるプロダクト展開が可能になります。
アウターOEMのコスト構造とは?
アウター製品のOEMコストは、単に“生産費用”だけを指すものではありません。
さまざまな要素が積み上がり、最終的な「仕入原価」が決まります。
主な内訳は以下の通りです。
1. 生地・資材調達原価
アウターでは、表地・裏地はもちろんボタンやファスナー、芯地、タグ、パッケージ資材まで多様な資材が必要です。
素材によって調達先、ロット、品番管理が異なり、1品番あたりの最小ロット数(MOQ)が設定されています。
高級ウール素材や機能性中綿などを使う場合は、資材コストが跳ね上がるため、ブランドとしてどこにこだわるかを明確にし、過剰品質にならないよう注意しましょう。
2. 縫製・加工費用
縫製工賃は、アイテムのデザイン複雑度や、数量、縫製工場の地域によって大きく異なります。
簡単なブルゾンと複雑なダウンジャケットでは、倍以上コストが違うことも珍しくありません。
また、防水加工・シームテープ・特殊ライナーなどの付加価値加工も加算されます。
3. パターン・サンプル作成費
オリジナルデザインの場合、パターン作成料が発生します。
試作サンプルは1枚ずつ費用が発生し、仕様変更や修正が多いとコスト増の温床になります。
「1stサンプル→2ndサンプル→量産」と段階的に費用がかかることを理解し、仕様決定までの動線を明確にしましょう。
4. 輸送・関税・管理費
海外工場利用時は、梱包・輸送費、場合によっては通関・関税がかかります。
日本国内に倉庫を持つ場合には、入庫・保管コストも発生します。
これを見落とすと、正味の原価把握ができずに粗利を誤認しやすくなります。
5. OEMマージン
OEM事業者は、資材や工場手配の業務委託費(マージン)を乗せて価格提示します。
多くのOEMでは10〜20%程度が目安ですが、ブランド規模や取引実績によって前後します。
なぜアウターOEMは“割高”に感じやすいのか
アウターはアイテム特性上、コストコントロールが難しい分野です。
その理由を紐解いてみましょう。
1. ロットの壁と原価分散
アウターは1型あたりのMOQ(最小注文数)が高くなりがちです。
10着、20着といった“小ロット”では、型紙・サンプル代・資材ロスの単価あたり負担が大きくなります。
また、体型バリエーションや色数が多いと、各型でMOQを別々に満たさねばならず、致命的なコストアップに。
ロットの壁を理解し、企画品番の絞り込みがカギとなります。
2. 製造管理コストが高い
ダウン、レザー、合成繊維など、多種多様な資材・加工ステップを踏むアウターは、工場内でも技能者や工程割り当てが複雑です。
そのため、管理コストや現場で発生する歩留まりの低下リスクも含め、自然とコストが高くなります。
3. 品質トラブルの保険コスト
シーズンものとして一度きりの生産が多いアウターでは、万一の品質トラブル時の保険的なコスト(クレーム対応費)もマージンに上乗せされるケースがあります。
「厳しい検品」「第三者品質チェック」などの追加費用にも注意すべきです。
バイヤーとサプライヤーの“駆け引き”と透明性
コスト構造を知ることは、OEMサプライヤー側の立場理解にも繋がります。
サプライヤー側は、各工程・部材の価格が年々変動するリスク(為替、原材料高騰、最低賃金改定等)を見据えて価格提示します。
バイヤー(ブランド)は「できるだけ安く」「高品質」を求めがちですが、単なる値下げ交渉だけでは不健全な関係になりやすいです。
透明なコスト内訳開示や、改善提案・原価改善活動を協働で実施し、継続的なWIN-WIN関係を築くことが健全な取引のコツです。
また、昨今サスティナビリティ(持続可能性)やトレイサビリティ(生産履歴を追えること)への社会的要請も高まっており、「コストだけでなく、どの工程で何が使われているのか」を開示できるかが重要な指標となります。
アナログからの転換:デジタル時代の原価設計
未だにアパレルOEMの多くは、FAXや電話、手計算見積書など昭和的なアナログ管理が多く残っています。
ですが、近年はデジタルツールの導入が進み、コストの「見える化」と「再現性・改善スピード」が向上しています。
たとえば、原価見積作業を表計算やクラウドシステムで行い、「どのパーツ・工程でコストが高止まりしているか」を即座に把握することで、小ロット生産や多品番展開の効率化が可能となります。
また、多国間での資材調達やクラウド型生産管理を活用すれば、国際情勢や物流コストの変動にも即応できる時代です。
若いブランドやベンチャーこそ、旧態依然のOEM取引の枠から飛び出し、サプライヤーと共創するパートナーシップ志向での取引にシフトしていくことが期待されます。
まとめ:原価構造を味方につけて強いブランドを育てる
アウターOEMは一見すると「難しそう」「コスト高」と感じられがちですが、その内訳を丁寧に紐解くことで、自分たちに必要な価格交渉・工程短縮・無駄削減が見えてきます。
ブランドとして今、どこに原価を投下すべきか。
どこをスペックダウンしてもよいのか。
サプライヤーとどこまでコスト内訳を共有できるか。
これらの問いに真摯に向き合うことで、安定した原価設計と持続的なブランド成長が可能となります。
製造業のバイヤー・サプライヤー双方が、旧来の“業者まかせ”から一歩踏み出し、現代的な原価設計・透明性・パートナーシップを実現できれば、日本のものづくりはもっと強く進化していくと確信しています。
今後、アウターOEMだけでなく、さまざまな製品分野でも同様にコスト構造を俯瞰し、使う人のために何を選び取るべきか。
これこそが、これからのブランド立ち上げ初心者が学ぶべき“ものづくりの核心”ではないでしょうか。
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