ポリエステル裏起毛生地の毛羽脱落防止と洗濯耐久性評価

ポリエステル裏起毛生地の毛羽脱落防止と洗濯耐久性評価

ポリエステル裏起毛生地とは何か

ポリエステル裏起毛生地は、スポーツウェアやスウェット、アウターウェアなど衣料用途で幅広く使用されている生地の一つです。

基布となるポリエステル素材の表面や裏面を起毛加工することで、表面に柔らかいパイルやフリース状の毛羽(けば)が形成されます。

この起毛により、生地は肌触りが良くなり、保温性が高まる特長を持っています。

一方で、起毛の工程により毛羽が立ちやすくなり、着用や洗濯を繰り返すうちに毛羽脱落や毛玉、表面の劣化が起きやすい点が課題となります。

このため、毛羽脱落防止および洗濯耐久性を高める技術と、その評価方法が重要視されています。

毛羽脱落の主な原因

摩擦による繊維の抜け出し

衣類は着用時や洗濯時に他の衣類や洗濯槽、手指などとこすれることで摩擦が発生します。

特に裏起毛素材では、表面のループやパイルの繊維端が摩擦で引き抜かれやすく、結果として毛羽として脱落につながります。

劣化による繊維の断裂

ポリエステルそのものは耐久性が高い合成繊維ですが、繰り返しの着用や洗濯による複合ストレス、長期間の紫外線曝露などによって繊維が劣化し、強度が低下します。

繊維が断裂すると、短繊維片として毛羽脱落につながります。

毛羽脱落を防止する主な技術

高捲縮・高弾性糸の使用

裏起毛用のポリエステルには、一般的なフィラメント糸やスパン糸のほか、捲縮性(クリンプ)や弾力性に富む特殊な糸を用いることで、繊維同士の固着力を高めて摩擦力から毛羽脱落しにくい特性を持たせる例が増えています。

糸の設計によりパイル構造の安定性も向上させることができます。

シアバインディング加工

生地表面にバインダー樹脂をコーティングしたり、低融点繊維を混用して熱セットし、繊維同士の結束点を増やす技術が用いられています。

これにより、毛羽自体が抜けにくくなり、洗濯や着用時の毛玉や毛羽脱落を抑えることが可能です。

また、生地全体の形態安定性も向上します。

アンチピリング(抗ピリング)加工

毛羽が繊維の端で断裂しにくい柔軟なポリマーやコーティング材を使用して、生地のピリング(毛玉)や毛羽脱落を抑制する加工法が盛んです。

抗ピリング加工は、繊維表面の摩擦係数を下げたり、強度を局所的に上げる働きがあります。

これにより、洗濯耐久性や外観劣化が大幅に改善されます。

ブラッシング管理の最適化

裏起毛の仕上げ時、ブラッシング工程の速度や押し付け圧などの条件を制御することで、繊維の抜けの少ない、均一な起毛面を作ることができます。

行き過ぎた起毛は毛羽脱落・毛玉の原因となりますが、最適条件の設定により耐久性が向上します。

洗濯耐久性評価の基準と方法

洗濯試験による耐久性測定

洗濯耐久性とは、洗濯を繰り返した際に素材や表面状態がどれだけ維持されるかを示します。

実験室では、標準洗濯試験方法(JIS L 0217など)に基づき、所定の洗剤・水温・回転数・時間で繰り返し洗濯を行い、起毛層の損耗(表面損耗)、毛羽脱落量、毛玉(ピリング)数や大きさなどを評価します。

洗濯10回、20回、50回など段階的に区切り観察・比較するのが一般的です。

摩耗・摩擦試験

洗濯以外にも、摩耗試験機やマーチンデール摩耗計などの機器を用い、摩擦による表面の損耗や毛羽脱落の状態を目視またはデジタル処理で判定します。

摩耗後のサンプルは、色の変化や毛羽の長さ、抜け毛の量で点数付けされます。

毛羽脱落量の定量測定

洗濯機や摩擦試験の直後、生地から脱落した毛羽をろ紙やフィルターで集め、定量的に重さを測定します。

この毛羽量が少ないほど、毛羽脱落防止性・洗濯耐久性が高いと評価されます。

近年では、細かなマイクロプラスチック脱落抑制の観点からも毛羽量低減が重要になっています。

優れた評価を得るためのポイント

耐久性と快適性の両立

毛羽脱落を徹底的に抑えようとすると、生地の表面が硬くなったり、快適な肌触りが損なわれるリスクがあります。

そのため、裏起毛本来の柔らかさや保温性、快適性を維持しながら、最小限の脱落量・ピリング量に抑える技術が最も重視されます。

工場での一貫管理

原糸選定から編立て、起毛、仕上げ、縫製まで、一貫して毛羽管理・ピリング対策を施すことで、優れた耐久性が発揮されます。

特に縫製糸の選定や縫い目の箇所も毛羽脱落の弱点になりやすいため、生産工程での総合的な確認が必要です。

持続可能なものづくりと毛羽脱落対策

近年、ポリエステル製品の洗濯によるマイクロプラスチック流出が大きな社会問題となっています。

裏起毛生地も、洗濯のたびに毛羽が流出しやすいため、繊維メーカーやアパレル業界では「洗濯25回後でも毛羽脱落が〇〇%以内」などの自主基準やガイドラインを設けるケースが増えています。

また、リサイクルポリエステルや植物由来改質ポリエステルの使用例もあり、サステナブル(持続可能)なものづくりの視点で毛羽脱落の抑制技術が進化しています。

まとめ

ポリエステル裏起毛生地は、快適な肌ざわりと優れた保温性を兼ね備えた人気素材です。

一方で、摩擦や洗濯による毛羽脱落や毛玉発生が課題となる場合がありますが、糸の設計・起毛加工・コーティング・抗ピリング加工などの技術発展により、洗濯耐久性と快適性を両立できる製品が増えています。

また、マイクロプラスチック対策の観点からも、毛羽脱落を定量的に評価し、持続可能な素材開発が求められます。

裏起毛製品を選ぶ際は、毛羽脱落や耐久性、環境対応の取り組みなど、多角的な基準から選択することが、快適な衣生活と地球環境の両立につながります。

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