投稿日:2025年12月6日

設備トラブルの一因が実は電源環境という見落としポイント

はじめに:設備トラブルの陰に潜む「電源環境」問題

製造業の現場では、設備トラブルの原因追及が日々当たり前のように行われています。

生産ラインが急停止したり、検査装置がエラーを頻発したり、時にはPLCがフリーズするといった事例に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。

よくある対応は、メカニカルな故障、センサの不調、ソフトウェアのバグ、部品の劣化などから調査を始めることです。

しかしながら、現場で20年以上トラブルシューティングに携わってきた経験から、意外と見落とされがちなのが「電源環境」に起因するトラブルです。

今回は、なぜ電源環境が設備トラブルの隠れた一因となりやすいのか、その実態や見抜き方、最新の業界動向まで掘り下げて解説します。

昭和から続くアナログな感覚が根強い製造現場にも、新たな視点を提案します。

製造業の現場で頻発する「謎のトラブル」

よくある症状とその初動対応

たとえば「昨日までは普通に動いていた」「設備導入直後は順調だったのに、数ヶ月経つと謎の誤動作が出る」といった悩みは多くの現場で共通しています。

エラー内容をメーカーに問い合わせたり、現場スタッフ同士で原因を持ち寄ったりしますが「これぞ決定的」という回答が出ず、やがて日常的な“付き合いトラブル”として放置されることもあります。

LED表示やHMIのエラーログ、現場で耳に入る「バリバリ」「カチカチ」といった音などから、メカや制御経路ばかりに意識が向きがちです。

結果として「原因不明」のまま、その裏で生産効率低下や、品質問題がじわじわ進行してしまう場合も少なくありません。

なぜ「電源環境」が盲点になるのか

昭和からの現場感覚では、電源は「入れば当たり前、切れたら原因」といった極端な認識で留まりがちです。

しかし、設備にとっては見えないノイズや微小な瞬停、電圧揺らぎといった「複数の隠れた不調」が蓄積していることがあります。

特にエレクトロニクス制御化が進んだ現在では、過去には無視されていたようなノイズや瞬間的な電圧降下が、顕著なエラーや誤動作として現れるケースが増えています。

変圧器や分電盤、配線ルート、そのメンテナンスや端子のゆるみまで、一見地味な電源まわりの細部が、実は設備全体の安定稼働を左右しているのです。

電源環境の見落としが招く実例

実話:医療機器メーカーでのトラブル

私が工場長時代に体験した事例を紹介します。

自動組立ラインで、半日に一度程度PLCが再起動し、設備が停止するトラブルが発生しました。

制御盤の熱、プログラム、I/Oユニットの配線すべて点検し、すべて異常なし。

最終的に分電盤の中性線端子ネジが緩んでいたことが原因で、微妙な電圧揺らぎとノイズが発生し、瞬間的にPLCの電源が落ちていたのです。

締め直したあとは全くトラブルが再現しませんでした。

サプライヤーの視点の盲点とは

サプライヤー(部品や設備の供給者)は、どうしても“自社製品の善し悪し”に目がいきます。

バイヤー(発注者)の立場からすると、現場の電源環境が設備のパフォーマンスに影響する、という意識が薄ければ「不良品をつかまされた」と誤解されることもあります。

だからこそ、納品現場の配線環境や分電盤/接地の状態、古い工場の古典的な配線など、一次情報まで「本当に気を配っているか」が問われます。

現代は、電源そのものの品質と、現場のインフラ事情を複眼的に見抜く時代となっています。

電源環境によるトラブルの代表例とそのメカニズム

1. 瞬低(瞬間停電)

工場では大規模な負荷装置(大型モーターや冷凍機)の起動・停止の際、ごく短い間だけ電圧が低下する現象が発生します。

この「瞬低」は一瞬のため多くは見逃されますが、精密機器や制御回路、サーボドライバなどにとっては誤動作やリセットのリスクとなります。

特に近年増えているIoT機器やセンサ類は電源に繊細なため、製造ラインが複雑化するにつれて顕著なリスクとなります。

2. ノイズ混入

周囲の溶接機、インバータ、雷などが発するサージやノイズが電源ラインを経由して設備に入り込みます。

高調波やノーマルモードノイズ、コモンモードノイズなど種類によっても影響が異なります。

PLCや測定機器に影響し、不定期な誤動作につながることが多いのも厄介です。

3. 配線・端子の緩みや腐食

配線の取り回しや端子台の締め付け不良による「接触抵抗増加」が発熱やノイズ、異常電圧につながります。

年1回の電気点検だけでは発見できない経年変化もリスクとなることを意識しておきましょう。

見極めポイントと現場でできる対応策

現場ですぐチェックするべき項目

– 複数設備で同時多発的な謎のトラブルが起きていないか
– 停止発生時間帯や周囲の設備稼働状態に“関連性”がないか
– 制御電源(24V、5V)と動力源(200V、400V)が明確に分離されているか
– 分電盤や配線盤の温度上昇・異音・変色を目視で確認

重点的に診断すべき電源系統のチェック方法

– 配線端子の締め直しと導通確認
– 波形測定器やロガーによる瞬低・ノイズの記録
– アースラインの接続状況と接地抵抗の測定
– 電源入出力間の絶縁・導通診断

「兆候」を見逃さない記録の工夫

昭和から抜け出せていない現場では、未だにエラー発生時の日付や近隣の稼働装置記録が“口頭”のみ、キッチリとエラー履歴を残している現場は少数です。

手書きの記録ノートや、エクセルによる簡易的なトラブル記録シートでも構いません。

「いつ」「どんな時」にトラブルが発生しやすいのか、できるだけ具体的に記録しておくことで因果関係が見えやすくなります。

サプライヤー・バイヤー双方が「電源」に注目すべき理由

サプライヤーの立場から:信頼アップのポイント

納品した設備が現場で「不定期にエラーを起こす」「他社では問題ないのに自社だけ頻繁にクレームが来る」といった時、単純に設計変更や部品交換で対処しがちです。

しかし、付加価値の高い提案として「お客様の設備電源環境診断」「現場の配電盤のチェック」まで提案できれば、サプライヤーとしての信頼が飛躍的に高まります。

現場スタッフから「さすが専門家だ」と頼られるエンジニアは、この視点を必ず持っています。

バイヤーの立場から:コストダウンと品質安定の道筋

「稼働率アップ」「不良率削減」「維持費低減」がバイヤーのミッションです。

品質やコストにばかり目がいくと、真の収益改善策を見落とします。

一度でも電源環境を徹底見直しすることで、設備の突発停止や修理工数が大幅に改善され、長期的なコストダウンが実現できる可能性が高いです。

ラテラルシンキングで新時代の“工場の安心”を実現

デジタル化の恩恵とアナログ現場の融合

IoTやスマートファクトリー化が進む中で、電源の遠隔監視や、常時ロギングシステムの導入も敷居が低くなっています。

一方、現場で汗をかくアナログ感覚も「異臭」「音」「盤内の結露」から違和感を検知する力として変わらず重要です。

現代の工場人は、機器依存一辺倒から「人間の感覚」と「デジタル記録」の両輪で、異常を早期発見する工夫が求められます。

「電源診断」は設備の健康診断

今や製造工場の“カイゼン活動”に電源診断は必要不可欠です。

– 波形モニターの設置
– 高信頼UPSや瞬低対策機器導入
– 分電サブ回路の分散設計
– 年2回以上の盤内目視点検

現場に根付いた“昭和的な勘と力技”を基盤にしつつ、最新のデジタル診断手法を融合しましょう。

それが現代の工場力・競争力に直結します。

まとめ:見えない「電源」こそ工場の生命線

設備トラブルの真因は意外なところに隠れています。

見落としがちな「電源環境」こそが、工場の安定稼働・品質保証の生命線です。

バイヤーは生産性に直結する本質的な改善ポイントとして、サプライヤーは現場の真のパートナーとして、お互いに電源インフラへの理解を深めていきましょう。

昭和の感覚と最新技術のラテラルな融合から、新しい“ものづくり”の地平がきっと開けます。

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