金型内の空気抜きが不十分で焼けが発生する特有の課題

金型内の空気抜き不良による焼けの発生とは

金型成形において、空気抜きの工程は非常に重要な役割を果たしています。
しかし、空気抜き不良が発生すると金型の中に空気が閉じ込められ、成形物に焼け(バーンマーク)が発生する課題が多く見られます。
この現象は、外観不良や強度低下だけでなく、金型や生産ラインの稼働率にも大きな影響を及ぼします。

焼けの発生は、プラスチック成形、ダイカスト、ゴム成形など、さまざまな金型成形で共通しており、特に高精度・高品質が求められる現場では無視できません。
ここでは、金型内の空気抜きが不十分で焼けが発生するメカニズムや、その特有の課題、具体的な対策について詳しく解説します。

焼けが発生するメカニズム

金型成形時、樹脂や金属などの材料が高圧で金型内に射出される際、金型の隅々まで材料が行き渡る過程で金型内部に残った空気やガスが材料とともに押し出されます。
しかし、金型に空気抜き(ベント)が適切に設計・加工されていない場合、溜まった空気やガスが逃げきれず、材料の流動端で高温高圧の状態になります。

この時、極めて高い温度になった空気やガスが瞬間的に燃焼すると、材料表面が焦げたような跡(バーンマーク)が生じます。
特に外観に直接露出する部分で焼けが発生すると、製品の見栄えや機能性を大きく損なう恐れがあります。

空気抜き不良による特有の課題

焼けが発生することで、製品そのものの品質が低下することはもちろん、下記のような金型成形現場特有の課題が伴います。

1. 不良率の増加とコストアップ

焼けの発生により、製品の歩留まりが著しく低下します。
焼けた部分は基本的にリワークや修正が難しいため、不良品として廃棄されるケースが大半です。
生産効率やコストに直接影響を及ぼし、受注や納期にも悪影響を及ぼします。

2. 金型の損傷とメンテナンス工数の増大

内部にガスや焦げた材料が定着すると、金型そのものの傷みや金型寿命の短縮につながります。
定期的な洗浄・修理が不可欠となり、トータルでのメンテナンス工数やコストが増加します。

3. 材料の無駄や製品強度低下

空気が巻き込まれたまま固化した場合、内部に気泡(空隙)が残り、材料本来の強度が得られません。
また、焼け部分は材料構造が変質しており、基準通りの性能確保が難しくなります。

焼けによるトラブル事例

どのような場合に焼け問題が顕在化するのか、具体的なトラブル事例を紹介します。

事例1:自動車部品成形現場での焼け発生

自動車のインテリア部品成形において、細部のリブ形状部で焼けが頻繁に発生しました。
調査の結果、リブ周辺の空気抜き設計不足が原因と判明しました。
現場では、金型を部分的に改造しベント溝を追加したことで、焼け不良は約80%軽減できました。

事例2:家電筐体成形での歩留まり低下

家電の筐体成形において、樹脂の流動終了部でバーンマークが多発しました。
これは、樹脂充填時に空気の逃げ場が不足し高温となった空気が発火したためです。
空気抜きを拡幅し、樹脂の流動解析も並行して実施することで、歩留まり改善につなげました。

事例3:部品内部の強度不足

透明材料で内装部品を作成した際、微細な気泡や焼けによる濁りが目立ちました。
外観不良だけでなく、気泡部分からのクラック拡大や強度劣化が顕著でした。
この場合も空気抜き機構設計の見直しで解決しました。

金型内の空気抜き設計と加工のポイント

金型成形現場で焼けを防ぐには、設計段階から空気抜き(ベント)の考慮が必須です。
以下に、効果的な空気抜き設計と加工の具体的ポイントを挙げます。

1. ベント溝やベントピンの適正設計

金型の合わせ面や流動端部に、樹脂や金属材料が漏れないギリギリの寸法でベント溝を設けます。
一般的な推奨寸法例は、幅3~6mm・深さ0.01~0.03mm程度です。
流動が複雑な箇所や薄肉部は、寸法・位置の最適設計が効果を左右します。

2. ベント溝やピン穴の定期メンテナンス

成形材料やガスが堆積してベントが目詰まりすることがあります。
生産中にも定期的な洗浄や点検を行い、常にベント機能が発揮される状態を維持します。

3. 成形条件と空気抜きのバランス

射出速度や金型温度、圧力条件も焼けの発生に影響します。
過度の圧力や急激な射出は焼けのリスクを高めるため、成形条件と空気抜き設計をトータルで最適化する必要があります。

4. シミュレーションの活用

近年は流動解析ソフトによる金型内のガス経路シミュレーションが普及しています。
新規金型設計時に解析を行い、複雑な部品や難易度の高い形状も事前に最適なベント位置が割り出せます。

最新技術を活かした空気抜き対策

従来の加工技術に加え、近年は下記のような新しいアプローチも活かされています。

高機能ベントピンや特殊素材の活用

高精度で目詰まりしにくいベントピンや、特殊コーティングによりガスや樹脂の固着を防ぐ部材が登場しています。
また、ナノメートルオーダーでの表面加工も進み、耐久性・効果ともに従来より高いレベルが求められています。

IoT・センサーによる金型内状況の監視

金型内部に圧力・温度センサーを埋め込み、異常値や焼け発生の予兆をリアルタイムで検知するシステムが導入されています。
焼け発生を未然に防ぐだけでなく、生産条件の最適化やトラブル原因の特定にも役立ちます。

柔軟な設計変更・試作対応

近年は金型部品のモジュール設計・3Dプリンタ応用により、ベント周りの部分的な追加加工も短納期・低コストで対応可能になっています。
これにより現場での改善サイクルが迅速化し、品質維持に直結します。

まとめ:空気抜きを重視した金型運用が品質向上の鍵

金型内の空気抜きが不十分な場合、焼けの発生とそれに続くさまざまな品質・コスト課題が顕在化します。
しかし、設計・加工・生産管理の各段階で空気抜き対策を徹底することで、こうしたトラブルの多くは未然に防ぐことが可能です。

それぞれの現場で最適なベント設計や最新技術、シミュレーション、センサーシステムを積極的に活用することで、高品質な成形品の安定供給が実現できます。
金型成形の品質向上には、目立たない“空気抜き”がまさに最大のカギと言えるでしょう。

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