C‐SAM超音波顕微鏡のC‐スキャン条件最適化と樹脂剥離検出

C‐SAM超音波顕微鏡のC‐スキャン条件最適化と樹脂剥離検出

C‐SAM(C-Scan型超音波顕微鏡)は、非破壊で材料内部の欠陥や異常、層間の剥離を可視化できる先端検査技術です。
特に電子部品や半導体封止樹脂中の微小な異常を高精度に検出できるため、品質管理や故障解析の現場で広く利用されています。
この記事では、C‐SAMのC-スキャン条件をどのように最適化すべきか、さらに代表的な検出事例として「樹脂剥離」に注目し、その検出方法や解析ポイントまで詳しく解説します。

C‐SAM超音波顕微鏡とは

C‐SAM(Confocal Scanning Acoustic Microscope)は、超音波を試料表面に対し垂直に照射し、内部反射波を2次元的にマッピングして、断面や層間の構造情報を画像として得る装置です。
特に非破壊・非接触で高分解能なイメージングが可能なため、樹脂系複合材料、電子デバイス、半導体パッケージ、医療材料など様々な分野で活用されています。

C‐SAMの主なメリットとして以下が挙げられます。

・内部欠陥の可視化(ボイド、クラック、層間剥離等)
・製品へのダメージなし
・深さ情報の取得
・試料ごとに最適な測定条件の設定が可能

その中でC-スキャン(C-Scan)は、特定の深さの平面(XY断面)を画像化する手法で、表面から特定箇所の検査や観察に適しています。

C‐スキャン画像の原理と特徴

C‐SAMでは超音波プローブから水(カプラント)を介して試料へ超音波が入射します。
内部の異なる界面(例:樹脂-空気、樹脂-金属)では音響インピーダンスの差によって反射波が生じます。
この反射波の時間差(トランジットタイム)や振幅、位相を検出・記録し、各位置(XY座標)ごとに選択した深度の反射波を強度マッピングすることで、C-スキャン画像が生成されます。

C-スキャンでは以下の情報が得られます。

・選択した深さの変化・異常を2次元で観察
・物質界面の変化/厚み情報
・位相変化による界面特定

このようにして、封止樹脂内部の剥離、ボイド、クラックなど微細な異常を「見える化」できるのが最大の特長です。

C‐スキャン測定条件の最適化ポイント

C‐スキャンを用いた精度の高い異常検出には、目的とする対象・欠陥に合わせた測定条件の最適化が重要です。
特に樹脂剥離検出の精度向上には、以下の点を注意する必要があります。

プローブ周波数の選定

超音波プローブの周波数は分解能と透過深さに影響します。
高周波(40~200MHz)ほど分解能が高く、微細な欠陥まで検出可能ですが、減衰が大きいため深部観察には不向きです。
一方、低周波(10~30MHz)は深部まで到達しますが、欠陥のサイズによっては分解能が不足します。
樹脂剥離の多くは数μm~数十μmサイズのため、30~75MHzのプローブが良い結果をもたらすケースが多いです。

ゲート(測定深度範囲)の設定

測定したい深度に合わせて、ゲート(ウィンドウ)を最適化します。
層間剥離の場合、剥離が発生している界面前後を狙ってゲートを設定します。
初期反射波(表面反射)と目的の界面反射を複数回観察しながら、最もコントラストの高い箇所を選択します。

ゲイン(増幅度)の調整

超音波信号は減衰しやすく、深部では信号のS/N比が低下しがちです。
ゲインを適切に設定し、ノイズを抑えつつ剥離やボイド由来の強い反射を明瞭に捉えます。
過度なゲイン設定はノイズ増加や誤認識の原因となるため、最適値を探索しましょう。

スキャン速度・解像度の調整

高分解能スキャンは詳細な異常検出に有効ですが、測定時間やデータ量が増加します。
対象試料の大きさ、期待する異常サイズに応じてXYステップを決定します。
また、走査速度は出力信号とS/N比を保ちながら適切な速度を選びます。

水温・水質管理

C‐SAMではカプラント(水)が非常に重要です。
水温がブレると超音波伝搬速度が変化し、正確な深さ判別が困難になります。
また、不純物や気泡を含むと測定信頼性低下の要因になります。
20~25℃の安定した純水を用いましょう。

樹脂剥離(デラミネーション)の検出と解析

樹脂剥離の特徴と発生原因

電子部品や半導体パッケージ、成形樹脂部品では、界面(例えば樹脂―基板、樹脂―導体)で「剥離」(デラミネーション)現象が発生する場合があります。
剥離は、その部位のひずみ緩和や熱サイクル・成形工程での応力集中、界面の濡れ性(接着力)の低下などによって生じます。
この剥離は製品信頼性を大きく損ない、「リフトオフ」「ワイヤ断線」「クラック成長」など故障の起点となります。

C‐SAMによる剥離検出原理

剥離箇所は樹脂内部に空気層(または低密度層)を形成します。
樹脂と空気の音響インピーダンス差が極めて大きいため、超音波がほぼ全反射します。
そのため、剥離部位では非常に強い反射信号(白抜き領域等)がC-スキャン画像上に現れます。
また、剥離が広範か微細かによって、画像パターンにも特徴的な変化が生じます。

具体的な検出・解析手順

1.測定前準備 
試料を洗浄し、必要に応じ断面研磨や樹脂注型(場合によっては不要)で観察面を安定化します。

2.プローブと条件の選定 
観察対象に最適な周波数プローブとXY解像度を選び、測定範囲・深度ゲートを設定します。

3.C-スキャン測定
測定対象の全域を走査し、各深度での反射画像を取得します。

4.画像解析
剥離は一般的に強い反射・コントラスト(白色)が現れ、その形状・サイズ・位置をマッピングできます。
不明瞭な場合は、ゲート位置・ゲインを調整し、三次元断面像(B-スキャン・X-スキャン等)で補完解析します。

5.定量評価
画像処理による剥離領域の面積抽出や、複数ロット比較など信頼性評価へ応用します。

剥離検出の具体的応用事例

半導体パッケージ封止樹脂の剥離検査

QFP/BGA/SiPなどの半導体パッケージでは、ICチップと封止樹脂の界面、ワイヤ付近などで剥離リスクがあります。
C‐SAMによって、これら剥離領域を非破壊で検出し、形状を定量的に把握できます。
部品実装前の工程管理、設計変更品の比較評価、不具合品の故障解析で幅広く活用されています。

車載部品樹脂モールドの評価

車載用コネクタやセンサー、電子制御モジュール内の樹脂モールドは、熱応力や成形不良で界面剥離が起こりやすい部位です。
C-スキャンによる全数検査体制を取り入れることで、最終品質の信頼性向上に貢献します。

先端材料開発(接着剤・新規樹脂)の信頼性評価

新規の封止樹脂や基板用接着剤の開発現場では、供試体の内部剥離や異種界面の接合強度評価が重要です。
C‐SAMにより剥離メカニズムを可視化することで、材料改良指針を明確化できます。

測定条件最適化の新提案

最新のC‐SAMでは、AI画像処理技術や超高周波プローブ、新型水槽設計の導入が進み、難易度の高いサブμm領域の剥離や複雑な多層構造解析へと応用範囲が広がっています。
測定条件の最適化には、事前に標準サンプルやシミュレーションによるパラメータスクリーニングも有効です。
また、複数深度(3点C-スキャン)設定や位相反射強度比較、三次元再構成など、多角的アプローチによって更なる解析精度向上が期待できます。

まとめ

C‐SAM超音波顕微鏡は、樹脂をはじめとした複合材料内部の剥離検出において、他に類のない非破壊可視化技術です。
精度の高い検出を実現するには、適切なプローブ・解像度・ゲート設定・ゲイン管理だけでなく、水質や温度管理にも十分注意を払いましょう。
また、多くの現場事例から得られる知見や新技術の導入によって、より確実かつ効率的な品質管理・信頼性向上が叶います。
C‐SAMとC-スキャン条件の最適化で、貴社の材料・製品開発、故障解析、信頼性試験へ大きな価値をもたらすことが期待できます。

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