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外注開発後にメンテナンスできずシステムが止まった事例

目次
はじめに:外注開発の“その後”を見据えた準備の重要性
製造業の現場では、業務効率化や省人化、データ活用を目的として、ITシステムや自動化設備の導入が年々進んできました。
こうした流れの中、多くの現場で「外注開発」に頼るケースが増えています。
特に、限られた社内リソースの中でスピーディにDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとすると、社外のITベンダーやシステムインテグレーターに開発を委託せざるを得ません。
しかし、導入した直後は便利で画期的なシステムも、「適切な維持・運用」という観点が欠落すると、思わぬ落とし穴にはまります。
本記事では、私自身が20年以上にわたり現場で見聞きしてきた「外注開発後のメンテナンス不全によるシステム停止」の事例を紹介しつつ、その背景や回避策を実践的な目線で解説していきます。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場でバイヤー心理を知りたい方にも有益なヒントを提示します。
実例:自動化設備のシステムが外注先頼みのままブラックボックス化
平成の中盤に発生した“突発停止”
私が工場長として勤務していた工場では、2000年代初頭、手作業主体だった検査工程を全面的に自動化するプロジェクトがありました。
当時は「これで人手不足も解消し、検査品質も上がる」と現場は大いに沸き立ちました。
システム開発とハード設計は、外部SIer(システムインテグレーター)にフル外注。
要件定義、仕様策定から設計・調整、現場教育まで、ほぼ丸投げの状態でした。
導入から5年が経過したある日、PLC(シーケンサ)とPC連携部で異常停止が発生。
急遽、稼動を止めて業者にヘルプを依頼するも、担当エンジニアの退職とSIer側の事業再編が重なり、すぐに対応できる技術者が社外にもいませんでした。
結局、“止まったまま”2週間が経過。
その間、せっかく自動化した工程を手作業に逆戻りし、検査工程のボトルネック化、納期遅延、数千万円単位の損失が発生したのです。
なぜこうなったのか?要因の深堀り
この教訓から、自社だけでなく多くの製造業で共通する「外注開発後のメンテナンス不全」リスクを解析した結果、下記のような根本要因が浮かび上がりました。
- 開発委託時に「保守・運用体制」「仕様書・設計書の受け渡し」などが曖昧
- 社内にシステム内容を十分に理解できる人材がいない、または育成を行っていない
- 外部委託先の担当者しか把握していない“ノウハウの属人化”
- システムリプレイスやアップデートを考慮しない契約・設計方針
- 「導入して終わり」思考で、メンテナンス・改善の継続的予算が未確保
根本にあるのは、「システム運用を自社の仕事としてマネジメントする」意識・知識の未成熟です。
アナログ文化に根づく「外部依存体質」とその限界
技術伝承が「昭和の美徳」どまり?
昭和から平成、令和へと時代が変わっても、現場には今なお「ベテランが口伝で技を教える」「仕組みは分かる人に聞け」など、アナログ的文化が色濃く残っています。
それ自体は職人芸術の継承としてリスペクトすべきものですが、IT、特にシステム開発領域においては大きな障壁となり得ます。
高度な自動化ラインが稼動しても、「このプログラムの全容を説明できるのは外部ベンダーの○○さんだけ」といった構造が温存されやすいのです。
「外部任せ」「なんとなく動いていればOK」という姿勢が、やがては「誰にも直せないシステム」を生み出し、そのツケを現場やお客様が背負うことになります。
メーカー特有の“縦割り&自部門優先”が課題
また、製造業は従来、生産、品質、調達、技術など各部門の縦割り組織で動く傾向が強いです。
「ITは情報システム部の仕事」「ラインは生産が管理」という“縄張り思考”があるため、システム運用ノウハウが全社・全工程に広がりにくい現実があります。
結果として、全体最適やサステナブルなシステム連携が難しくなり、個別最適な外注依存体質を加速させてしまうのです。
サプライヤーの視点:なぜ運用部門と連携してくれないのか?
バイヤーの「導入指向」とその先の“空白時間”
サプライヤー側から見ると、多くのバイヤー(発注者)は「最新技術を最短で、最小限のコストで欲しい」という要望を持っています。
コンペ形式で価格と納期を叩くだけ叩かれ、「納品したら終わり」となりがちです。
ところが、本来の製造現場では、「納入直後から真価が問われる」が正解。
にもかかわらず、現場部門やITリーダーが「外注システムの保守・アップデート計画」を重視しなかったり、「どこまで自社で運用管理するか」を曖昧にしたまま発注されるケースが頻発します。
サプライヤーとしては長期的な運用サポートや技術移管にも協力したいのが本音ですが、「追加オプション扱いされ、コストダウン要請で削減」という板挟みにあう現実があります。
「ヒューマンウェア」継承まで見据えた提案が必要
優れたサプライヤーは、単なる「モノ売り」から「コト提供=運用も含めた成果提供」へのシフトが求められています。
技術文書・マニュアルの整備、日本語によるトラブル対応教育、操作訓練プログラムの提供。
さらには、外部エンジニア不在時でも現場担当者が最低限の一次対応をできるよう、「ヒューマンウェア」=人へのノウハウ継承こそ、今後の重要テーマとなります。
解決策1:開発と並行した「メンテナンス体制構築」
仕様書・設計書・トラブルマニュアルの“三点セット”を確保
外注開発プロジェクトでは、納品物はシステム本体だけではありません。
下記のような技術文書を「もれなく、現場で使える形で」納品することを条件にしましょう。
- システム全体構成図(ハード・ソフトを含めたネットワーク関係性)
- 詳細な設計書・ソースコードコメント(ブラックボックス化しないため)
- 保守点検・トラブル時の操作マニュアル(現場担当者が読んで分かる日本語で)
「現場でまず困るのは何か」「その時、何を見て対応するのか」を徹底的にイメージすることが肝要です。
自社で“最低限の運用”ができる人材育成
開発や導入と並行して、「自社人材のトレーニング」もセットで発注しましょう。
たとえプログラム改修までは無理でも、「エラーログの確認・一次切り分け」「バックアップの実施方法」など、日常運用を自分たちで回せる内容が必須。
現場オペレーター・班長・システム担当など、階層ごとに適した教育を実施します。
その際、「年配者も理解できる」レベルで教材と現場習熟プログラムを作成することがポイントです。
解決策2:サステナブルな運用・改善サイクルの内製化
“外注後の改善”まで見越した契約・評価軸
たとえば、「年間保守契約の締結」「継続的バージョンアップの計画」など、単年度ではなく中長期的な視点での運用を織り込んでおくべきです。
また、外部ベンダーにだけ依存しない、自社側の「システム仕様レビュー会議」「改善提案会議」も定期的に開催し、属人的なブラックボックスを段階的に解消するのが理想です。
「運用・改善も含めて初めてシステム投資の価値が出る」というKPI(評価指標)を設定しましょう。
カギは現場リーダーを巻き込む「横断型マネジメント」
従来の「情報システム部が主導し、生産現場は受け身」という縦割り組織のままでは、サステナブルな改善サイクルは回せません。
情報システムと製造現場、調達、品質管理などの垣根を超え、現場リーダーを早い段階から巻き込みましょう。
「これは現場にとって、一時しのぎなのか?持続的な仕組みなのか?」を現場目線で検証し、都度フィードバックしながら改善を回す仕組みを作っておく必要があります。
まとめ:人が運用するシステムこそ強い競争力になる
システムが外注開発のままでブラックボックス化し、メンテナンス不全に陥るリスクは、今も日本の多くの工場や製造拠点に巣くっています。
しかし、一度トラブルが発生した時の損失やオペレーション混乱を考えれば、導入段階から「運用するのは自分達=現場」という意識改革が必要不可欠と言えるでしょう。
外注開発に頼ること自体は悪ではありません。
大切なのは、「システムを自分たちの手で動かし、改善し続ける」その覚悟と仕組みづくりを怠らないことです。
バイヤーを目指す方は、発注前の準備と明確な運用体制の確保とともに、サプライヤーや現場と誠実に話し合うリーダーシップを。
サプライヤーの立場であれば、「納品後の真の価値提供」や「現場の自立的運用支援」を含めて提案する姿勢を持ちましょう。
昭和型の「外部依存マインド」を脱し、「自分たちの現場・自分たちのシステム」へ。
その意識転換こそが、これからの製造業を支える最大の競争力になると私は信じています。
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